4.同盟連合にとって最重要機密-前に話していた首の手術をするんだ-
全43話予定です
今作から少しペースを落とさせてください、曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です
(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
次の日、トリシャとクリスはカズに付き添われながら研究所に来ていた。もちろん、目隠しをして、取らないように手錠を後ろ手にかけて身動きを封じ、車を二回乗り換えてである。いくらパイロットとはいえ、研究所の所在は決して漏らしてはならない、同盟連合にとって最重要機密である。
その恰好のまま車から降り、カズと、一緒に来た女性職員に連れられて施設に入る。トリシャとクリスたちが連れ行かれる場所、それは手術室である。
「もういいよ」
そう言ってカズは手錠を外し、目隠しを取った。
「ここが貴方が通っているっている施設なの?」
トリシャだ。
まだ完治、とまではいかないものの、このままアルカテイル基地をレイリアとアイシャたちだけに任せておける訳ではない。
――――――――
[これから、前に話していた首の手術をするんだ。クリスもそうだが特にトリシャ、きみは傷が深い。二人ともそれでも手術をしても大丈夫かい?]
ここに来る前、カズは二人にそう言って尋ねた。
[私はご主人様の言うとおりにいたします]
クリスは即答である。ではトリシャは?
[貴方の言う事は何でも聞くって言ったでしょ? もちろん大丈夫よ、ご主人様]
こちらも問題ないようであった。
――――――――
そうして連れてこられた施設。しかも目隠しをして手錠までかけられて。
「まぁ、私たちが万一敵の手に渡ったらって考えると納得の待遇なんだけど」
トリシャはそう続けた。
「そう、ここが我々の研究所、しかも最先端だ。そしてオレはここの所長をしている。あ、そうだクリス、クリスチャンさんを警戒していたね? 大丈夫、今日はオレが全部面倒を見るって言ってあるから会う心配はないよ」
少しでも不安材料を無くそうというカズの配慮である。
「あ、ありがとうございます」
それ以上の言葉は出てこないし、それ以上の言葉はかえって逆効果だという事をクリスは分かっているのだ。それほどに、クリスチャンが基地に来た事件は、彼女の心に大きなトラウマを与えた。
それほどに、クリスは男性、特に怒っている男性がとても苦手なのだ。ただし、カズは別であろう。すべてを捧げた彼になら仮に殴られても嬉しそうな、恍惚とした表情を浮かべるだろう。現にあの時[精神的、肉体的、性的、暴力的、どんな事でも受け入れます]と言ったのだから。
「二人には車の中でさっき話した通り、これから首元に機械を埋め込む手術をしてもらう。これは前にも話したけど、自分の体とレイドライバーの体の切り替え操作をする機械だ。これを取り付けて接続をレイドライバーにした時、実機をまるで自分の体のように扱えるようになるはずだよ」
カズはそこまで言うと、実物を見せながら、
「これが埋め込まれる機械だ。言われなければ髪の毛で隠してしまえばまず分からないものだよ。だけど、このプラグにすべてが集約されているんだ」
なるほど、神経系を分岐するから機械自体はかなり奥まで入るように作られているが、表面に出ている部分はほとんどない。蓋つきのコネクターがあるだけだ。
「蓋が付いてるからお風呂もシャワーも大丈夫だよ。で、これを取り付けてレイドライバーの操縦をしてもらう。操縦中はコックピットの体は全く動かないから安心して。逆に言うと、レイドライバーに接続した状態で万一サブプロセッサーが停止した場合は、痛みや熱などの過剰なフィードバックをモロに受けるから気を付けて」
サブプロセッサーは、レイドライバーからの触覚や痛覚と言ったものを、パイロットが操縦する通常時は[情報として]扱う。その為、サブプロセッサーが触覚や痛みを直接感じる訳ではない。もちろん、そういう設定もやろうと思えば可能ではあるが、それでは前述のとおり過大な信号が来た時に二人とも共倒れになる。
なので、サブプロセッサーは常に信号を監視して過大なものは瞬時に緩和する、アブソービングを行っているのだ。
全43話予定です