1歩目 出会い、あるいは再会
春、それは出会いの季節。
私も今年で大学二年生となり大学生活にも慣れてきた。大学にも友人と呼べる存在ができ、それなりに充実した毎日を送っている。だが困ったことが一つある。それは友人からの彼氏への愚痴、もとい惚気だ。やれこの前のデートは微妙だったとか、やれ彼氏のファッションセンスがないとか、彼氏の金遣いが荒いとか、私から言わせればそれは愚痴ではなく惚気である。いや、金遣いが荒いに関しては正当な愚痴か。
友人からはあんたもさっさと彼氏作ればいいのにと言われているが、彼氏ってのはそんな簡単に作りにいくようなものなのだろうか。好きな人ができて初めて恋人になりたいと思うものなのではないだろうか。偶然の出会いから物語は始まるのではないだろうかとそう思いにふけっていると……
カランカラン──
店内に鈴の音が鳴り響く。どうやら客が来たようだ。私は和菓子屋でバイトをしている。バイトといってもこの店は両親が営んでいるので実質家の手伝いだ。去年は大学生になったばかりで大変だろうとこの手伝いは免除されていたが今年からはそうはいかないらしい。まあバイト代もでるしそれなりに真面目にやってみるかと考えているものの正直モチベーションが湧かない。それは来る客来る客がことごとく老人だからである。
私の住んでいる町は包み隠さず言えば田舎である。ド田舎とまで言わないがとにかく田舎であることには間違いない。少し歩けば畑、畑、田んぼ、畑、田んぼ、畑、畑である。そりゃあそんな町にある和菓子屋に来る客はばあさん、ばあさん、じいさん、ばあさん、じいさん、ばあさん、ばあさんにもなるだろう。別に老人に恨みはないが少なくともこの場所で偶然の出会いを求めるのは酷というものである。
◇ ◇ ◇ ◇
午前のバイトも終わり一段落ついたところで私は店の外を眺めていた。それはこの時間帯になるとほぼ毎日通りかかる若い男性がいるからである。これだけ聞くと「それがなんだよ、なんだ?逆ナン狙いか?ん?」と思う人もいるかもしれないが全くの誤解である。そもそもこの町において徒歩移動をしている人はほぼいない。大人は大体車移動でこどもは大体自転車である。まあこの町に限らず田舎はおおむねこんなものだろう。だって徒歩で行けるところなんてたかが知れているのだから。だから歩いている人を目で追ってしまうことは至極当然なのである。というか私がこの人に話しかけても逆ナン扱いにはならないだろう。なぜなら私はその男性のことをすでに知っているし。知っているというか同級生だし。同級生というか「幼馴染」だし────────
今日も今日とてその幼馴染は歩いてきた。通りかかる男性が幼馴染だと確信するのに一週間。話しかけることを決意するのにさらにもう一週間。計二週間かかったがしかたないじゃないか。だって幼馴染といっても最後に顔を合わせたのは中学の卒業式。4年以上前のことだ。それでも話しかける決意をしたのは単純に気になったからだ。こんな何もない場所で何をしているのかと。そうこうしているうちにその幼馴染はもう近くまで来ている。少し顔を俯かせて歩いているからまだ私の存在には気づいていないはず………あ、今、目が合った……もう後には引けない。緊張しているのを悟られないよう私は軽い口調で話しかけた。
「よっ、元気してた桐木君。今なにしてるの?」
第1話 出会い、あるいは再会
初めて小説を書きました。1話目といかプロローグです。感想いただけるとすごく喜びます。すごく。皆さんの思っている10倍ほど。




