表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/25

16歩目 伸るか反るか

「小山ちゃん。俺 言ったよね、精米中は周りの声は聴こえないって」


 桐木君は米袋の紐を縛りながらぶつくさと言ってきた。


「ふふっ、そーだっけ?」


「とぼけちゃって…それでなんて言ってたの?」


「秘密だよ」


「なんじゃそりゃ」


 そう。まだ秘密だ。今伝えてもきっと君は困るから。


「まぁいいか。それじゃ運ぶからトランク開けてきてくれる?」


「はーい」


 桐木君は無事、米袋をトランクに入れることができたようだ。私は桐木君が助手席に座りシートベルトをつけたのを確認すると車を動かした。


「出発しんこ~!」


「おー」


 なんで毎回そこは気だるげなんだ。


◇ ◇ ◇ ◇


「そういえばさ、さっきは私に代わりに運転してもらうのは悪いって言ってたけど、たまに遊びにいくときに私が運転するってのはいいんじゃない?」


「…遊びにって、例えばどこに?」


「うーん。海とか!」


「海はいいよ…遠いし…クラゲとか危ないし…」


 桐木君は露骨に嫌そうな声で拒否をした。


「桐木君泳げないもんね?」


「…………」


 運転中だから桐木君の顔は見れないけどきっと文句でも言いたげな顔してるんだろうな。


「いや別に泳げないとかじゃないし。むしろ泳がないって言ったほうが正しいかな。そもそも人間含む陸上生物って水中から陸上に適応するために進化したんだから泳げない人のほうが生物的にはより進化してるっていうか。つまり俺は一歩先のステージに行ってるんだよね」


 桐木君は早口で戯言を捲し立ててきた。


「ってこの前ダーウィンが言ってた」


「全部ダーウィンに押し付けた!?」


 そうか、桐木君はダーウィンと知り合いだったのか。まぁそんな冗談は置いといて…


「桐木君そろそろ家つくからね」


「俺の話はまだ終わってないんだけどな…」


 まだなにか言い訳を言うつもりだったのか…

 私は呆れながら車を自分ちの庭に止めた。すると車の音に気づいたのだろうか、母が玄関から様子を見に来ていた。


「それじゃ桐木君よろしくね」


「はーい」


 桐木君は返事をするとトランクから米袋を持ち出した。


「かえで君ここまで運んでくれるかしら」


 そう言って母は桐木君を誘導する。


「ふぅ…」


 運び終わった桐木君はほっと一息ついた。


「おつかれ桐木君、大変だったでしょ」


「いやもう全然余裕。思ってた10倍は余裕だったね」


 めちゃくちゃ見栄張ってるけど腕ふるえてたの見てたからね。


「はい、かえで君頑張ってくれたからお小遣いあげる」


「え~、良いな~。私も欲しいー!」


「あんたにはあげないわよ」


 くっ…ケチめ!だけど桐木君には急に頼み事しちゃったし仕方ないか。


「俺もいいですよ。それに俺、もう20超えたんで小遣いって歳でもないですよ」


「えっ…」


「えっ、ってなに小山ちゃん?」


「桐木君いつ20歳になったの…」


「先月だけど」


 桐木君は当たり前かのように何食わぬ顔をしている。

 わ、忘れてた~~!!そういえば桐木君誕生日早いんだった……!


「言ってよ桐木君!そのときもう私たち会ってたよね!?おめでとうくらい言ったのに!!」


「俺が自分から誕生日だと明かす人間だと思う?それにぶっちゃけると俺も誕生日の存在忘れてて気づいたらハタチになってた」


 めっちゃ悲しいこと言うじゃん。反応に困るよ。


「ちなみにめぐみは来週誕生日よね」


 いらんこと言ったなお母さん!?こっちは桐木君の誕生日忘れてたっていうのにこれじゃあ私だけ祝われるのをせびってるように見えるじゃん!?


「ほう。なるほど」


 なるほどじゃなくて!


「桐木君!?祝おうとか思わなくていいからね!?私も桐木君の誕生日忘れてたんだしこれでおあいこっていうか…!」


「え~、どうしよっかな~。でも祝うかどうかは俺の自由っていうかある種の権利だよね~。もちろん祝われるのを拒否する権利は小山ちゃんにもあるけどさ」


 桐木君はからかうように私に告げた。

 ずるい言い方をしたな。それじゃあ断りづらいじゃないか。そりゃ私だって本当は祝われたいし誕生日に桐木君と過ごしたいけどさ…


「だったらいい方法があるわよ!」


 母はパンと手を鳴らし名案とばかしに声をあげた。


「めぐみはかえで君の誕生日を祝い忘れたから気が引けてるのよね?だったらめぐみとかえで君の誕生日会を同時開催すればいいのよ!」


 突然なにを言い出すのかと思えば本当になにを言ってるんだ、私の母は。誕生日でもないのに祝われる桐木君の身にもなってみろ。なんか変な感じになるだろ。

 いやしかし待てよ。私が桐木君の誕生日を祝いたくないと言えば嘘になる。この話乗ってみるか?でも…


「同時開催って言ってもどこでやるんだよ。やだよウチでやるのは。お母さんたちいると気まずいし」


 母は不満げな表情で私を見た。

 当たり前だろ。誰が好きな人と過ごす誕生日を家族に見せたいと思うんだよ。

 そう心の中でツッコミを入れていると桐木君の口が開いた。


「…じゃあさ。俺の家ならどう?」



    第16話 伸るか反るか



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