5.最初はどちらがいい?-じゃあ、行ってくるわ-
全43話予定です
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「最初はどちらがいい?」
カズはそう尋ねる。すると、
「どうせやるんだったら私が先にやるわよ、いいクリス?」
トリシャが名乗りを上げる。
「え、えぇ構いませんが、首のケガは大丈夫なのですか?」
クリスは彼女なりにトリシャのケガが心配のようだ。
「もちろん待ってもらえるものなら完治するまで待ってほしいわよ。でももう動けるし、早く慣れて基地に戻らないとね」
事実、その通りなのだから。占領したアルカテイル基地にいるレイドライバーの数では圧倒的に足りない。一刻も早く補充をしないといけないのだ。
「じゃあ、トリシャから。そのまま部屋に入っていって。あとは中の人間がやってくれるからその指示に従って」
「じゃあ、行ってくるわ」
そう言い残して目の前の自動ドアに進んでいき中へと消えて行った。
「さて、待っている間、きみにはこのあとの事を説明しておかないとね。二人とも手術が終わったら麻酔が切れるのを待ってから、まずは試験をしてもらう。そこで運動能力に変化がないか、ちゃんと体との接続はなされているかをテストする。まぁ、テストというほどのもんじゃあない。ちょっと動いて喋ってOKならそれでいいんだ」
そう言うと首を指して、
「次に、その部屋にあるパネルにプラグを接続して四肢の情報を出力できているか、四肢からの情報は正常に受け取ることが出来るかを確認する。そこで問題が無ければ、いよいよレイドライバーの格納庫に行ってのテストだ。サブプロセッサーとのご挨拶のあと、実際にコックピットに入って実機でのテストが待ってる。ざっとそんな感じなんだけど、何か質問は?」
一通りカズが説明し、クリスの質問を待つと、
「サブプロセッサーというのはどんな方なのですか?」
と返って来た。
「そうだね、機能的な問題は……聞いてないよね。性能はしっかりしたものだよ。だからと言って今までのサブプロセッサーが性能が悪いって訳じゃあない。この分野も日々進化しているんだ、今まで出来なかったものが徐々に出来るようになったり、今までこれだけ時間がかかっていた処理がこんだけで済むようになったり」
カズは身振り手振りを使って説明する。クリスはそれを[真っすぐ]聞いていた。それは心底カズに心酔している、まさにその目だ。
「で、問題になりそうなのはマッチング、つまり相性だよね。それには配慮してあるよ。クリスの機体には大人しい、礼儀正しい娘が乗る予定になってる。トリシャの方は、どっちかというとアイシャに似てるかなぁ、でもあそこまで我が道はいってないけどね。彼女たちは君たち第一世代の機体の改修も視野に入れた、仮にもし改修が必要なかったなら、それは次世代に向けられたサブプロセッサーなんだ」
カズは少しだけ遠い目をする。それは今まで手にかけてきた命を思っての事だ。だが、直ぐにいつものカズに戻り、
「これはトリシャやクリスの性格も考えての判断だ。まぁ、実際は会ってみてからかな。他には何かある?」
とカズが質問すると、
「原理は分かりましたが、本当に自分の体のように動かせるのでしょうか? 何度かコアユニットなしで直接操縦はしましたが、その、何と言いますか」
言いにくそうにしている。その言葉を、
「フィードバックが十分でなかったからね、さぞかし違和感を感じただろう。でもその分野でも進化は続いているんだ。テストも重ねたし、今回搭載される娘たちに動かしてもらったよ。そのデータも元に調整しなおしてある」
とカズがつなぐ。
「サブプロセッサーが操縦を?」
「そう、万一パイロットに何かあってもサブプロセッサーが生きていれば帰還が可能になる。これはとても大きなことなんだ。第四世代ではサブプロセッサーだけでパイロットもこなすという実験もしてる。でもまぁ、多分第二世代のシステムか、第三世代のシステムで行くんじゃあないかな。他には?」
と問うが、
「いえ、ひとしきり分かりました」
という言葉で締めくくられた。
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