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25歩目 どちらさまでしょうか

「スーパー到ちゃ~く!!」


「平日昼間は空いてて助かるぜ」


 私たちはスーパーに来ている。


「桐木君運転苦手だって言ってたけど結構上手かったじゃん」


「俺は運転苦手とは言ったけど下手とは言ってないからね」


 運転が苦手だという話は聞いていたので家を出るときに運転は私がやると言ったのだが桐木君に頑なに拒否された。曰く、自分の車を他人に運転されるのは怖いらしい。よく考えたら確かに私もそれは怖いかもと思い現在に至る。

 しかし苦手であって下手ではないね。確かにそこが必ずしも一致してるとは限らないか。逆に言うとそつなくこなしていることでも内心では苦手だなぁと思ってることもあるんだろうな。これは別に桐木君に限った話ではないけど。


「桐木君はいつもここのスーパーで買い物してるの?」


「そうだよ。ここらで一番広いスーパーだし駐車場が広くていい」


 私たちが住んでいる町は大した娯楽施設はないが何故かやたらとスーパーとドラッグストアは充実している。ちなみに私たちが来たスーパーの近くには本屋やゲーセン、百均などがありかつては小中学生なけなしの遊び場となっていた。今の小中学生がどこで遊んでいるかは知らん。


「そういえばさ、ここじゃないけどここの近くのスーパーの2階に映画館併設されてるところあったよね?あそこいつのまにか閉館されてて私めっちゃ悲しかったんだけど」


「懐かし、あそこが市内で唯一の映画館だったからめんどくさいことに今は市外まで行かないと映画館で映画観れないんだよね」


 そう言いながら桐木君はカートにかごを入れる。

 映画かぁ…。いつか桐木君とふたりで映画館行くってのもいいかもなぁ。桐木君はどんな映画観るんだろ。

 そんなことを考えつつ私たちはスーパーの自動ドアを抜けた。


「それじゃ俺そこらへんまわってるから小山ちゃんは適当にお菓子コーナーでも見てきていいよ」


「ねえ!!それ私を小学生かなにかだと思ってるよね!?一緒についてくに決まってるでしょ!?」


「いや、飽きちゃうかなって思って」


「やっぱり小学生扱いしてる!!」


 まったく、いつまで子ども扱いされるのやら。私はもうお酒も呑める立派な大人だというのに。むしろまともにお酒が呑めない桐木君のほうがおこちゃまなのではないだろうか。


◇ ◇ ◇ ◇


「小山ちゃん……いま勝手にかごにお菓子入れたよね…?」


「…スゥー……桐木君が無意識に入れたんじゃないのかな……」


 やべ…バレた……


「いやもうがっつり小山ちゃんが入れる瞬間見たから。まぁ別にこれくらいいいけどさ」


「桐木君も甘いねぇ。お菓子だけに」


「やかましいよ」


 私はカートを押す桐木君の横を歩きながらふとした疑問を投げかけた。


「そういえば今日はなに買いにきたの?醤油が切れてるって話は聞いたけど」


「そうだね。とりあえず醤油はマストで塩と胡椒も残り少なくなってたから補充しておきたいかな。あとはナス、しめじ、卵、ベーコンあたりも買っときたい。小山ちゃんもなにか買いたいものあったら適当に入れていいよ。まぁ既にひとつ入れられてるけどね」


 桐木君はかごの中のお菓子を見てからかうように話した。

 うっ……!流石にさっきの行動は子どもっぽすぎたか…。それにしても適当にかごに入れていいって随分と太っ腹だな。ん……?そういえばこの買い物って今日のお昼のためでもあるんだよね?そういうことなら……


「桐木君!!この買い物割り勘だからね!!勝手に全部払おうとしないでよ!!」


 こうして先に言っておかないと桐木君はしれっとひとりで払ってしまうだろう。


「いーや。今日は全おごりだね。そもそもほとんど俺の食費代になるし、あとこの前ちさとさんに米分けてもらってついでに結局お小遣いも渡されたしトータルで見たらここで俺がおごってもトントンどころかかなり得してる」


「でも……」


「でもじゃない。このくらい奢らせてくれ」


 そう言って桐木君は私のおでこを人差し指で軽くつついた。

 お母さんいつのまにそんなことを……。はぁ…桐木君強情なところあるからな。多分これ以上なにか言っても聞き入れてくれないだろう。だったらここは素直に甘えよう。


「わかった…ありがとね……」


「わかればよろしい。あと俺 確かに今は働いてないけど小山ちゃんが思ってるよりお金に困ってないからね。遺産あるから」


 遺産かぁ……。触れづらい話題だ…


「人の家の遺産使わせるの負い目感じるんですけど」


「大丈夫だよ。今のところ生活費は働いてたころの給料でまかなえてるから」


 桐木君は野菜コーナーにあるナスを吟味しながら答えた。

 それはそれで気が引けるんだよなぁ……


「よし。これでいいか。次いこう」


 納得のいくナスを見つけられたようで桐木君はそれをかごの中に入れた。


「次はなに買うの?」


「そうだねぇ。しめじはさっき入れたから次は卵でも探そうかな。いつもの場所にあればいいんだけど。なんかたまに置き場所変わってるんだよね」


 そう言うと桐木君はあたりをきょろきょろと見渡した。


「あっ、やべっ……」


 桐木君はなぜか珍しく慌ててる様子だ。


「どうしたの?」


「小山ちゃん。今からあっちのコーナーに…」


「あれっ!?桐木じゃん!おーい久しぶりー!!」


 桐木君が話し終える間もなく聞きなれない男性の声が聞こえてきた。


「…あっちにいこうか小山ちゃん」


「でも桐木君呼ばれてるみたいだけど……」


「桐木なんて苗字そこまで珍しくないでしょ。俺を呼んでるわけではないよ」


 うーん…そうかなぁ?だって……


「桐木―?桐木かえでくーん?無視は寂しいなー」


「がっつり名前まで呼ばれてるけど…」


「……とんだ偶然もあったもんだね……」


 どんな関係かは知らないけどとことんしらを切るらしい。まぁ会いたくないというのであれば私も話を合わせておこう。

 ……とは思っていたがそんな間もなくその男性はすごい勢いで私たちに近寄ってきた。


「桐木ぃ…ガン無視はどうかと思うぞ」


 近づいてきた男性は馴れ馴れしく桐木君に話しかける。


「…どちらさまでしょうか」


「おい!絶対気づいてるだろ!おれだよおれ!!」


「対面でオレオレ詐欺たぁいい度胸してるじゃないか大崎(おおさき)


「やっぱり気づいてるじゃねぇか!!」


 ……大崎?どこかで聞いたことがあるような…?


「あー…ところでさっきから気になってたんだけどよぉ…」


 その大崎なる人物が私のほうをちらりと見て話した。


「そちらの方は彼女さん?」


 はいそうです!!!桐木君この人絶対良い人だよ!!!



    第25話 どちらさまでしょうか


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