第3話
「シオンおはよ~......」
「おはようフレン、顔洗って来な」
「うん......」
ちょっと寝ぼけたフレンが顔を洗いに行って、僕もチェックアウトのために荷物を片づける。
「シオンくん......あの......」
2人きりになった瞬間を狙ったのか、レナちゃんが僕に話しかけて来る。
「どうしたのレナちゃん?」
「す、すすすすす......」
頑張れレナちゃん!、僕はレナちゃんの事大好きだよ!
「っすす、し、シオンくんのことがすすす、好き!、大好き!、けこ、けこここ、結婚してくださしゃい!!」
僕はレナちゃんのおっきなおっぱいを潰すように抱きしめて、耳元で囁く。
「僕ずっと待ってたよ。僕もレナちゃんの事大好きだから」
「う、うん......♡」
「でもね、1個だけ条件あるの」
「じょ、条件?」
レナちゃんは僕の言葉に不安そうに聞き返してくる。
「僕、いっぱいの女の子と結婚するから......他の女の子と仲良くできる?」
「す、する!」
「ありがとう」
「ほにゃ♡」
レナちゃんをさらに強い力で抱きしめてあげる。
「ふっふっふ♡、お嫁さん2号解禁ですなぁ♡」
「ふ、フレンちゃん♡」
「でも私が1号だから!」
「フレン、そういうのナシって言ったでしょ?」
「うぐっ......はい......」
それにまだ結婚してないから1号とかは予約の段階でしかない。あんまり意地悪すると......
「フレンだけ結婚予約の取り置きにしてもいいんだからね」
「う、嘘です!、ね、ねぇ?レナ?、私ら仲良しだよね?」
「ふふ♡、うん♡、仲良し♡」
「ふ、ふぅ......」
フレンは九死に一生を得るみたいな雰囲気を出してるけど、もちろん僕だってそんなことはしたくないからね。
「じゃあ、学校行こっか!」
「「うん♡」」
僕らはお宿の朝ごはんを食べたら、鍵をフロントに返して学校に向かう。手荷物が少なすぎてフロントのお姉さんに「忘れ物してない?」なんて言われてしまった。
「受験生の受付はこちらで~す」
3人で受付をして、まずは座学の試験をする。メインは実技と言えど座学で落とされることも普通にあるから、しっかり見直しして、ケアレスミスに注意だ。
「それじゃあシオン、レナ。私はこっちだから♡、頑張ってね♡」
「うん、フレンもね」
僕とレナちゃんは魔法の実技、フレンは弓の実技の会場だから違うところに行く。
「では230番得意な魔法をどうぞ」
「はい!」
ここは出し惜しみせずに全力の魔法で行こう。森の中ではあんまりできなかったけど、ここなら思いっきり火の魔法ができる。
「そりゃ!」
温度の高い炎をイメージして......放つ。赤い炎じゃなくて、青く、青白い炎だ。
僕の炎は的を燃やし尽くして、その後ろの壁まで貫く。
「......コホン!、231番、前へ」
たぶんOKだろう。なんせ的を燃しつくすどころか傷つける人だってレナちゃん以外にはちらほらとしかいなかった。この手の魔法用の的は魔力を弾く特別なコーティングをしてあるからね。
試験が終ったら、僕らは王都を観光してから最近習得したばかりの僕の転移魔法でお家に帰るのだ。
「シオン♡、コレどう?♡」
「シオンくん♡、どうかな?」
2人とも僕お店の髪飾りを頭に当てて僕に見せてくれる。
「とっても似合ってるよ。買ってあげる」
「「やった♡」」
フレンには髪を耳にかけて留めておくためのピンを。レナちゃんには髪を結ぶリボンだ。
「毎度~」
「「えへへ♡」」
「そうだ、エリーナさんにもご挨拶しなきゃ」
「そうだね。お宿も取ってくれたし」
「じゃあ、早速シオンの転移魔法でご~!♡」
「じゃあ、2人とも行くよ!、せーのっ!」
僕は魔力を開放して転移魔法を使う。場所はしっかり覚えたから、エリーナさんの所のメーリッヒ商会まであっという間だ。
「きゃぁ!!」
僕らが転移した瞬間後ろから叫び声がした。慌てて振り向くと黒髪のおとなしそうなメイドさんが驚いて腰を抜かしてしまっている。確かこの人、エリーナさんと一緒に馬車に乗った時にいた気がする。
「ごめんなさい!、大丈夫ですか?」
「は、はい......♡」
僕は急いで駆け寄って、手を握って起こしてあげる。
「あ、そうだ、エリーナさんにご挨拶したいんですけど......」
「かしこまりました......♡、確認してまいります♡」
メイドさんは頬をぽてっと染めながら、急いで館の中に入っていった。
「あ~あ♡、シオンてばま~た女の子堕として♡」
この世界は女の子がとてつもなく多くて、男が少ない。ゆえに男慣れしてない女の子はコロッとイキやすいのだ。自惚れではなく、村の女の子はみんな僕のことが好きだと思う。
「そんなつもりないんだけどね......」
「シオン様、エリーナ様がお会いしたいと」
「ありがとうございます」
館の入り口で待っていると、アポがとれたみたいで、僕らはまたエリーナさんの所に案内してもらう。
