33.カズ……あたし、あたし……-帰ったら慰めてあげて-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
彼女たちが完全に去るまでそれぞれのレイドライバー、戦闘機は警戒を解かなかった。攻撃範囲外に出たのを確認してから、
「よく耐えたね、お疲れ様。片手には[お土産]があるから、もう片手で持つよ」
カズの機体だけが使える、相手が出なくても強制的に通信状態を確立できる通信でレイリアに語り掛ける。
「カズ……あたし、あたし……」
レイリアは泣いている。それは痛みから来るものもあるのだろうが、僚機に、それもカズに声をかけてもらったのが嬉しいのだろう。
「ゼロツー」
いつも使う回線で呼びかけると、
「何?」
トリシャだ。
「お疲れ様、ゼロワンの左肩を担いで。撤収するよ」
「了解。こっちの通信は……そうよね、腕がないから繋がらないか」
先ほどの通信はカズの機体だから出来たのだ。
「まぁ、オレの機体を介して繋げることは出来るんだけど……帰ったら慰めてあげて、って多分[あの施設]行きになると思うけど、少しくらいの時間はあるはずだから」
「そうね、そうするわ」
――よしよし、これでカタは付いた、んだけども。レイリアかぁ、何て言おうか。[こちら側]に入れてしまうのが一番いいんだろうけど、そう上手くいくかどうか……。
カズはまだ迷いがあるようだ。
「ゼロスリー、そっちは?」
無線で呼びかけると、
「爆破と撤退を確認しました。それで、その……」
クリスの言葉が詰まる。カズは直ぐに秘匿回線に切り替えて、
「何かトラブルでも?」
と尋ねる。
「それが」
クリスは、先の戦闘でアイシャがダウンしてミーシャがコントロールを握っている事を伝えると、
――もしかして、ネイシャがやったのか?
カズはレイドライバーシリーズのすべての開発に関わっている。その過程で何があったか、どうしてそうなったかを知っている、知りうる人間だ。
そのカズを推してネイシャがやったと判断できる理由。
「ゼロスリーはそのまま帰って来て。ワンワンの事はオレが何とかするから」
そう言って[了解しました]の返事を待ってから今度はワンワンへ秘匿回線をつなぐ。
すると直ぐにミーシャが、
「どうされましたか、マスター?」
と尋ねてくる。それに対して、
「ネイシャ、ちょっと無線に出なさい」
カズの口調が変わる。
「な、なんでしょうか、ご主人様」
少し動揺した様子の声でネイシャが無線に出る。
「アイシャに[ムチ]使ったでしょう? それもダウンするまで。そんな許可は出してないけど、ん?」
――これはもう一度躾ける必要があるな。
そう思っているカズの口角は上がっていた。その口調で察したのか、
「あぁ、マスター。私に罰を、どうか罰を与えてくださいませ。私は悪い事をしました、どうぞ存分に叱ってくださいませ」
合成音声という事を差し引いてもその声は歓喜に包まれていた。
ネイシャ、つまりアイシャとミーシャの母親もまた、こんな環境下で過ごしてきたのだ。とっくに[壊れて]いるのかもしれない。
「ネイシャ、きみには良いというまで自閉モードにする事をを命じる。ミーシャ、自力で返って来て」
とミーシャに言うと、
「了解です、マスター」
直ぐに二人からそう返って来る。
「ちなみにアイシャはどうしてる?」
「リンク状態にありません、その……ネイシャさんが権限を取り上げてしまって」
――アフターケアもしないと。色々とやる事増えたなぁ、まあそんな立場だからしょうがないんだけど、さ。
「みんな、いい? 戦闘は終息した。各々がとりあえず帰還して。詳しい話はあとで話そう、今は格納庫を目指して」
「了解」
そろった声が響く。
全43話予定です




