第38話 魔法と呪術
「リョウマ様!!」
集合場所にたどり着くとドワーフたちや獣人がリョウマを迎えてくれた。
「驚きました、急にマグマから色が失われて、ご覧の通り……」
以前はマグマが滝のように降り注いでいたが、今は冷えて固まってしまっている。
この場に来る途中の山もまるで火が落ちたように真っ黒に変色し熱気も失っていた。フェニックスの力が凄まじいことを表している。
「リョウマ様、顔色が良くなっていらっしゃいますね」
「……そういえば、倦怠感や眠気が無い」
ずっと悩まされていたそれらの辛さが無くなっていることに今気がついた。
そして、リョウマはこの日の夜久しぶりに熟睡することが出来た。
フェニックスはリョウマを蝕んでいた要素を調節し整えてくれたのであった。
「魔力の通りが、なんというか、綺麗だ……」
全身を巡る魔力の通り道が整理され、そして強化されていた。
今までは細く曲がりくねった管に大量の魔力を力で流し込んでいたのが、管が太くなってまっすぐになったような、大きな変化を体内に感じていた。
そして亜人たちにも大きな変化が訪れた。魔力だけでなく精霊を知覚して魔法を講師できるようになったものが現れた。
「リョウマ様のお陰で、呪術を恐れる必要がなくなりました……これで多くの仲間を救える」
「各国も本格的に我々の動きに対応を見せています、全面衝突は免れません」
「……戦いは避けられないのはわかる。だが、このまま戦えば我々が数で押し切られないか?」
「魔法という武器、それに、我々が持つ本来の力は人間たちよりも上です。
一方的にやられるようなことはまず無いと考えています」
「だが、犠牲をいとわず敵が断続的な攻撃をしてくれば我々はジリ貧になるぞ」
「自分たちが手に入れた力もきちんと理解していないでの蜂起は時期尚早、今はまだ地に潜んで力を蓄えるときではないか!?」
本拠地に戻ってからは皆の意見が対立した。
人も増え、力も備えてきてはいるが、この世界における人間との人口比は圧倒的少数。この状態で動きを起こしても各国が手を取り合って対応されれば対抗できる絵図が書けない。それに……
「我々は人質を取られているのも同義なのだぞ」
「未だに奴隷として使役させられている亜人は大量にいる……場合によっては、いや、ごく当たり前に、その奴隷たちと戦う事になる」
「解放すればいいじゃないか」
「解放と紐づけて生体爆弾にされた方法がすでに報告されている……、悪辣なことに、先に爆弾を解除しようにも、腹の中などに縫い付けられている……」
「なんという非道な……」
「しかし、だからこそ、時間をかければその様な非道な手段を取られる!
できる限り早く奴隷を解放していかねば!!」
「皆、少し静かに」
リョウマの言葉に全員が静かになる。
「現状魔法を行使できるのは何名ほどだ?」
「まだ20名にも満たないです」
「精霊の知覚は?」
「そちらは100と少し」
「精霊に声を届けてもらうことで我々には革新的な情報伝達方法が使用可能になった」
世界のいたるところにいる精霊の力をかりて言葉を届ける。
これは普通の方法とは比べ物にならないほど早く長距離での意思疎通を可能にした。
「魔法を使える人数的に10部隊が限界だが、10あれば各地に散ってゲリラ的に街の奴隷を解放して回ることが可能だし、人間たちの情報網を潰すのは魔法が使えなくても可能だ、その上で我々は情報伝達という強みを握っている。これらを利用し、今までよりも一気に奴隷解放運動を活性化させる。そして、まずは、国を、我らの安住の土地を手に入れよう。本拠地レベルではない、国を得る。そうすればそこを旗印として野にいる亜人を集められる……亜人が集まれば、また魔法が使えるものも増える。
我々は、止まれない、これからは時間との戦いだ。
ただし、大規模な正面からの戦闘は行わないようにしていく、俺達には情報がある。圧倒的に優れた情報が、少数によるゲリラ戦、それが俺達の唯一の活路だ」
皆、リョウマの言にうなづいている。
「そして、これからは、多くの犠牲が出るだろう。生体爆弾になってしまった者を……救えないことも増えていく。少数の犠牲で多数を活かす。そういう判断が必要になる。……すべての咎は俺にある。責めるなら、俺を責めろ……俺は全ては救えない! 救えるものしか……救えない!! それでもいいなら、共に闘って欲しい!!」
「リョウマ様がいなければ我々は死んでいた。生かされているだけで生きてはいなかった!!」
「そうだ!! 今我々は自分たちの足で立って、自分たちの手で自由を手に入れている!!」
「過去の犠牲よりも尊い犠牲も出るかもしれないが、これは、我々が自由を手に入れる最初で最後のチャンスなんだ!」
「リョウマ様一人に咎は負わせません! 我ら一同、等しく罪を背負って行きます!!」
「……行くぞ!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
リョウマは無自覚に指輪を握りしめていた。
メラとヤドの犠牲を無駄にしないためにも、彼には止まっている暇はなかった。
その戦いが彼の心を切り裂くような戦いになるとわかっていても、止まるわけにはいかなかった……
今、亜人と人間の最終戦争の狼煙が上がる。
その戦いに明確な正義など無い、自由を求める亜人たちの叫びのような戦いとなるのであった。