「シオン様、フレンちゃん、レナちゃん♡、ようこそいらっしゃいました♡」
「「「お邪魔しま~す」」」
「今日は、ご挨拶に......僕らはまた村に戻るので......」
「まぁ......寂しくなりますわ......」
エリーナさんは寂しそうな顔で僕の方を見つめてくれる。
「まぁまぁエリーナさん!、私たち受かるからすぐに会えるようになるよ♡」
「ふふ♡、そうですわね♡、あの実力で不合格なんて考えられませんわ♡」
フレンに元気づけられたエリーナさんはにっこり笑ってくれる。
「そういえば皆様が急に現れたとメイドが......」
「あぁ、転移魔法で驚かせてしまって......」
「まぁ!、そんな高位の魔法まで......♡、シオン様は神童様でいらっしゃるんですのね♡」
「え、えへへ......」
「そうなんです!、シオンくんはこの歳で空間魔法を使いこなすプロフェッショナルなんです!♡」
「れ、レナちゃん......恥ずかしいよ......へへ」
「ふふ♡、仲がよろしくって羨ましいですわ♡」
「エリーナさんももう仲良しでしょ~?♡」
「ふふ♡、そうですわねフレンちゃん♡」
フレンはすぐにエリーナさんと仲良しになって、なんなら隣に座り始めた。
「そうですわ!♡、お友達のしるしに♡」
「なんですかコレ?」
エリーナさんが渡してくれたのは黒と金のカード?プレート?みたいなものだ。
「受付にこれを見せればすぐにわたくしが飛んでいきますわ♡」
「え、そ、そんな貴重そうなものいいんですか?」
300万をポンと子供に出せる商会の重役とすぐにお話ができる権利だなんて、死ぬほど欲しい人がいるだろうに。
「だって、お友達♡、ですわよね?♡」
「うぅ......」
「お友達と自由にお話するためには、わたくしにはこういったものがないとダメなんですの......」
「あ~♡、シオンがエリーナさんの事悲しませた~♡」
「めそめそ♡、え~んえ~ん♡」
エリーナさんはわざとらしく泣くマネをしているけれど、いろいろ窮屈な身分なのは本当なんだろうな。
「じゃあ、ありがたくいただきます......」
「はい♡」
しばらくエリーナさんとお菓子を食べながら学校の話をしてもらった。エリーナさんは僕らが受験した学校のOGなのだ。
「わたくしもあの学校で出会ったお友達とは今も仲良しですの♡、ですから皆様にも良い出会いがあることを祈っております♡」
「お友達ってどんな人ですか?」
「貴族の方から冒険者の方まで......様々ですのよ♡」
「「「冒険者......!」」」
「ふふ♡、皆様も冒険者志望ですの?♡」
「「「はい!」」」
「皆様ならばすぐにランクを上げてご活躍なさるでしょうから♡、期待しておりますわ♡」
「ふっふっふ♡、なんてったってこのフレンちゃんがいますからね♡」
「私だってシオンくんもいます~!」
「3人で頑張ろうよ」
「「うん!♡」」
「たくさん冒険のお話を聞かせてくださいね♡」
エリーナさんとおしゃべりした後は、みんなで村に帰る。エリーナさんと案内してくれたメイドさんがお見送りしてくれた。
「「「ただいま~!」」」
「おかえりシオンちゃん!!!」
僕は自分の家の前に転移すると、一瞬でお母さんが出てきて僕を抱きしめてくれた。
「怖い思いしなかった?、怪我は?、お母さん心配で......」
「大丈夫だよお母さん。試験もちゃんと受けてきたし、お友達もできた!」
「ユーリさん!♡、私が一緒なんだから大丈夫♡」
「そうね♡、フレンちゃんにレナちゃんまで一緒なら大丈夫よね♡」
「あ、あの、ユーリさん!、お話が......」
「あら?♡、何かしら?♡、わからないけど楽しみね♡」
顔を真っ赤にするレナちゃんからすべてを察したお母さんはレナちゃんを連れて奥に入っていった。
「シオンちゃん♡、お母さんはシオンちゃんの心が第一だから認めるわ♡」
「ありがとうお母さん」
「シオンちゃんならっぱいの女の子を幸せにできるわ♡」
「うん!、まずは2人の事幸せにする!」
「「えへへ♡」」
「ふふ♡、じゃあ、村長さんにもご挨拶しに行かなくちゃね♡」
僕らはみんなで村長のお宅にお邪魔する。これからは義理のお祖母ちゃんになるからね。しっかり挨拶しなきゃ。
「ふぅ......ようやくね.....」
村長さんは報告を聞いて一安心といった感じで息を吐く。一方のレナちゃんは小さく縮こまっている。
「ほんと!、レナは奥手すぎ!、ね?、シオン♡」
「人それぞれタイミングがあるから......でも確かにもうちょっと早くてもよかったかな?」
「うぅ......しゅみましぇん......」
「でも嬉しかったから許してあげるね」
「シオンくん......♡」
「じゃあ、今日はお祝いね♡、レナちゃんの結婚と合格の前祝♡」
お母さんが張り切って料理を作ってくれて、僕らは村長さんと一緒にいっぱいご飯を食べた。




