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西遊記龍華伝  作者: 小桃
36/51

女帝毛女郎 壱

爆発が起きる少し前、酔い潰れた三蔵を連れ黄華は隣の部屋に移動していた。


三蔵を寝かせた黄華は、自分の口に赤色の紅を指で引いる。


フワッ。


黄華の体を包むような、柔らかい風が少し吹いた。


すると黄華の頭から白い獣耳と、お尻から五本の尻尾が生えた。


黄華は人間でなく、六大魔王の一員でもある黄風であった。


黄風は牛魔王から人間のフリをして経典の情報を集めと三蔵の抹殺の命令を受けている。


だが、黄風は恋敵である毛女郎を殺す為に色々な妓

楼の店で働き毛女郎を探していた。


そんな時、孫悟空と源蔵三蔵が福陵に来たと言う情報を聞き付け、三蔵に花を渡し鈴蘭に来るように仕向けた。


「へぇ…。やっぱり若い男の肌は違うわねぇ…。ピチピチで良いわぁ…」


黄風は寝ている三蔵の頬で、指で触りうっとりしていた。


黄風はかなりの美男子好きであり、三蔵は黄風の好みであった。


「殺すのは遊んでからで良いわよね?悟空は音華と

宜しくやってるだろうし…」


そう言って、黄風は三蔵の服に手を掛けようとした瞬間だった。


バク


三蔵は右手の指を二本立てて、呟いたのだった。


「えっ?」


次の瞬間、黄風の前に光の玉が現れた。


ドゴォォォーン!!!


***


天蓬元帥ー


爆発音が聞こえた俺と悟空は、隣の部屋の扉を勢いよく開けた。


バン!!


部屋中は煙で充満し、目に煙が染みて行く。


「ゴホッ、ゴホッ!!」


煙を吸い込んだせいで咳が、止まらなくなった。


俺が咳をしているのに、悟空は呑気に手で煙を払っていた。


ドタドタドタドタ!!


こちらに向かって、走って来ている音が聞こえ来た。


「おー、おー。派手にやったなぁ、三蔵」


「え、え?これ、あの子がやったの?」


「本人に聞けば良いだろ」


悟空がそう言うと、煙の中から三蔵が現れた。


「ゴホゴホ!!ちょっ悟空!!助けに来いよ!!」


「あ?お前だって、気付いてたんだろ?アイツが妖だって」


「は?」


悟空と三蔵の会話を聞いて、思わず声が出てしまった。


「え、え??ちゃんと説明してくれ!!」


「え!?お、男?悟空、音華さんと一緒じゃなかっー」


「ッチ。おい、頭下げとけ二人共」


悟空は舌打ちをしながら、乱暴に俺達の頭を掴み下げさせた。


シュルルルッ!!!


俺達の頭を上を獣の尻尾が通って行く。


「なっ!?」


尻尾?!


もしかして、黄風のか!?


そんな事を考えていると、悟空が不機嫌な声を出した。


「おい、三蔵。ちゃんと仕留めてなかったのかよ」


「牛魔王の仲間がこんなんでやられる訳ないだろ!?俺がやったのは、目眩しみたいなものだ!!ここで、派手に出来ないだろ!?」


「ッチ、面倒くせぇな…」


悟空は舌打ちをした後、ズボンから何かを取り出した直後だった。


スッ!!


悟空の背後から気配を感じた。


「ご、ごくー」


俺が悟空の名前を言い終わる前に、黒い大きな扇子を持った黄風が悟空の頭に振り下ろそうとしていた。


ブンッ!!!


キィィィン!!!


硬い物同士がぶつかり合う音が聞こえ、悟空の手に持っていた物は如意棒だった。


悟空は如意棒を使い黄風の扇子を受け止めていた。


「久しいな、悟空。其方、もう外に出て来ていたのか」


「五百年ぶりにな。挨拶しちゃあ、随分と乱暴じゃねーか」


悟空は如意棒を使って黄風の扇子を払い、如意棒を

黄風の頭に振り下ろした。


キィィィン!!


黄風の前に黒い鉄の破片のような物が、何本も現れ如意棒を受け止めていた。


「お前、牛魔王の血を飲んだのか」


「六大魔王達は皆、牛魔王様から血を与えられている。こうして、牛魔王の能力を分けて貰えてる」


そう言って、黄風は自分の尻尾を撫でた。


「えっと…。その服を着てるって事は…、アンタは音華さんか?」


不意に三蔵に声を掛けられ、隣にいた三蔵に視線を向けた。


やはり、金蝉に似ているな…。


金蝉の若い時と瓜二つだ。


「あ、あの…?」


「あ、あぁ!!そうだよ。事情があってね。君は、黄華が妖だって良く分かったね?」


「え?普通に分からなかった?雰囲気で分かるよ。それに、貴方も妖怪でしょ?」


「あ、そう言うモノ?俺も一応は、妖なのかな…?」


俺がそう言うと、三蔵は不思議そうな顔をした。


***


孫悟空ー


キィィィン!!


