第6話
サラと名乗ったエルフの女の人は僕らの前のソファに腰かけた。
「えっと......」
「いや~♡、ごめんね♡、エリーナの命の恩人が見てみたくって♡、しかもエルフだっていうし♡」
「もう♡、サラさんったら、シオン様たちが困ってしまいますわ♡」
エリーナさんの言う通り絶賛困り中だ。お友達のお友達なんて正直他人でしかないからね。
「シオン様♡、この方はSランク冒険者のサラさんですの♡」
「「「Sランク?!」」」
Sランクって言うと最強の冒険者なんて言ってもいいくらい強い人だ。
「あぁ、あの!、私フレンって言って、お話聞きたいです!」
「私も!、レナって言います!」
「僕はシオンです!」
相手がスーパースターだってわかってから、僕らはファンの子供みたいにお話をせがむ。
「ふっふっふ♡、今日はアタシたちダンジョンに行ってきました!♡」
「「「ダンジョン!」」」
ダンジョンというのは地下にできる巨大な穴のことで、そこには凶暴な魔物が発生する。
魔物には2種類あって、ダンジョン産とそれ以外だ。
ダンジョン産は倒したら素材をドロップして死体が残らない。それ以外の所の魔物は倒したら死体はそのまま残る。
僕みたいな転生者からするとダンジョンなんてゲームじゃんって思うけど、ダンジョンって生き物らしい。
体内で魔物を生成して、人間を誘い込んで食らう大きな生き物なのだ。村長宅の本に書いてあった。
現にダンジョンの魔物を狩りまくると、ダンジョンが弱ることがあるみたい。
「ここに取り出したるはマジックバッグ......その中には......モンスターの素材!」
「「「おぉ!」」」
マジックバッグというのは空間収納を誰でも使えるカバンの事。効果は空間収納と同じだったり、劣化版だったりいろいろだ。いいものは中の時間が止まるし、安いのは時間の流れがある。
サラさんが見せてくれたのは牙や爪、鱗なんかのモンスターの素材だ。
「今日の目玉はコレ!、ドラゴンの爪!」
「「「おぉ~!」」」
「アタシはこれを剣にしま~す♡」
「かっこいい......!」
ドラゴンの爪から剣を作るなんてまさにファンタジー世界だ。
「ふへへ♡、男の子に褒められちゃった♡」
「サラさんはどんな戦い方するんですか?♡」
「アタシはねさっきも言ったけど剣使うよ。魔法剣士かな」
「かっこいい!!」
「えへ♡、君話わかるね♡」
村には剣を使う師匠がいなかったから、僕は短剣術くらいしかできない。それと弓と魔法だ。
「サラさんは剣術の腕前もすごいんですのよ♡、王都の剣術大会で準優勝ですの♡」
「エリーナ、そこは準優勝って言わなくてよかったじゃん......負けたし......」
「よくわかんないけどすごいです!」
「おほ♡、そうかいそうかい♡」
サラさんは若干悔しそうな顔をしたけどすぐに笑ってくれた。
「いや~、負けたのは同じパーティのメンバーでね~、剣一本なだけあって強い!」
「なんというんでしたっけ?、あの武器」
「あぁ、刀って言うんだっけな」
「刀?!」
「おわぁ!」
僕が急に大きな声を出すからみんな驚いてしまった。僕はすぐに「すみません......」と座り直してサラさんのお話を聞く。
「私も聞いたことあります!、異国の剣ですよね!」
レナちゃんと読んだ本にも出てきたから、レナちゃんも興味津々みたいだ。
「そうそう、でもかなり難しいんだよね~、あれ」
「刀......いいなぁ......」
「あれ?、シオンってば刀にお熱?」
「うん!、かっこいいから!」
「確かに絵本の刀かっこよかったね♡」
レナちゃんも僕の言葉にうんうんと頷いて共感してくれる。
「ぶぅ......アタシの剣の話は......」
「まぁまぁサラさん♡、シオン様♡、よろしければ当商会から買われますか?♡、何振りかございます♡」
「み、見たいです!」
「はい♡、ではまた後程♡」
エリーナさんに今度刀を見せてもらう約束をして、僕は満足して座り直す。
「そういえばみんなってもしかしてソメリ村?」
「「「はい!」」」
「おぉ!♡、やっぱり!♡、アタシもソメリ村の出なの!♡」
「「「えぇ!?」」」
サラさんがまさかの同郷だという事実に僕らはびっくりする。でもSランクの冒険者になったなんてなんで誰も噂しないんだろうか?
「もしかしてサラって熊殺しの?!」
「えへへ♡、その名前まだ残ってたんだ♡」
「何それ?」
「昔魔獣化した熊を斧で倒した狩人がいるってちょっぴり聞いたことがあるの!」
「斧で?!」
フレンは大興奮でサラさんの伝説を僕に聞かせてくれる。
「いや~♡、あの時以上の死闘は中々ないね♡」
フレンはすっかりサラさんに憧れちゃったみたいで、目をキラキラに輝かせながらサラさんを見ている。
「そうだ♡、今度家のパーティハウス来なよ♡、同郷だし歓迎する♡」
「行きたいです!」
遠慮もなしにフレンはそういうけど、さすがにお家にお邪魔するのは......
「うちには優秀な魔法使いもいるよ~♡、おんなじSランクだよ~♡」
「わ、私もお話聞きたいです!」
甘い言葉にレナちゃんも釣られて、とうとう僕1人になってしまった。
「刀のお話もできるよ~♡」
「うぎゅ......行きましゅ......」
「よ~し!♡、腕によりをかけてご飯作るからね♡、アタシのチームメンバーが、だけどね♡」
結局僕も釣られてしまって、僕らは今度サラさんのパーティハウスにお邪魔することになった。
「「「お邪魔しました~!」」」
僕らはメーリッヒ商会のお館を出て、また転移魔法で学校の寮に戻る。
「おかえり」
「「「ただいま帰りました~!」」」
お夕飯を食堂で食べて、僕らは一緒にお風呂に入る。
「んひゃ~♡、広い~♡」
フレンは大はしゃぎで湯船に真っ先に入って、大きく伸びをしている。
「シオンくん♡、あとで背中流してあげるね♡」
「うん、ありがとう」
「あ、ズル~い♡、私もする♡」
「みんなで洗いっこしようか」
まずは湯船に浸かって体を温める。
「主席シオンだったりして♡」
「どうだろう......実技なら自信あるけど、お勉強は貴族様に比べたらわかんないし」
「実技で自信あるなら相当あるんじゃない?、可能性♡」
「うんうん♡、実技の方が配点高いもんね♡」
さすがに魔法用の的を壊したのは僕くらいだろうから、あとは剣術とかで相当優秀な人がいればって感じかな。
僕らはゆっくりお風呂に入って明日に備えた。




