3.いずれコアユニットが使用期限を迎える-そこまで研究は進んでいるのだ-
全43話予定です
今作から少しペースを落とさせてください、曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です
(例外あり)
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これはカズの指示によるものだ。元々カズは、いずれコアユニットが使用期限を迎える事を予想していた。なので、孤児院では[調律]を徹底させていた。もちろんパイロットにするにしても、サブプロセッサーにするにしてもじゃじゃ馬では困る。
かといって命令しないと動けないようでも困る。それはレイリアたちがいた頃から変わってはいないが、今では[調律]はよりしっかりと行われるようになっている。
もちろん、逆らえばどうなるか、それは言うまでもないだろう。しつけを拒めばムチが、身体検査を拒めばオブジェ化がそれぞれ待っている。さらには上の人間から言われた事は守る、という基本的な事はさらに徹底されていた。体罰が課せられるようになったのだ。
子供の頃から言う事を聞くものだけを選別して育てる。だが、イエスマンが欲しい訳ではない。この辺りは大分孤児院の職員とも協議を重ねて、今では自主性は尊重しつつも反抗は許さない、という方針になった。
なので、
「もういい?」
などというゼロツーのサブプロセッサーの発言が出るのだ。
「いいわけないだろう。まだテストが終わっていないんだ、それとも……」
と整備士が脅すと、
「すみません、それだけは勘弁してください」
すぐにしおらしくなる。
整備員の言ってる[それとも]の先、それは疑似感覚である。サブプロセッサーは脳だけしかない。四肢に相当するものは既にないのだ。だが元々は人間である以上、四肢の感覚を受ける神経は残っている。普段はカットしているが、パイロットの指示などで一時的にレイドライバーのセンサーの信号がサブプロセッサーに渡されると、それは自分の体のように感じることが出来る。
逆に言えばその信号の出力方法さえ分かっていれば、どんな感覚を味あわせる事だって出来る。くすぐったり、ムチのような苦痛だったり、快楽だったり。
早い段階である程度の信号は出せるようになってはいたが、現在、それらは研究が進んで、ほぼ目的の信号が出せるようになった。極端な事を言えば、信号だけで相手を失神させる事も[その気]にさせる事さえも出来るのだ。
「どうですか?」
研究所の先ほどの部屋からクリスチャンが整備員たちに尋ねる。
「はい、接続テストはほぼ終了、生命維持ユニットも正常です。これなら[単体]でも動かせます」
もう、そこまで研究は進んでいるのだ。日進月歩とはよく言ったものである。一週間前までは理論段階だったものが、その一週間後には実地試験に回され、さらに一週間たてば一応の成果を出すのだから。レイリアたち第一世代をロールアウトした時とは比べ物にならないくらい進化している。その為の実験であるし、その為の犠牲なのだから。
それはワンツーを作る際に出来た成果も一つ挙げられる。
サブプロセッサーとパイロットとのマッチングの幅の広さである。
カズがゼロゼロと、チトセトとマッチングした時は、本当にシビアな相性問題があった。たまたまゼロゼロとカズそれにチトセはマッチングテストが成功したが、当時の成功率は二十から三十パーセントくらいであった。
このテストにはその後改良が加えられ、ネックとなっていた遺伝子部分のマッチングに際しての除去が行われた。その為、今ではマッチングの成功率は実に八十パーセントを超えるようになったのである。
だから今回の改修が可能になった、とも言えるのだ。
「では明日まで彼女たちには眠ってもらいましょう」
そう言うと、薬剤が投与された。自主性は尊重するが、何も[自由が与えられている]訳ではない。意思決定はあくまでこちら側にあるのだ。
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