21歩目 誕生日おめでとうございました。
あれ?なんかいい匂いする…そういえばあれからどうなったんだっけ…?そう疑問に思いながら寝ぼけまなこの目をこすり私は体を起こした。ここはソファの上だ。私の体には毛布もかけられている。状況を理解するや否や私の顔は真っ赤になっていた。
や、やってしまった…!!もう外明るいしこれ桐木君の家で爆睡かまして一夜すごしちゃったってことか…!うわ私はなんてことを……。あれ、そういえば桐木君どこだ?
私はあたりをきょろきょろと見渡すとキッチンにいた桐木君と目が合った。直後、桐木君は私に駆け寄ってきて……
「すみませんでした!!!」
それは見事な土下座であった──
「ちょっ、なんで土下座なんか……」
「恥ずかしながら昨日の寝る直前の記憶はあまりないですが起きたときの状況を考えるに大変ご迷惑をおかけしたようで……」
うんそうだよね。私に膝枕されてたんだよね。でもそれ私も恥ずかしいからあんまり触れないでほしいかな。
「これはもう腹を切ってお詫びするしか…」
めっちゃ潔いね。桐木君は武士の鑑だよ。いつから武士になったのかという疑問は残るけど。
「いいからいいから。顔上げてって…!そういえばなにか作ってたようだけど…」
私はちらりとキッチンの方へ顔を向けた。
「はっ、味噌汁を少々…」
さっきからそのかしこまった口調はなんなんだ。
「じゃあそれ飲ませて!それでチャラね!」
「味噌汁しか準備できてないですがそれでよろしいでしょうか…」
「うむ。くるしゅうないぞ」
せっかくだから私も口調を合わせた。
程なくして味噌汁がテーブルの上に置かれた。具材は見た感じ豆腐に油揚げ、大根とネギの4種類だ。
「それじゃあいただきます」
「いただかれます」
だからその返しはおかしいだろ。
私はお椀を持って味噌汁を啜った。いたって普通の味噌汁だ。でもそれが良い。味噌汁ってのは普通が一番安心するのだから。
「おいしいよ桐木君。にしても桐木君って料理できたんだね」
「まあ一人暮らしだからね。家事は一通り。といってもその味噌汁は適当に具材切って味噌と顆粒だし溶かしただけだから大したものでもないけど」
「ふーん。桐木君って普段どんな料理作るの?」
私は油揚げをもぐもぐと咀嚼しながら尋ねる。
「本当に大したもの作ってないよ。パスタとか、あとは適当に肉と野菜炒めた名もなき料理レベルのものしか作ってないし」
「へえ、それじゃあ今度私が味見しにいってあげるよ」
私は味噌汁を飲み終わるとパンと手を合わせごちそうさまの声を。それと同時に桐木君から疑問の声があがった。
「え?」
「え?って味見しにいくよって言っただけだけだよ。なにかおかしいこと言ったかな?」
昨日久しぶりに誰かとご飯食べられて楽しかったって言ってたからね。慈善活動ってやつだよ。べ、別に私が桐木君と一緒にご飯食べたいってわけじゃないんだからね!!よし、一応ツンデレにもなっといた。
「いや、おかしくは…いやおかしくはあるか…?」
混乱してるね桐木君。桐木君は意外と押しに弱いからここはもう一押しだ。
「ダメ…かな?」
「まぁ…いいか…そのくらいなら…」
チョロい。チョロすぎるよ桐木君!でもおかげで言質は取れた。
「じゃあ私はそろそろ帰るよ」
図らずも朝帰りという形になってしまった。ちなみに家族からの連絡は一切来ていない。なんか変な察しのされかたされてそうで今から帰るのが怖い。
「そうだ小山ちゃん。お酒まだ残ってるけどどうする?」
「ここに置いてくよ。どうせ近いうちにまた来るから」
「そっか。わかったよ」
「あ、でも一人で勝手に呑んじゃダメだよ!ていうか私の目の前以外でお酒吞まないでよ!!」
「小山ちゃんになんの権利が…」
不服そうにしているが仕方ないだろ。桐木君がバカみたいにアルコールに弱いと判明したのだから。
「ダメだからね!!」
一応念を押してみた。
「わかったってば…」
桐木君はしぶしぶながらも承諾。わかればよろしい。
私は玄関まで行き、靴を履いてつま先をトントンとするとあることに気が付いた。
「あれ?そういえばまだ言ってなかったかも。桐木君!誕生日おめでとう!!」
「あ、多分俺もだ。小山ちゃん誕生日おめでとう」
季節が廻る。私たちの関係も変わっていくのかもしれない。だけどそれが前向きなものであることを私は願う。ハッピーバースデー私たち!!
第21話 誕生日おめでとうございました。
なんかこの二人ケーキ食べてませんけどそれは完全に筆者が食べさせるタイミング見失ったからです。本当は小山ちゃんが小山母から持たされたケーキの箱らしきものを開けたら和菓子とケーキに差す用のちっちゃいろうそくが出てきて桐木君が「なんかこの組み合わせだとお供え物みたいだね」って言う予定でした。




