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31歩目 起 承転開

「どうしたの?クレープ食べないの?」


「た、食べるよ…」


 私は桐木君に促されるままクレープを食べた。

 お…おいしい……。でも今はそんなことより……


「え、さっきいいよって言った?」


「言ったけど…」


 桐木君はなにか変なことでも言いましたかとでも言いたげな目で私を見てきた。


「それは夏祭りに来てくれるという意味で…?」


「そうだけどさっきの文脈でそれ以外の意味に聞こえた?」


 無意識に食べていたクレープがまだ口の中に残っていたので私は口を開けず否定するべく首を左右に大きく振った。


「もしかして断られると思ってた?あのねぇ小山ちゃん。俺が小山ちゃんの誘いを断ったことある?」


 クレープを飲み込んだ私は答えた。


「あった。海行こうって言ったら断られた」


「そ、それはあれじゃん…海は別ですやん……」


 急に歯切れ悪くなったな。どんだけ海嫌いなんだよ。


「とにかく夏祭りには来てくれるってことね!?」


「だからそう言ってるじゃん」


 なんだ。こんなあっさり了承得られるならあんなに緊張する必要なかったな。

 私がほっと一安心していると桐木君から疑問が投げかけられてきた。


「夏祭り参加するのはいいとして会場へはどうやって行く?徒歩の場合夜道歩くことになるけど」


 当然の疑問だ。会場は今いる商店街だから当然歩いていける距離ではある。しかし問題は夜道を歩いていくという点だ。なぜなら田舎の夜道はめっっっちゃ暗いからである。街灯がない場所はとことんなくひとたび歩けばここがアビスかと感じることになる。でもそれに対する回答を私は既に持ち合わせている。


「それなんだけど実は大崎君がね──」


 私は話した。夏祭りには大崎君とかほちゃんも来ることを。そして会場近くに実家がある大崎君が車を用意してくれることも。


「清水さんはともかく大崎まで来るのか。なんか行く気失せてきたな。この前あいつから変なニャイン来てたし」


 それ多分ファミレスのときのやつだよね?大崎君自信満々で俺がいれば大丈夫って言ってたけどやっぱり桐木君にうっすら嫌われてない?


「まぁでも実際助かるか。車自体は俺たちでも用意できるけど駐車場所探すのは面倒だったし」


「そうだよね。それに歩いてもいけるけどそれなりに距離もあるし…」


「ん?まぁそうだね」


 思ってなさそうだな!?そうだよね桐木君はこのくらいの距離なら余裕だよね。1日7時間歩いても平気な人間だし。


「それにしても大崎と清水さんが知り合いだったことに俺は驚いたよ」


 知り合いだったというか知り合いになったというか。そこらへんの事情を詳しく説明するとファミレスで作戦会議してたことも話さないといけないからややこしいんだよな。


「あはは…偶然…ね?」


 あのファミレスでかほちゃんがバイトしてたことは私も知らなかったから偶然であることは紛れもない事実だ。嘘は吐いてない。


「ふーん。世間って狭いね」


「私もそう思うよ…」


 そうこうしてる間に桐木君はクレープの最後の一口を食べ終える。それを見た私は遅れないようにと残りのクレープを頬張った。


「そんな急いで食べなくてもいいのに」


「ほーはひっへほ!」


「なんて?」


 そうはいっても待たせるのも悪いから!


 咀嚼し終わった私はクレープを飲み込んだ。


「食べ終わったならクレープの紙捨ててくるから小山ちゃんのもちょうだい」


「わかった、ありがと」


 桐木君は紙を受け取るために右手を前に出した。しかし紙を受け取った桐木君はそれを捨てに行かずなぜか私の顔をじっと見てなにか言いたげな様子だ。


「小山ちゃん」


「な、なに…?もしかして顔になんか付いてる…?」


 そんなに顔を見られると流石に照れるよ……


「うん。口にクリーム付いてる」


 …………。本当に付いてるのかよ!?


「え…どこ!?」


 私は口元を触ってクリームを取ろうとした。


「ああ…そっちじゃない。逆逆」


「え?こっち?」


「そうもう少し下。ああもうちょい右」


 なかなか嚙み合わない私たち。痺れを切らした私はいいことを思いついた。


「もう桐木君が取ってよ!!」


 そう言って私は目を瞑った。


 す、少し大胆すぎたか…?でもこのくらいはやっていかないと!これは夏祭りの前哨戦だ。


「はぁ、わかったよ。じっとしてて」


 桐木君は思いのほかあっさりと了承した。

 やっぱり指で拭きとるのだろうか。その場合私の唇に桐木君の指が当たるかもしなれないなどと考えてドキドキしているとなにやらガサゴソと音が聞こえてきた。


「じゃあ拭くよ」


 瞬間私の口元に感じた感触は……


「ティッシュだ…」


「そうだけどダメだった?」


「ダメじゃないけど…」


 さっきのガサゴソとした音はバッグからポケットティッシュを出す音だったようだ。


「普段からティッシュ持ち歩いてるって桐木君女子力高いね」


「ティッシュ持ってるだけで女子力高くなるんだったら駅前でティッシュ配りしてる人 女子力カンストしてることになるよ」


「そういうことじゃないんだけどなぁ~」


 何はともあれ今日の目的は達成できた。しかしこれで終わりじゃない。あくまでもこれはスタートラインだ。私は夏祭りで桐木君に()()する。今はまだ扉を開けただけにすぎない。



    第31話 () 承転開(しょうてんがい)



『開』に「がい」なんて読み方ないけど無視してください。私は無視しました。

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