34.ゼロセロ?-コントロール、お願い出来る?-
全43話予定です
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戦闘はカズの提案で終息を迎えた。被害の無いものは被害が出たものを助けながら、戦闘機はカズの提案のあとは一発も打たずに帰っていったし、こちらも帰還した。
すべてはカズの思惑通り、というところか。
――まずは時間を有効に使わないと。
「ゼロセロ?」
「何、カズ君?」
いつもそうだがゼロゼロは即応性が高い。それだけコックピットの中にも気を回しているという事か。
――襟坂さんは昔から気配り屋だったけど、疲れないのだろうか。
と、少し疑問に持ちながらもその事にはあえて触れずに、
「コントロール、お願い出来る?」
「えっ、いいの?」
その声は少し嬉しそうである。先のゼロツーの声もそうだが、意思のあるサブプロセッサーにとってレイドライバーとのリンクは、それも外でのリンクは何にもまして嬉しいものなのである。
それはそうだろう。
確かに基地内のドックにいる時は、何かあってもいいようにサブプロセッサーがレイドライバーの操縦系を握っている。つまり[自分の躰]として使っているのだ。だが身動き一つできない。それは整備クルーの手前、というのもあるがハンガーに固定されていて、そもそも動くことが出来ないのだ。なのでこういう[散歩]というのが何より嬉しいのである。
ただ単に歩くだけでも自由に躰を動かせる、それは[ヒト]であった時には気にも留めていなかったが、被検体にされて脳だけにされ、四肢とはとっくにおさらばした今[考えるモノ]になった今はそれだけでも嬉しいのだ。
それはゼロゼロとはいえ例外ではない。風を、自分の肌で感じられるのだ。そして、ゼロゼロが研究所で改修を受けた際、体表センサーも一新した。なので文字通りの[風]を感じられるのだ。
「司令?」
秘匿回線でつなぐと[ちょっと待ってくれ]という声のあと、もぞもぞっというノイズが聞こえ、
「今、個室に入った。それで?」
と返って来る。
「司令、このパイロットの処遇ですが」
カズはそれが聞きたかった。
「レイドライバーのパイロットか、とても重要な成果だ。その性質上、きみに委ねた方がいいだろう。なぁ、所長殿?」
「そうして頂けると助かります。色々と調べないといけないので。次にクリス?」
司令とは繋げたまま同じく秘匿回線で繋げる。
「はい、何でしょうか」
クリスが応える。
「このパイロットの扱いはきみに任せるよ。オレが帰ってくるまで身の回りの世話をしてくれないかな?」
クリスにとっては恐らく意外な言葉が出てくる。
現に、
「えっ?」
と言ったまま二の句が継げない。
「この捕虜はパイロットだ、どこに何が隠されているとも限らない。レントゲン、共振スキャナー、あらゆるものを駆使して異物は排除するんだ。その為の機材は占領時に持ってきてるはずだから。で、何もなくなったところで念の為にひん剥いて拘束する、と」
――まぁ、そこまですればひん剥かなくてもいいけど、女性はね、男性と比べて恥じらう人が多いから余計な事をされなくて済む。
なんてカズが考えていると、
「それだけなら他の隊員でも……」
と返って来る。
「不満かい?」
カズが問うと、
「いえ、大尉に意見するつもりは全くありません。すべて命令に従います。ですが」
理由が知りたいのだろう。
「じゃあ聞くけど、もし逆にきみが彼女の立場だったらどう? そういう意味でも[痛み]を知ってる人間がこの任に当たるのが一番だと思うけどな。それに同性であっても片や裸、片や軍服では恥じらいというものが生まれるだろ? 何かされては困るんだ、少なくともオレが帰ってくるまでは」
そこまで言ったあと、
「そして、オレはレイリアを連れて研究所に行かないといけない。何しろ腕が両方ともなくなっちゃったからね、パイロットとして、人として、更に言えば軍人としてこれからも生きていくなら義手を付けてあげないとね」
と説く。
全43話予定です




