28.大丈夫ですか?-え、えぇ、大丈夫です-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
ゼロスリーが来た時にはワンワンは結構被弾していた。動けなくなるほど、という訳ではないが動きも鈍っているのが目に見てわかる。
「大丈夫ですか?」
クリスのその問いに、
「え、えぇ、大丈夫です」
答えたのはミーシャだ。
――あれ、コントロールを主にしているのは、確かアイシャさんでは?
そんな疑問が相手に伝わったのか、
「アイシャは今ダウンしてまして。代わりに私がコントロールしているのです」
ミーシャが答える。
「そんなにダメージが?」
の問いに、
「い、いえちょっとありまして」
どうも歯切れが悪い。
だが、今は戦闘中だ、そんなに構ってはいられない。
「ゼロスリー?」
クリスが呼ぶと、
「何でしょう?」
直ぐに返事が返って来る。
「向こうのサブプロセッサーとリンクして、一体をとりあえず集中して狙いましょう」
と言うと、
「ちょっと待ってください……今、繋がりました。了解です、こちらの管制下に置きます。いいですねワンワン」
「はい、分かりました。指示に従います」
とてもしおらしい声が響く。
――サブプロセッサーのリンクは一瞬で接続するはずなのに、接続に時間がかかってる。それにアイシャさんがダウンってワンワンの中で何かあったのかしら?
クリスはそんな事を考えながら[いかんいかん]とそれ以上の思考を止めた。
――ここは戦場、そして私はこの場面では指示する側なんだから、私がちゃんとしていないと。
そして二体になったゼロスリーとワンワンは、敵レイドライバーの一番突出している一体に向けて攻撃を絞った。それは直ぐに効果を現したようで、片方の脚部を破損させることが出来たのだ。
するとどうだろう、残りの敵部隊は機械化部隊も合わせて後退を始めたのだ。
と同時に、
「ゼロスリー、聞こえる?」
カズだ。
「はい、ご……大尉、どうされましたか?」
――気を許すと間違えてしまいそうなのです。
どうもカズの事を呼ぶときに時々間違えそうになる。それだけクリスの中ではカズの存在は絶対であり[ご主人様]なのだ。
「敵が撤退を始めたんだけど、そちらは?」
の問いに、
「こちらは一体、敵レイドライバーを行動不能にしました。その直後に敵部隊が後退を始めましたが、そちらは?」
と応える。そしてそのクリスの質問にカズは、
「こちらも一体仕留めたよ。で、その辺りから後退を始めてる。仕留めたやつは引き続き攻撃してるけど、おそらくは」
それ以上は言われなくとも分かる。
――恐らく自爆か、と。
「これ以上の深追いはマズい、ですね」
敵はもうすでに二体、撤退できない機体が出ている。そしてその機体とは敵部隊と自分たちとの射線上にいる。
仮にこちらが敵を追いかければどうなるか。
敵は恐らく自分の機体に一番近づいた時に自爆するだろう。そうすればこちらにも被害が出る。自爆は内部を爆破するという目的の副産物で周りのものを破壊するという効力も持つ。もちろん火薬を調節すれば自分だけ破壊することも出来るだろうが、敵地に派遣された部隊だ、自爆するとなれば周りを巻き込んで、というのは当然考えられる。
「目の前の行動不能になっている敵はいかがしますか?」
クリスがカズに尋ねる。
「一応、条約があるからね。投降でも呼びかけてみようか。司令、私にちょっと考えがあります、いいですか?」
基地とも当然無線が繋がっているので、
「あまり無茶はせんでくれよ」
という、基地司令の言葉が返って来るのだ。
全43話予定です




