なりおおかしなやつ辞典
ここ、小説投稿サイト『小説家になりお』には、毎日おかしなやつが現れる。
いつものあいつの場合もあり、新たなそいつの場合もある。
さてそれでは一人ずつ見ていってみよう。
1、斎藤かずお
「感想をくれ!」
斎藤かずおはピストルを自分のこめかみに当て、喚き散らしていた。
「感想をくれないと引鉄をひいてコイツを殺すぞ!」
誰もが相手にせずに通り過ぎていった。
単に気を引いて感想がもらいたいだけなのをわかっているのだ。
「『いいね』だけでもいいからください!」
遂に斎藤かずおは泣き出してしまった。
「でも★1はいりません!」
かわいそうだとか思ってはいけない。
また、まるで自分を見ているようだなんて思う必要もない。
誰もが同じようなことを思っていたとしても、誰もそれを心の中で押しとどめ、表には出さないものなのだ。かくいう私も……
とにかく斎藤のことは放っておくのが優しさというものだ。甘やかしてはいけない。
下手に優しい感想など送ろうものならストーカー化されたりしかねない。
自力で彼が感想をもぎ取れる日が来ることを祈るしかないのである。では次!
2、ひとりゴッチ
「いや〜、連休中はどこにも行けなかったよ。体を壊しちゃってね」
「うん。飼い猫に思いきり噛みつかれちゃって、右手の甲に穴あいちゃったwww」
「大丈夫、大丈夫。気合いで執筆はできるから」
ひとりゴッチは寂しい男である。
いつも自分の活動報告で一人、会話をしている。
お気に入りユーザーも逆お気に入りユーザーもゼロである。
誰も彼のことを知らないのに、いつも一人で会話しているのだ。
それはまるで電車の中で一人で会話をしているひとのように──
かくいう私も、たまにそういう時があるが、彼はいつもそうなのだ。
そのくせにもし誰かが横から話しかけたら、目をそらして黙り込んでしまうだろう。
寂しいな、ひとりゴッチ。
でも結構かわいい、ひとりゴッチ。
次へいってみよう。
3、じいなコゴミ
「面白かったです! ところで私はこんなものを書いています。よろしかったら読みに来てくださいね!」
「とても面白かったです。私もあなたと同じ宇宙人モノを書いているのですが、興味がおありでしたら読んでみてくださいませんか?」
じいなコゴミは感想をばら撒く。
色んな人の小説に、膨大な数の見知らぬユーザーに、感想をつけて回るのだ。
その感想はいつも『面白かったです』だけで、ほんとうに読んだかどうかはわからない。
誰もが欲しがっている感想というものをエサに、じつは自分の作品を読んでほしいだけなのだ。
「これから仲良くしていただけますか?」
「★評価をありがとうございます! お返しに私も★5を差し上げます!」
はっきりいって、不正である。
しかしそこをうまくやるのがじいなコゴミである。
あくまで『グレーゾーン』で活動し、通報されてもけっして退会処分にならない悪党──それがじいなコゴミなのである。
ククククク……。
それでは最後いってみよう。
4、服部ナルぞう
「いや〜、今回も面白かったでござる。★5進呈!」
「ほんとほんと。拙者も感動したよ。★5あげる!」
「みなさんやっぱり面白いと思う箇所は同じなんですね。わたしも★5をつけたでござる」
服部ナルぞうは分身する。
どう見ても同一人物なやつらが分身して別々のアカウントを持っているのだ。
「レビューを送ったでござるよ」
「よし、拙者もレビューを書こう」
「わたし……レビューなんて書いたことないけど、初めて書いてみるでござろうかな」
これでポイントを荒稼ぎしているのである。
グレーゾーンなど明らかに通り越したブラックである。
そして彼の代表作のポイントは……
36ポイント。
ゆえに誰も通報せず、野放しにされている。
……100人は分身が必要であろう。
いかがだったであろうか?
ここ、小説投稿サイト『小説家になりお』には、たまーにこのようなおかしなやつらが出没する。
毎日現れはするが、その数はそれほど多いわけではない。
ちなみにかくいう私もそのおかしなやつのうちの一人だ。
あなたももしかしたら私がまだ知らないようなおかしなやつを見かけたことがあるかもしれない。(かくいう私以外で)
知っていたら教えていただけないだろうか?
ちなみにこんなふうにアンケートっぽく感想をねだる私も、おかしなやつであることはいうまでもない。