27.オレが何とかしないといけないんだ-他人のあんたに何でこんな事を……-
全43話予定です
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「オレが何とかしないといけないんだ、邪魔しないで!」
そう言うアイシャに容赦なく痛覚信号が送られる。それも何度も。
「痛い痛い!!」
「ほら、敵は目の前にいる。ちゃんとしなさい。冷静にね」
そう言いながら痛覚信号を送り続ける。
元々アイシャ、ミーシャ共に痛覚には耐性がある。それは研究所で[付けられた]とも言えるだろう。シミュレーターでのテストでも痛覚のアブソービングを減らして戦った事も何度もある。
だが、痛覚と言っても色々ある。それは耐えられるものと、耐えられないものと様々であるが、その中で[ムチ]になる信号を与える許可をネイシャは与えられているのだ。
――何でオレが。
「冷静にしなさいと言ったでしょう? アイシャ、あまり言う事を聞かないとミーシャと代わってもらうわよ」
代わる、それは上半身と下半身の逆転を意味している。レイドライバーからの触覚に始まり痛覚、さらには様々な情報はサブプロセッサーが一度[情報]としてチェックしたあとにパイロットに受け渡されるようになっている。しかも、それはコンピューターの演算速度で処理される為、ほぼリアルタイムでパイロットに伝わる。だから一撃で失神するほどの痛覚もあらかじめアブソービングされて伝わるから行動不能にはならないのだ。
だが、逆に言うとサブプロセッサーの意思で情報操作する事も可能なのだ。
研究所で散々痛めつけられ、様々な実験の、まさに[おもちゃ]にされたネイシャはある意味壊れてしまっているのかもしれない。
現に、
「今は敵が目の前にいるのに、そんなこと言ってられないじゃん」
というアイシャの言葉に、激痛の信号を流したあと、
「ミーシャ、全身のコントロールを渡します。後ろ足は自動で追尾するようにするわ、分かった?」
とミーシャに問いかける。
その問いに対して、
「分かりました、でもアイシャの事はあまりいじめないでね。私はあの娘がいないと……」
まで言ったところで、
「大丈夫、ちょっと[お話し]するだけだから。お願いね」
「了解」
――えっ、体が動かない?
それはそうだ、アイシャの躰は今はレイドライバーに接続されている。その接続をしたままサブプロセッサーであるネイシャがコントロールを取り上げたのだから。
「コントロールを返してよ」
そう叫ぶが、
――痛い痛い痛い!!
全身を槍で刺されたような激痛が走る。
「ちょっと貴方にはお仕置きしないとね」
ネイシャはとても穏やかだ。
だが、
「あんたはオレの親でも何でもない、他人のあんたに何でこんな事を……」
それ以上は言葉にならなかった。
言葉が発せられないほどの痛み。それを失神するまで続けられたのだ。それはアイシャが失神して意識が飛んでも続けられた。
この世代のサブプロセッサーは、失神したパイロットを蘇生させる信号も出す事が出来るのだ。それは自我がある、というのもあるし、基地への帰還という目的があるから。それを今、ネイシャはアイシャへの[お話し]の為に使っているのだ。失神するまで激痛を味あわせては蘇生する。そして蘇生して第一声を発する前にまた激痛を与えて失神させる。その行為は十数回は繰り返されただろう。
「どう、アイシャ? 言う事を聞きますか?」
やはりネイシャの声はとても優しい。
「ゴ、ゴメンナサイ。モウ、シマセンカラ、ユルシテ、クダサイ」
――モウ、チャント、イウコトヲキキマス、キキマスカラ……。
どうやら本当に心が折れたようだ。
「次からはちゃんとしなさい、いいわね?」
「ハイ、ゴメンナサイ……」
「ミーシャ、待たせたわね。管制に入ります」
いつもの口調に戻る。そんなネイシャに、
「アイシャはどうなったの?」
とミーシャが聞いてくる。それに対して、
「ちょっと[おりこうさん]になってもらったのよ。さっ、目の前の敵に集中しましょう」
全43話予定です




