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27歩目 椅子は四つ座るは二人

  そんなこんなで一通り必要なものを集めることができて現在はセルフレジにて会計中。


「小山ちゃん龍って知ってる?」


 いきなり変なこと言い出したな……


「龍って言っても画数多いほうの龍ね。西洋の竜じゃなくて中国系の龍」


「そんな中国系のアメリカ人みたいな言い方しなくても伝わってるし当然知ってもいるよ…」


 私が呆れながら伝えると桐木君は商品のバーコードを読み取りながら話を続けた。


「あの龍って手に宝玉持ってるのわかる?」


「ああ…あのドラゴンボールみたいなやつね。わかるけどそれがどうしたの?」


「あれすごい持ちづらそうだよね。ずっと片手ふさがってるし」


 桐木君は引き続き商品の読み込みをしている。

 いや本当になんの話してるんだ……?


「俺あれ見るたび思うんだよ。エコバックとか持ち歩いてそこに入れとけばいいのにって」


 そう言うと桐木君は会計を終えた商品を自身が持ってきたエコバックに詰め込んだ。


 えっ…?もしかして龍相手にエコバックマウント取りたかっただけか!?


「しょうもないこと考えてるんだね桐木君……」


「しょうもなくないって龍はスーパーで買い物しても3円余計に払わないといけないけど俺は払う必要ないんだから」


「龍はスーパーで買い物しないってツッコミは野暮かな?」


 そんなどうでもいい会話しつつ私たちは再び桐木君の運転のもと桐木君宅へと戻った。


「それで大将!今日はなにを作るんで?」


「和風パスタでござい」


 桐木君は鍋に水を入れながら答えた。

 そういえばこの前聞いたときもよくパスタ作ってるって言ってたな。


「ね、桐木君 私もなにか手伝うよ!」


「ん~、別に適当にくつろいで待っててもらってもいいんだけど…」


「そこをなんとか!」


 私は両手をパンと合わせて頼み込んだ。

 ただ待ってるというのも手持ち無沙汰だしそれに一緒に料理するってなんかいいじゃないですか。ねぇ?


「そうだな。じゃあさっき買ってきたしめじと冷蔵庫に入ってるほうれん草 軽く水で洗っといてくれる?」


「了の解!」


 私は腕まくりをした。


◇ ◇ ◇ ◇


「桐木君!こんなもんでいい?」


「ん、大丈夫だよ」


 私がしめじとほうれん草を洗ってるあいだに桐木君はIHコンロでお湯を沸かしたりキッチンタイマーのセットやまな板の用意などをしていた。

 手際いいな……


「次はなにすればいい?」


「とりあえずほうれん草はこっちでアク抜きしとくからしめじ切っといてくれる?下の部分切り落としてあとは手で割いてくれればかまわないから」


「わかった!」


 桐木君は鍋に私が渡したほうれん草を入れてアク抜きを開始。それと並行して別に沸かしていた鍋にパスタを入れて塩をひとつまみ入れた。


「そういえば前から気になってたんだけどパスタ茹でるときに塩入れるのと入れないのとだと結構変わるの?」


 私はしめじを割きながら何気なしに尋ねた。


「正直俺はあんまり違いわかってないから手なりで入れてる。まぁ清めの塩的な効果はあるでしょ」


 …そんな適当な理由で入れてたんだ……

 そんなこんなでしめじも割きおわり、私はそれをボウルの中に入れた。


「そうだ小山ちゃん。このベーコン切ってもらうことってできる?」


 桐木君は冷蔵庫からベーコンを持ち出しまな板の上に置く。


「大丈夫だよ。どのくらい切ればいいかな?」


 私が包丁をベーコンの上にかざして尋ねると


「そうだなぁ。二人ぶんだからこれくらいでいいかな?」


 桐木君は私の手を握りどの場所を切ればよいかの誘導をしてきた。


 おいおいおい!素でそういうことやってくるのかよ!?なんか大崎君が言ってた桐木君がモテてたって話の信憑性おびてきたな!?


「どうしたの小山ちゃん」


「な…なんでもないよ……」


「そう。だったらこの大きさに切ったあとは適当に細かく切ってもらえたら助かる」


「わ…わかった……。切ったあとはどうすれば……」


「あとはもう調味料加えて炒めるだけだから小山ちゃんはそこらへんで適当にくつろいでていいよ」


「うぃっす……」


 ああもう!!大胆だなぁ!!!


◇ ◇ ◇ ◇


 そんなこんなでダイニングテーブルで出来上がるのを待っているとキッチンからいい匂いがしてきた。醤油とバターが焼けるいい匂いだ。いまかいまかと待ちわびているとほどなくして桐木君がキッチンから料理を持って出てきた。


「できたよ小山ちゃん。口に合うかはわからないけど」


 そう言ってパスタの乗った皿をコトリとテーブルに置き桐木君は私とは反対側の椅子に座った。


「すごくおいしそうだよ!!」


 パスタ皿に盛られたそれは醤油で味付けされたからだろうか全体的に淡く茶色味がかっている。しかしベーコンやほうれん草といったまた違った色味も付け加えられており、更に上には刻みのりがまぶされていて上品な印象を思わせる。派手さはないが和を感じる面立ちをしていた。


「それじゃあ食べようか」


「うん!!」


 私たちは両手を合わせた。


「「いただきます」」


「あ、いただかれます」


 それ毎回言うんだ……


 私はパスタをフォークに巻き付けて食べた。まず感じたのは醬油の風味、そして追って香ってきたほのかなバターの香りだ。これだけで既に美味しい。しかしここから食べ進めるとベーコンによる程よい塩気やしめじのうま味、そして食感の変化を楽しむことができた。


「めっちゃ美味しいよ!この前は大したもの作ってないって言ってたけど嘘じゃん!!」


「そう?正直最近は料理作っても自分で食べるだけだからあんまり自信なかったけど美味しいと感じてもらえたなら良かったよ」


 そう言うと桐木君は照れを隠すようにフォークにパスタを巻き付けた。心なしかいつもよりも表情が柔らかく感じる。

 多分褒められるのに慣れてないてないんだろうな。だったら私がやることは一つだ。


「桐木君は頑張ってる!偉い!天才!私が保証するよ!!」


「…ふっ…なんだよそれ……」


 少し塩気を感じるこの部屋にセミの音が夏の訪れを告げた──



    第27話 椅子は四つ座るは二人


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