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第9話 ゴブリンの巣壊滅戦

 ゴブリンの巣は森の中、山肌に自然にできたと思われる洞窟だった。ゴブリンは知能は低いが道具を使う程度の知恵は持っている。洞窟の前には見張りがいるし、洞窟の内部には火を利用した照明があることが外から伺うことが出来る。


「明確な巣があると群れを率いる上位種がいる可能性があると……」


 京一の書にはゴブリンの生態が細かく記されている。罠などを利用することもあるので巣に挑むときは気をつけないといけないことも書かれている。事前にきちんと目を通してから挑むことにする。長剣よりもショートソードの方が洞窟内では取り回しがしやすい。相手も強力な武器は使えないので、動きやすさが重視される防具へと変えていく。リョウマの姿、短剣スタイルとなる。


「さて、行くか」


 弓を構えて見張りに狙いをつける。引き絞り、放つ、矢を番え、放つ。

 入口の前に立つゴブリンは頭を撃ち抜かれ静かにその場に座り込むように絶命する。周囲を警戒しながら洞窟の入口に侵入する、入口すぐの場所に鳴子を設置する。もし外にいたゴブリンが戻ればこれで気がつくことが出来る。

 罠に警戒しながら薄暗く狭い洞窟を進んでいく、京一の残した遺産魔道具も人目につくこともないので積極的に使っていく、罠を感知する魔道具に夜目を強化するメガネそれを活用して進んでいく、脇道が正面から見にくい方に伸びて背後を狙う作りになっていたり、突然地面に大穴が空いていたり、かなり嫌らしい作りの場所も何箇所も合った。暗闇から多方向から一斉に襲われることを避けるためにもしっかりとクリアリングをしていびきをかいているゴブリンなどは静かに永遠の眠りについてもらう。

 悪臭と緊張で疲労感が積み重なっていくことを感じる。そもそも夜通し走って到着してそのままの戦闘だから仕方がない。

 布にハーブを乗せて折りたたんでマスクのように使用することで悪臭が随分と楽になる。同時に精神的にも落ち着いて疲労も軽くなったような気分になる。京一の本に書かれていた香りによる効果を利用している。

 それでも慎重に敵の罠を逆に利用して鳴子を置いたり一度絡みつくとなかなか取れない網などを設置していく、入口からしばらくすると通路も広くなってくる。その分視線も通りやすくなり敵から見つかりやすくなるので注意が必要だ。それでも中腰から開放されるだけでも楽になる。

 通路からつながる大きな空間、ゴブリンの悪臭がぐっと強く、長い時間をここで過ごしていることが想像できる。寝室を兼ねたリビングのような場所に出る通路から内部を伺うと10匹程度の少し小型のゴブリンが走り回ったり遊んでいた。

 村を攻めたのが親、成人したゴブリン、ここに残っているのは幼いゴブリンなんだろう。もちろん人間にとってはいずれ脅威となる敵だ。亜人にとっても同様に敵、アーシュは弓を構える。

 すばやく数射、倒れたゴブリンを見ても何が起きているのか理解できない、遊んでいる程度の認識なんだろう、皆が死体に集中したタイミングでもう何体か背後から打ち抜き、短剣を構えて一気に接近する。素早く首元を切り裂き全員を始末する。ぎゃあぎゃあと悲鳴をあげたので、奥につながる通路脇でしばらく様子を伺った。


「……ふぅ」


 一息つく。部屋の中を調べて隠し通路などがないことを確認し、さらに奥へと進んでいく。大広間に入る入口にも鳴子の罠を設置していく。

 

「あと少しかな」


 疲労が隠せなくなってきた、アーシュは一息をつき水分と軽食を口に放り込む。


「この匂いの中で飯を喰うのも、久しぶりだな」


 森の中、危険な状態で動物の排泄物を身体になすりつけて生き延びた事を思い出した。ゴブリンの悪臭が可愛く感じるほど、思い出すと吐き戻しそうになるので思い出すのを止めた。


 洞窟はもう少しだけ続いていた。

 広間の奥には動物の皮などが敷かれた他の部屋と比べると立派な部屋があり、この巣の主が大いびきをかいて眠っていた。人間と同じくらいの大きさで体つきも立派で、肥満体、ゴブリンリーダーなんて呼ばれる上位種だと考えられていた。ある程度の数の群れになると、ゴブリンの中からそういった成長する強者が現れる。魔物の生態ははっきりとわからないことも多いが、どうやら畏怖や尊敬、敵からの恐怖など加えて多くの敵を倒した個体がこのように進化すると考えられている。

 アーシュは静かに部屋に侵入し、大いびきをかいているゴブリンリーダーの体に網を放り投げ、その首に腕を回し一気に締め上げた。


「ぐあぁッ!! グベッ!!」


 もがこうとしたが、網が寝床と身体に絡みつき身動きが取れなくなる。すでに首を極めている状態でその網を取り除くのは、不可能。

 短剣や弓よりも確実に命を奪う方法、締めからの……


 ゴキン


 嫌な感覚がアーシュの腕に伝わる、首を締め上げ、力任せに頭を捻り続け、首をへし折った。ビクリと身体を震わせ、だらりと全身の力が抜け失禁する。

 短剣でゴブリンたちよりも一回り大きな耳を削ぎ落として袋に入れ、部屋を後にする。身体に色濃くゴブリンの匂いがへばりついて気持ち悪くなったが、最後の探索を続ける。

 リーダーの部屋の脇に最後の部屋があった……真っ暗で、排泄物の匂い、腐敗した匂いが立ち込めている。

 京一の本に乗っていた情報から、アーシュは嫌な予感がしていた。壁に着いていた松明をもって部屋を照らした……


「……クソが……」


 そこには檻があり、筆舌に尽くしがたい状態の人間、だったものが倒れていた。部屋の隅には腐乱した死体が数体乱雑に積み上げられている。


「苗床……」


 ゴブリンの悪しき生態の一つ、他種族を利用した繁殖の場所だと考えられた……





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