キィィィン、キィィィン!!


如意棒を使って黄華の攻撃を止め、黄風からの攻撃に備える。


コイツの出す、この黒い鉄の破片みたいなのが鬱陶しい。


それに黄風の持っている扇子も、牛魔王の血で出来ている物みたいだな。


「ほーらほらほら、愉快に踊ってみせるが良い」


黄風は笑いながら、扇子を使って鉄の破片を操る。


俺は如意棒で払っては、攻撃をしての繰り返しだった。


後ろで、三蔵と天蓬が呑気で喋っている。


イライライラ…。


俺の中でイライラが募っていたが、俺の横を数枚の札が通って行った。


後ろをチラッと見ると、三蔵が指を素早く動かしているのが見えた。


黄風は俺にしか興味を向けていないらしく、札が飛ばされている事に気が付いていないようだった。


成る程、俺は黄風の興味を引いてれば良いのか。


三蔵は一応、坊さんの中でも偉かったなー。


はいはい、分かりましたよ。


やってやりますよ。


そう思った俺は、如意棒で飛んで来た黒い鉄の破片を飛ばした。


ビュンッ!!!


流れに身を任せながら、如意棒の長さを長くし黄風に

急接近し、回し蹴りを喰らわした。


ドカッ!!!


が、しかし黄風の尻尾が俺の足を掴み持ち上げた。


「ちょ、悟空!?」


プラーンッと、持ち上げられた俺を見て天蓬が叫んだ。


そりゃあ、この姿を見たら誰だって俺がやられるって思うだろうな。


「どうしたー?悟空よ。さっきまでの威勢はどうした?」


そう言って、黄風は俺に顔を近付けて来た。


「お前も中々、良い顔立ちをしておったなー」


「顔が近い、ちょっと離れてくんねーかな」


「おや?何だ照れておるのか?」


んー、そろそろ良いかな。


パンッ!!


後ろから、手の叩く音がした。


音爆螺旋オンバクラセン


三蔵がそう言うと、飛ばされいてた札から光の鎖が現れた。


ジャキンッ!!!


「っ!?」


ガシッ!!


光の鎖が黄風の体を拘束した。


「あははー、滑稽こっけいだなー、黄風」


縛られているお陰で俺の足を掴んでいた尻尾の力が緩み、俺の足は解放された。


「貴様…、これの為にわざと捕まったのか!!」


「お前が、俺に夢中になってたのが悪いだろ?」


ガチャンッ、ガチャンッ!!


黄風が何とかして鎖を解こうとしているが、暴れれ

ば暴れる程に鎖が体に食い込んでいた。


「あんまり暴れない方が良いぜ?」


そう言って、三蔵が俺の隣に立った。


「お前、酔い潰れておらんかったのか?」

 

黄風が三蔵に質問されていた。


「いや、酔ってたけど…。黄華が元の姿が戻った時に正気に戻ったんだよねー。俺、これでも坊さんだから妖の気配に敏感になっちゃうのよ」


「それで、お前は部屋に来なかったのか、悟空」


黄風は俺を睨みながら呟いた後、ハッとした表情をした。


「せ、青蘭…?」


「青藍?そんな奴どこにも…。」


俺は黄風の視線を追って、行くと天蓬を見ていた。


コイツ、天蓬の事を見て青藍って言ったのか?


「青藍、生きていたのか?」


「あー」


黄風に尋ねられた天蓬は、頭を掻いた。


「あのな、俺はアンタの言ってる青藍じゃー」


ガチンッ!!!


鎖が破られる音がした。


俺と三蔵は音のした方に振り向くと、黄風が光の鎖を壊していた。


「「え、えぇぇぇぇぇえ!?」」


俺と三蔵は同時に大声を出した。


黄風の体から赤黒いオーラが出ていた。


あ、まずいこれ。


かなり黄風が怒ってる。


「お、おい、三蔵。お前の出した鎖って、簡単に破られんの?」


「いやいやいや!?あんなの普通の妖は破れないよ!?あの黄風がやばいのよ!?」


「青藍を…」


「「はい?」」


黄風の言葉に俺と三蔵は、同時に反応した。


「青藍を妾に渡せ!!!」


ドゴォォォーン!!!


黄風は大声を出しながら、足を床に強く叩き付けた。


シュルルルッ。


五本の尻尾は刃の形に変わり、黒い鉄の破片が沢山現れた。


「青藍は妾の物じゃ、邪魔をするなら…」


バサッ!!


黄風が持っていた大きな扇子を広げた。


「潰すぞ、小僧」


ビリビリッ!!!


肌にピリ付く感触がした。


やっぱり、牛魔王がそばに置くだけはある。


コイツ…。


牛魔王の同じぐらいに、強くなってやがるな。


「おい、悟空。ここには、一般市民が沢山いる。黄風を外に誘き出すぞ」


三蔵がそう言うと、腕輪が強くしまった。


ガチャッン!!!


