35.[こちら側]の人間になってもらう-それはレイリア次第、かな-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「研究所、というと[こちら側]の人間になってもらうという事でしょうか?」
というクリスの疑問にカズは、
「それはレイリア次第、かな。とりあえず連れて行く道中にでも少しずつ話すつもりだ。で、拒否反応が見られたら義手だけ付けて終わりってところ」
と言ってから、
「こんな事を言うのはアレだけど、この隊の人間すべてをコントロール下に置ければ一番いいし、レイリアさえその気なら目標は達せられる。秘密もほとんどなくなるし。だけど、オレとしては」
「レイリアさんは巻き込みたくない、ですよね」
トーンの低くなった声のクリスが受ける。
「い、いえ、別にレイリアさんに何か、という訳ではありません。前にも言いましたが、私は貴方様の傍で貴方様に使って頂けれはそれで満足です。なのですが、心の中に[貴方様を取られる]という気持ちが無い訳ではないんです。ですから、トリシャさんの時もあんなに動揺してしまって」
――そうだよな、そういうようになるように仕向けたのは、ある意味で、オレだ。
「自分でもどうしようもなく複雑で困っているのです。この気持ちは、一体どうしたらいいですか?」
クリスの声が少し上ずっている。
ガスは、司令との秘匿回線を一時ミュートして、
「きみは、もうオレの所有物だ。考えなくていい、感じるんだ。オレはきみを見捨てたりはしない。レイリアに[ソレ]をするかはまだ分からない。だが、もう一度言おう」
向こうに行く信号のボリュームを上げて、
「きみはオレの所有物だ。オレの事だけ考えていればいい」
と囁く。そのあとすぐに[んっ]という声が漏れたあと、
「分かりました、ご、ご主人様」
その声はやはり上ずっている。
カズはミュートを解除して、
「という訳なんです。ご理解頂けましたか?」
と司令との話に話題を切り替える。
「その辺りの処遇はきみに一任するよ。まぁ、そんな事を言うなら、きみが声をかければ私の首も飛ばせる、きみはそれだけの権限があるのだからな」
カズは基地司令直轄である。
事実上の上官は司令のみ、そして階級に関わらず発言権があるのだ。なので、例え相手が階級が上だったとしても命令に背くことも出来るし、何ならこちらから司令を通じて命令する事だって出来る。
更には、カズが所長を務めている研究所、というのは政府直轄である。それだけ政府中枢の人間ともパイプがあるし、その人たちと対等に話をする事が出来る立場にいるのも事実だ。という事は、先ほどの司令の話ではないが[気に入らない、必要ない]とカズが思えば簡単に首を挿げ替える事だって可能なのである。それが基地司令、というとても立場が上の人間であってもだ。
だが、
「司令、私は貴方をとても信頼しています。それは上官としてだけでなく、人間としてでもあります。私が意識不明の時の話は聞きました。クリスやアイシャ、ミーシャたちを守ってくださって本当にありがとうございます。それだけでなく、日頃からのご厚意、身に余るくらいですよ」
カズはあまりお世辞を言うタイプではない。
今でこそ、その歳のせいか発言や行動が丸くなったが、昔は[思ったら即行動派]というくらいだったのだ。なので、目上の人間から好かれる事も少なかった。そんな彼が今の地位にあるのは、もちろん己の努力も並々ならずあるのだろうが、周りの人間に恵まれた、というのも大きいだろう。
そしてその中にはゼロゼロになった襟坂の存在も。
「では、パイロットはこちらで預かって、きみはレイリア君と一緒に例の施設に?」
司令が話題を戻す。
「ええ、その通りです。そこでお願いがあります」
全43話予定です




