11歩目 暗い話のあとは明るい話がないとね
「あの日」から数日後。
「テニスするぞぉーーーー!!!!」
「いきなりだね!?小山ちゃん!!?」
私たちは恐竜公園のすぐそばにあるテニスコートに来ていた。
「ふふっ。知らないの?桐木君。健全なる肉体には健全なる精神と健全なる魂が宿るって」
「最後ソ○ルイーターになってなかった?」
このテニスコートは近くの市民体育館で申請することで2時間数百円で利用できるすごくお得な施設だ。
「ていうか小山ちゃんテニスできるの?偏見だけどすごく下手そう」
「ふっ。減らず口を言ってられるのも今のうちだよ!私の必殺サーブを喰らっても同じことが言えるかな!?」
──ガシャン……
球は明後日のほうに飛んでいき桐木君の頭上を大きく越え、後ろのフェンスに激突した。
「…言えるね……」
桐木君は呆れたような目をしている。
「くそぅ……!!」
「俺、テニスのルールよく知らないんだけどこの場合ってまた小山ちゃんがサーブすることになるの?」
「私も知らないから入るまで打つよ!?」
「よくテニスしようって思ったね…」
「最近テニ○リ読み返してね!!」
私は再び腕を大きく振りかぶりラケットを振った。
──ガシャン……
「テニスってホームランのシステムあったっけ?」
「うるさーーーい!!!」
おかしい…私の脳内シミュレーションではサービスエースを取りまくってたはずなのに…!
その後何度打っても私の球はフェンスに吸い込まれていった。
見えないだけであのフェンスにブラックホールでもついてるのか?だとしたらこの結果にも納得がいくけど。
「ねぇ。これって小山ちゃんがクソ下手か俺がいつのまにか手○ファントム習得したかのどっち?」
「私の調子がちょっと悪いだけだよ!!」
「俺このままだと一歩も動かず勝つことになるけど」
確かに桐木君はコートに入ってから球拾いしかしていない。まるで下っ端野球部員だ。
「仕方ないからサーブ権譲ってあげるよ。これも強者の余裕ってやつだね」
「はいはい」
桐木君は呆れながらボールを受け取った。
「小山ちゃんは強く打とうとしすぎなんだよ。とりあえずコートに入れることだけ考えて…よっと…!」
そう言って桐木君はラケットを軽く振った。緩い球が私めがけて向かってくる。
確かにコートには入ってるかもね。でもね。そんな甘い球じゃ私のカウンターが火を噴くよ!
──ブンッ………
私のラケットは虚空を切っていた──
「ストライク!」
「だから野球じゃないって!!」
◇ ◇ ◇ ◇
数十分後。なんとか私たちは数ラリーを継続させることができるようになっていた。
「ハァ…ハァ…桐木君もやるね!私とここまで互角の勝負ができるなんて…!」
「それ誉め言葉になってないよ。ていうか大体俺の得点だったけど」
「その強さに免じてこの勝負、次の球が入ったほうの勝ちにしてあげるよ…!」
「ねぇ。俺の話聞いてる?」
「サーブは私からね」
「聞いてないのね」
私はボールを宙に浮かせ、ラケットを振った。強すぎず、弱すぎず、「それ」は桐木君のもとに到達していた。
桐木君もラケットを振り軽々といった様子でボールを打ち返した。
なんか余裕そうでムカつくな!?
◇ ◇ ◇ ◇
「ハァ…ハァ…」
まだラリーは続いている。恐らく過去最高のラリー数だろう。しかしこのままではまずい。桐木君は未だ余裕そうな顔をしている。このままでは体力差によりジリ貧になって負けるのが目に見えている。
やるしかないか…「スマッシュ」を…!!
私はラケットを大きく振りかぶった。狙うは地面。もうホームランとは言わせない。
「スマッーーーシュ!!!」
ラケットは無事ボールを捉えた。球は今までにない勢いで進みだす。
桐木君は焦った様子で走り出した。
──スパンッ……
球は無常にもネットの上部に弾かれる。しかし勝負はここからだ。球がどちらのコートに落ちるかはまだ決まっていない。この勝負の行方は神に託された。
──トンッ…トンットン……
「俺の…負けだね……!」
桐木君が敗北を宣言した。
「やったーーーーー!!!!勝ったーーーー!!!!やっぱ私って天才っ!!まあ今までは手抜いててあげてたっていうか?ちょっと本気出したらこうだよね!桐木君もなかなかいい線いってたけど相手が悪かったね!」
勝者は敗者を慰めることを忘れない。ノブレス・オブリージュというやつだ。
「…リベンジいい?」
桐木君も負けず嫌いだなぁ!だけどいいよ私完全にコツ掴んだから!
「かかってこい!ボコボコにしてあげるよっ!!」
──パァン……!
桐木君の放ったサーブはすごい勢いで私の横を掠めていった。
「サービスエースってやつだね。まだまだいくよ!」
「あっ…ちょ…待っ…!」
今まで手抜いてやがったなぁ~~~!!
第11話 暗い話のあとは明るい話がないとね
ちなみにラケットは清水さんから借りました




