31.で、どうするって?-一名はそちらに捕虜として差し出す-
全43話予定です
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またしばらく沈黙が訪れる。
誰も言葉を発しようとしないのは、誰も責任が取れない、いや、取りたくないからなのかもしれない。
どれくらいの時間が流れだろう。戦闘が一時中断してお互いがおっかなびっくりで負傷者の救護に当たっていた頃、
「本国と協議した結果が出た」
とオープンチャネルで返答が返って来る。
「で、どうするって?」
「貴殿の申し出を受けるように言われた。こちらはパイロット一名を救出、もう一名はそちらに捕虜として差し出す。機体は爆破処理するものとし、上空での戦闘はこれをもって終結とする。以上が本国、参謀閣下からの指令だ」
その声は安どしているのか、それとも愕然としているのか。声だけでは区別がつかないが、確かに落ち込んだような声をしている。
――もしかしたら、失敗を憂いているのかも。まぁ、一勝一敗だったからねぇ、今度はこっちがもらわないと三体とオレの機体に損失を出した割に合わないよ。
「分かった、じゃあ停戦だ。とりあえず上のもの引っ込ませてくれない? こちらも引っ込ませるから。いいですよね、司令?」
そう司令に問いかけるが、
「きみならやってくれると思っていたよ。了解だ、航空部隊に伝達、直ちに帰投せよ。ただし直掩は残す。それでいいかな?」
こちらもオープンチャネルを使って通信しているので、相手には今の会話を聞こえているはず。
現に、
「司令殿、受け入れ、ありがとうございます。交戦は厳禁と徹底してあります」
と言ったあと、
「では……えーっと名前を聞いてなかったような、教えてはくれないか?」
クラウディアがそう言うと、
「え、前に会った時に名乗ったよ、忘れちゃった? そう言えば前もこんなシチュエーションがあったよね? 今度は立場が逆だけど。名前は……教えてもいいんだけど、階級の[大尉]とでも呼んでくれればいいよ。もちろん普通に話してくれていいんだけど、オープンチャネルである事を忘れずに。いい、クラウディア大尉?」
誰が聞いているか分からないこの無線で、わざとカズは相手を名称で呼ぶ。
階級は各国共通だ、例え敵であっても階級が上なら敬語を使うのが国際慣例になっている。逆に言えば階級が同じなら対等の会話が出来るのである。
「わ、分かった。では大尉、どちらのパイロットを差し出せばいい?」
「それは貴方に任せるよ。ベテランが欲しければそちらを持ち帰ればいいし、何ならジャンケンで決めてもらっても……いや何でもない。そちらのやり方で決めてくれていい」
――しまった、これは失言か。でもジャンケンってどの地方でもあるだろうし、って[ジャンケン]とは発音しないよなぁ、スルーしてくれないかなぁ。
ジャンケン、と思わずそう発言してしまった事をカズは少し後悔した。日本語の癖がこんなところで出るとは。
そんな、こっちの状況を知ってか知らずか、
「決め方は任された、という判断でいいのだな?」
と返って来る。
その返事に[それでいい]と返すと、
「では四つ足がいた方のパイロットを回収したいのだが」
その答えは、そちらが有利と判断したのか、それとも単に思い付きなのか。だが、直ぐに返答が返って来たという事は、あらかじめ通信でもしていたのかも知れない。
「了解、じゃあこちらは目の前のパイロットをもらうね」
と言ったあと、手早く回線を切って、
「ゼロゼロ、簡易ECM(電子対抗手段)搭載してたよね、今から捕虜のパイロットを前に立たせるからECMをかけて」
と伝えると、
「了解っ」
短く返答が来る。
「じゃあ出てきてくれるかな? あ、そうだ。パイロットスーツになにか仕掛け、なんてしてない?」
カズはそうカマをかけると、
「そ、それは……」
言葉に詰まる。
――やっぱりか。
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