これが、命令か。


この腕輪を着けている限り、俺は三蔵の命令は絶対に聞かないといけないらしい。


はぁ…、これも俺に課せられた宿命だな。


「はいはい、分かりましたよー。やれば良いんでしょ」


「面倒くさがるなよ」


三蔵は俺の事を見て呟いた。


「おい、天蓬。お前もシャキッとしろよ。黄風はお前を狙ってんだぞ」


俺は後ろを振り返り、天蓬を見て呟いた。


「俺は黄風を殺す為に、ここにいるんだ」


天蓬がそう言うと、天蓬の手のひらから紫色の拳銃

が現れた。


カチャッ。


そのまま天蓬は黄風に銃口を向けた。


「俺はアンタを殺す。そして、毛女郎を助けてる」


「毛女郎がいるの?どこに、どこにいるのよー!!!」


黄風が叫ぶと一斉に、黒い鉄の破片と尻尾が俺達の方向に飛んで来た。


ビュンッ!!!


グイッ!!


俺は乱暴に三蔵の手を引き、後ろに下がらせた。


三蔵と入れ替わるように天蓬が前に出る。


「まさか、お前に背中を預ける日が来るって、思ってもなかったわ」


「それはこっちの台詞だ!!」


俺はそう言って、如意棒を使って黒い鉄の破片を弾き飛ばした。


ビュンッ、ビュンッ!!!


パンパンパンッ!!!


天蓬は黄風に向かって、銃弾を何発か放った。


パァァンッ!!!


天蓬の放たれた銃弾が、一本の尻尾を弾け飛ばした。


弾け飛んだ衝撃で、赤黒い血と血肉が飛び散る。


「ギャアアアアア!!!」


黄風は苦痛の声を上げながら、体をよろけさせる。


「お前の拳銃、凄くないか?」


「これは毛女郎の武器だよ。それよりも、今のうちに外に出るぞ!!」


「お、おお」


俺達は黄風を外に出すように誘導するべく、廊下を走り出した。


ダダダダダダダッ!!!


俺達は、一階へと続く階段に向かって走っていた。


ダダダダダダダッ!!!


後ろから物凄い速さでら黄風が俺達の後を追って来て

いた。


ドゴォォォーン!!


「お、おい三蔵!!このままの方が、被害が出るんじゃないのか?!」


「た、確かに!!黄風の奴、正気じゃないみいだし」


「なら、俺が囮になって外に出る」


俺達の会話を聞いた天蓬が、右隣にあった窓を開け外に飛び出した。


ビュンッ!!!


「あ、おい!?勝手に行くな!!」


三蔵が外に飛び出した天蓬に叫ぶと、黄風が物凄い速

さで窓の外に出た。


***


二階の窓から出た天蓬は、黄風は対面するように立っていた。


外に逃げ出した客と妓楼達は、黄風の姿を見て逃げ出していた。


「青藍。どうして、妾を選んでくれなかったのじゃ?」


「俺はアンタの言う青藍じゃないよ」


「嘘じゃ、妾が青藍を間違える筈がない。なぁ、今度こそ妾と共に生きようぞ?」


黄風はそう言って、天蓬に向かって手を差し出した。


カチャッ。


天蓬は拳銃の銃口を黄風に向けながら、口を開く。


「俺はもう、毛女郎のモノなんだよ。だからアンタのモノにはならないよ」


天蓬がそう言うと、黄風は自分の尻尾を大きくした。


「毛女郎、毛女郎…って五月蝿い!!!アンタを殺してずっと妾の側に置くわ!!そして、毛女郎も殺してやる。ずっと、ずっと毛女郎を殺す為に妾は生きてきたのじゃ!!」


「殺させないよ。お前は俺に殺ろされるんだからな」


天蓬はそう言って、引き金を引いた。


パァァンッ!!!


***


孫悟空ー


「お、おい!?何の騒ぎだ!?」


「建物が壊されてる!?」


「ここは危険だ!!」


騒ぎを聞きつけた客と妓楼達は、部屋を飛び出し階段を降りて行った。


「あ、ちょっ!?押すな!!」


「ご、悟空!!」


人の波に攫われた俺と三蔵は、逸れてしまった。


俺は押された衝撃で、赤い襖の部屋に転がるように入ってしまった。


ドサッ!!


ドンッ!!


「いってぇ…」


「お前、悟空か」


女の声が頭上から、聞こえて来た。


上を見上げると、髪の長い綺麗な女が立っていた。


すっげー美人…。


ん?


今、俺の事を悟空って言わなかった?


それにこの女、人間じゃないな。


「どうして、俺の名前を知ってんの?」


「それは、観音菩薩から聞いてるし」


観音菩薩!?


観音菩薩の名前が出て来たって事は…、もしかして。


「もしかしてアンタは…、天蓬の言っていた毛女

郎?」


俺がそう言うと、女は軽く笑った。


「私が天蓬を妖にした毛女郎よ。三蔵はどこな

の?」


そう言って、毛女郎は長い髪を後ろに流した。


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