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第17話 ゲリラ戦

「どうしますかアーシュ様」


「……結構しっかりと村を作るんだな、本では見たけど実際に見ると、こんなに違うのか」


「変わってますねアーシュ様は」


「きちんと森を切り開いてその木材で建築をして、ボロいがそれなりにしっかりした住居を魔物が作ってるんだから凄いよな。これで人間を襲わなければ棲み分けも出来るだろうに……」


「魔物は人を襲うから魔物と呼ばれるわけですから、その仮定に意味はないかと」


「そうだな、と、真面目に考えれば、火矢で遠い側の家屋を何軒か燃やして、混乱しているうちに各個撃破、これでまず問題ないだろ」


「作戦は冷酷なんだ……」


「なんか言ったか?」


「いえ、素晴らしい策だと思います」


「よし、ではメラは……あの辺りで控えていてくれ、出火して混乱が広がったら始めよう」


「わかりました」


 アーシュは弓矢に小さな袋を結びつける、中には可燃性の高い油が入っている。鏃にもそれを塗って火をつけて矢を番える。空に向かって矢を放てば空中に炎の軌跡が描かれる。見事遠い場所の屋根に炎の矢が突き刺さり、油の勢いで一気に燃え上がる。数軒に同じように矢を放ち、後は時を待つ。

 オークたちは突然燃え上がった家屋に気がつくと慌ただしく動き出す。

 木製でしかもよく乾いた木枝を屋根に利用しているせいで火の勢いは強い。

 火を消せるほどの大量の水源も内容で、オークたちは必死に建物を破壊して対応するという選択肢を取った。


「行くか」


 そして、完全に意識が燃える家に向いた頃アーシュとメラが同時に動き始める。

 後は一方的な戦闘、いや、暗殺だ。

 背後から口を塞いで首筋を切り裂く。

 木々が燃える音、オークたちの混乱の声に紛れて一体、また一体とオークは処刑されていく。最後の一体が回りに誰もいないことを疑問に思った次の瞬間、そのオークの生命もかき消された。その後全ての家の中を探索し残党がいないことを確認した。


「この火はどうするのですか?」


「こうする」


 大量の砂が燃え盛る家に降り注ぎあっという間に炎を飲み込んだ。


「……これほどの大容量の収納系魔道具……?」


「これも内緒だぞ」


「アーシュ様は本当に何者なのですか?」


「俺の力じゃない、京一が人生をかけて残してくれたそれを使わせてもらっているだけだ」


「アーシュ様の師のようなお方なのですね」


「そうだね、そう、先生、うん、師匠だな」


「アーシュ様、私はアーシュ様の手足となり、場合によっては貴方様の盾となる覚悟はあります。もしよろしければ、アーシュ様の本当の力、お姿を教えていただけると盾として正確な働きが出来ると愚考します」


「確かにメラの言うことは一理あるな……わかった。今回の依頼の打ち上げで俺の秘密を、そして京一の話をしっかりとしよう」


「ありがとうございます」


「信頼を得るには俺も隠し事してたら意味ないもんな」


「私は奴隷です。主人の全てを知る必要はないとは思いますが、戦いなどにおいての判断に影響しそうなことは教えていただきたいです」


「そのとおりだ。ま、とにかく討伐の証と肉の回収をして帰ろうか」


「かしこまりました。なんとか暗くなる前に終わらせましょう」


「早さ重視だな流石にこの量は」


「ところでアーシュ様のお持ちの収納魔道具、内部の物は変化しますか?」


「いや、だから実は大量の肉とか木の実とかストックしているぞ、あと水」


「……絶対にそれ口外しないでくださいね」


「流石にな、だからこうやって荷物でカモフラージュしてるし」


「時間停止の収納魔道具なんて見つかったら王族が奪いにきます」


「それほどか……」


「それほどです」


「京一、ちゃんと本に書いておいてくれよ……」


「私もなんでも知っているわけではないですが、ある程度の分別はつきます。

 一度整理しましょう、話し合いの時に」


「ああ、そうしてくれると助かる。

 本当は使いたくてもしまってある物がたくさんあるんだ。

 特に武具がな、判断が難しくて」


「……魔装具まであるのですか……私はとんでもない人の奴隷になったようだ」


 二人は話しながらも手は高速で動いている。皮を剥いで余計な脂肪は落として、といっても油に仕えるので捨てはしない、そして内蔵を取り出して関節部分で肉を分けていく、内臓は臭みが強すぎるのと食べると病気になると伝わっており、京一は寄生虫などの可能性を指摘していた。一部は乾燥させながら持ち帰り、残りは全て収納する。内臓には火を放って焼いておく、埋めておくと野生の動物などが掘り返して集まってしまっても近くの村が困るためだ。

 なんとか日の暮れる前に仕事を終えたが、そのままオークの村で一晩を過ごしてから村へと戻り報告を行う。

 一部の肉類は村にも置いて良い仕事のアピールも忘れない、もっと肉が有ればよかったが、激しい戦いで食べられそうな物はこの程度だったという物語も用意してある。それでも数体分のオークの肉は村にとっては降って湧いたごちそうでとても喜ばれた。


 アーシュ・サカキの名声は高まり、オークの村を奴隷と二人で破壊した功績によって中等冒険者へと昇給した。アーシュの最初の目標が達成された。


「これで国の移動が容易になるぞ」


「おめでとうございます」


「今日は街の外に出てお祝いと行こう」


「外ですか……すみません私のせいで」


「あー、違うんだよ、外では外の楽しみ方があるから俺はむしろ嬉しいんだ」


「そう、なのですね……」


 メラは、本当に変わった主人だと改めて思った。

 街を出て川沿いの森に少し入ったとことでアーシュは場所のあたりを付けた。


「さて、メラ、人につけられたりはしてないよな?」


「はい、大丈夫です」


「じゃあ、出しちゃおう」


 メラは驚きに目を丸くした。アーシュが取り出したものは、家だったからだ。






 


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