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29歩目 我田引水

「小山さんいたから」


「わ、私?なんで…?」


 突然自分の名前が出てきたことで動揺した私はオレンジジュースを飲むことで心を落ち着かせた。


「え、自覚なかったの?あんだけ桐木に対して好き好きオーラ出しといて?あいつも他の女子と比べて小山さんへの対応違ったからコイツらいつ付き合うんだろうってクラスのみんなが思ってたぞ」


 あれぇ?私 そんなにわかりやすい態度とってたのか……なんか恥ずかしいんだけど…!


「なるほど。中学ではめぐめぐがいたから他の女子が寄り付かなかったと。めぐめぐが防波堤になってたのね」


「そゆこと!」


 大崎君はこちら側に指を向けて同意した。


「だから結局ふたりが付き合わなかったって聞いたときは驚いたぜ。まぁあいつが自分から告白するってことはないと思ってたけど、なんだかんだ小山さんのほうから告白されれば付き合うと思ってたんだけどなぁ…もしかしてなんかあった?」


 そうだよね。大崎君は知らないよね。卒業式での出来事を。

 私は話した。私が告白を先延ばしにし続けたことを。そして卒業式の日に告白しようと思ったが桐木君に避けられて最近まで疎遠だったということを。


「なーるほどねぇ…」


「これってやっぱり桐木君は私のこと好きじゃないんじゃ……」


 うっ……自分で言っててなんか悲しくなってきた……


「いや流石に好意はあると思うぜ」


 そう言うと大崎君はコーラと氷の入ったグラスを揺らしカラカラと音を鳴らした。


「さっきはあいつ、自分に向けられる好意には鈍感だって言ったけど小山さんほどの大きな思いがあれば流石にもしかしてくらいは思ったはず。だけど自分の気持ちにも鈍感だから自分の小山さんに対する感情が恋愛的な好きなのかどうか決めあぐねて最終的に逃げるって選択を取ったのかもしれない」


 自分の気持ちに鈍感…か…。それは桐木君を見てればなんとなくわかるような気がする。自分のことより他人を気にする人だから。


「好きかどうかなんて付き合ってからでも確かめられるのに~」


「ね~」


 かほちゃんの言葉に大崎君は同意し、いつのまにか頼まれていたポテトを二人でつついていた。

 誰もが君らみたいな考え方で生きてるわけではないんだよ。ていうか君らいつのまにか仲良くなってないか?


「でもめぐめぐ今は桐木君と結構良い感じだよね。誕生日も桐木君ちで過ごしたみたいだし」


「えっ!!マジで!!?」


 大崎君はとても驚いた様子で声を上げた。


「はい……マジです……」


 改めて言わされると恥ずかしいな。


「俺もまだあいつんち行ったことないのに……」


 そこに対抗心あったんだ……


「それでまだ付き合ってないのか…」


「はい……」


「なんか逆に不健全な感じしてきた」


「それな」


 なんだよ逆って。ていうかかほちゃんも同意するなよ。


「いやでも実際すごいことだと思うよ。あいつ誰が頼んでも家に入れてくれなくて一時期あいつんち『開かずの家』って呼ばれてたことあったし。でもいま考えるとお姉さんがいたからだろうけど」


 確かにそういうことなんだろうなぁ。それでいうと桐木君があまり自己開示しないのも家庭環境が影響してたのかもしれない。


「はっ…!でも今なら俺もあいつんちに入れてもらえるかもしれない。ちょっとニャインで聞いてみるわ」


 大崎君はおもむろにスマホをいじりだした。


 自由だなほんと……


 そして私たちがポテトを食べながら話していると程なくして大崎君のスマホにニャインの通知音が鳴った。


「お、きたきた。どれどれぇ……ん…?!」


 大崎君はなぜか驚いている。そんなに変な返しをされたのか?


「ちょっと見てよこれ」


 そう言うと大崎君は私たちにスマホの画面を見せてきた。その内容は…



大崎かずと『今度おまえんち遊びにいっていい?俺たちの仲だしいいよな?な?』


桐木かえで『我田引水』



我田引水(がでんいんすい)とは自分の都合がいいように物事を解釈したり強引に進めたりすること。『自分勝手』『自分本意』などの意味で使われる」


 スマホで意味を調べたのかかほちゃんは説明口調で話した。


「めちゃくちゃ拒否られてるね…」


「クソォ……!!!」


 悔しがった大崎君はテーブルをドンと叩いた。

 なにしたらそんな拒否のされかたされるんだ…


「確かに半年くらい前にあいつんちのインターホン連打したことはあるけども…!」


 因果応報だった。


「そんなどうでもいいことは置いていてザキっちはどうすればめぐめぐと桐木君が付き合えるようになると思う?」


 ザキっちて。かほちゃん距離の詰め方エグいよ。


「そうだなぁ…」


 大崎君も受け入れるの早いって。


「確かもうすぐ……」


 そう言うと大崎君はスマホでなにかを調べだした。


「良かった今年もあるみたいだ。やっぱり夏と恋と言ったらこれだよな!」


 大崎君はスマホの画面をこちらに向けてとあるイベントの告知ページを見せてきた。


「これは…」


「なるほどね」


 大崎君は不敵な笑みを浮かべ私に提案してきた。


「小山さん、多少強引にでもあいつをここに連れ出そう」



    第29話 我田引水(がでんいんすい)


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