8.次に二人が向かったのは整備ドックだ-これがレイドライバーの体……-
全43話予定です
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次に二人が向かったのは整備ドックだ。そこでは見慣れた機体がコックピットを開けて出迎えていた。
「さてさて、お待ちかねの対面だ。一応、これも一人ずつやっていこう。まずはトリシャからね。クリスもよく見ておいて」
カズはそう言ってコックピットに座らせる。
「そうしたら、ここにあるケーブルを自分の首のプラグに刺すんだ。いつものお腹のプラグもね」
と言われたのであらかじめ邪魔にならないようにポニーテールに縛ってある髪を少しずらしてプラグを刺す。
「あれ、痛くない」
とトリシャが言うと、
「そりゃあ刺しただけで痛みが走ってたら乗りずらくなるでしょ? 接続が完了して、信号が入るまでは何も感じないはずだよ」
そう説明する。
「で、刺したけど次はどうするの?」
「じゃあ、起動してみよう。当たり前だけどサブプロセッサーは作戦行動時には起きてるからね。もちろん今も寝てはいないよ。こっちが喋ってる声は聞こえているはずだ、だよね?」
とカズが質すと、
「ああ、起きてるよマスター。初めまして、かな、ゼロツーだ。よろしく」
ぶっきらぼうな声がする。この機体のサブプロセッサーの娘だ。
「そうだ、ひとつ言っておかないといけないね。彼女の[名前]がゼロツーなんだ。もちろん昔の名前もあるんだけど、今はゼロツーと言ったら彼女の事だと思って。サブプロセッサーは基本パイロット同士の通信には関わらない。サブプロセッサーを呼び出すときは専用の回線を使う事になるから、オレやレイリア、クリス、それにアイシャたちが通常回線でゼロツーと呼んだらトリシャ、きみが応答するんだ。で、コックピットの中での会話は彼女がゼロツー、ちょっとややこしいけど、いいね?」
「分かったわ。私はトリシャ、よろしく」
そう返事をする。
「では起動してみよう。ゼロツー頼んだよ」
「了解、マスター」
と言ったあと、
「パイロットの神経系を切断、レイドライバーの神経回路に接続……完了、サブプロセッサーとのリンク……完了。起動しました」
とゼロツーの声で読み上げられる。
「これは……すごい。これがレイドライバーの体……」
トリシャの体は今はレイドライバー本体なのだ。視覚や聴覚はコックピットの中にあるモニターやスピーカーで感じるが、触感や熱感といったものはレイドライバーからのフィードバックを自分の体と認識して感じている。だから、
「風が吹いてるのが分かるわ」
この整備ドックに流れる風を感じる、という感想が出てくるのである。
「体が大きくなった感じがするでしょ? それには慣れてね。で、次は二人で話をしてみようか」
「そう言われても」
トリシャが直ぐに反応するが、
「私は別にどちらでもいいんだけどな」
と返って来る。
「それじゃあダメだ。これからパートナー関係を結ぶんだ、お互いに話をしないと。じゃあ、トリシャ、好きなものは?」
「紅茶、かな」
「ゼロツーは?」
「梨だな。まぁ、もう食べられないけど」
「じゃあ食べさせてあげるよ」
カズの意外な言葉が出てくる。
「え?」
二人同時に驚く、いやクリスもいるから三人同時か。
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