18.あっ、アイシャだ-あっ、じゃねーよ、あっ、じゃあ-
全43話予定です
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時間は少し遡る。
カズたちが改修作業に取り掛かろうと研究所に移動している頃、アルカテイル基地には駐屯部隊が続々と入って来ていた。それはミラール市からだったりエルミダス基地からだったりと様々であるが、この地を占領したのは事実である。
レイリアのレイドライバーも、彼女と一緒に到着していた。もちろんヤマニもである。
「本当にヤマニさんも来たんだね」
レイリアの素朴な疑問に、
「オレが来ないでどうする? 誰がレイドライバーの整備をするんや」
と返って来る。
――そりゃそうか。
その他に、エルミダス基地の司令が前線指揮官になっていた。後方になったエルミダス基地は副司令がそのまま司令へと昇格していた。
「やっと来たな」
そう言ってレイリアたちを待っていたのはアイシャたちである。
「あっ、アイシャだ」
というレイリアの反応に、
「あっ、じゃねーよ、あっ、じゃあ。あのあと大変だったんだからな。哨戒任務も一体でこなさないといけないし、まぁ誰も来なかったから良かったけど」
先の戦闘のあと、ゼロゼロとゼロツー、ゼロスリーは研究所に、ゼロワンはエルミダス基地にそれぞれ行ってしまった。残ったレイドライバーはワンワンだけである。だが、ワンワンの正体は秘匿されなければならない。そこで、
「悪いんだけどホログラムを入れて、全方位哨戒しててくれない? よろしくねー」
と彼らのマスターであるカズから言われたのだ。
もちろん彼女たちが逆らえる訳もなく、ワンワンはトレーラーと一緒に来た先遣隊の軽車両を基地にいれてから本体が来るまでずっと[立ちっぱなし]をさせられていた。来る物体にそれぞれ識別信号を要求し、味方なら受け入れを、敵なら迎撃をそれぞれしないといけない。それを一体だけで約一週間行っていたのだ。
なので、やっと来たレイリアたちに悪態もつきたくなるというものである。
「そうなんだね、お疲れ様」
事情を聞いたレイリアが素直に反応する。ヤマニも、
「えろう頑張ったな、よしよし」
アイシャとミーシャの頭をぐしぐしする。
「いいよ、マスターの命令だもん。それよか、マスターから伝言」
「何?」
と聞く一行に、
「基本は基地の人たちが哨戒任務に就くみたい。オレらは即応できるように二十四時間待機だってさ」
と返してきた。その最後の言葉が気になったのか、ヤマニが、
「二十四時間待機とはまた厳重やな、やっぱり」
率直な疑問を呈すると、
「なんでもレイドライバーの戦力を削られた事が関係してるみたい。敵がいつ現れてもいいように、だってさ。だからあんたらが来てくれて助かったよ。やっとこれで休憩が取れる」
そう、アイシャたちは交代で仮眠と休憩を取りつつずっとレイドライバーの中にいたのだ。トリシャの場合とはまた違った緊張感があったに違いない。
「って事は二交代制で?」
レイリアが聞くと、
「そうしろってさ。さっき基地司令が来て言ってったよ。あと、着いたら出頭するようにってさ。多分、改めて同じ事言われるんじゃあないかな」
待つ任務も中々に大変である。
「ねぇ、カズたちは?」
「マスターたちなら一週間かそこら中には戻るって連絡が入ってたよ。だから、それまでは基地司令だけがオレらのマスターなんだ。まぁ、その基地司令には[レイリアたちとは仲良くしなさい]って釘刺されたけどな」
そう、彼女たちは[クスリ]を使って調整されている。マスターの命令は絶対だし、マスター以外の人の命令は受け付けないのである。
「うん、仲良くしよ。同じ部隊なんだし」
そう言ったレイリアの言葉にアイシャたちが反応する前に基地のサイレンが鳴った。
サイレンと共に軽車両が正面ゲートを出て行ってすぐに止まる。どうやらレイリアたちが来た直ぐあとに何かあったらしい。皆でそちらの方を見ていると、一人、人が近づいてきていたようだ。軽車両から隊員が出てその人物を囲む。その人物は抵抗する様子もなく、また囲んでいた隊員たちも直ぐに包囲を解いた。そして車に乗せてこちらに向かってくる。
レイリアたちの前を過ぎて行ったその車の中にいる人物に話題が集まる。
「占領したてのこの基地に訪問者?」
レイリアが疑問を口にすると、
「だが、直ぐに警戒を解いたとなると関係者かなんかやろな」
ヤマニだ。
「まぁ、じきに分かるだろ? レイドライバーの隊員には情報が降りやすいし」
というアイシャの締めでその話は終わった。
一方、軽車両が向かった先は基地の建物のすぐ目の前である。そこで再度身体検査をし、爆発物等の不審物がない事を確認してからその人物は即基地司令の元へ連れて行かれた。
全43話予定です




