17.本当に乗ってないんでしょうね-本当にゼロゼロだけで?-
全43話予定です
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「ちょっと、本当に乗ってないんでしょうね」
トリシャがゼロゼロに近づく。すると、
「乗ってないよ」
と自らハッチを開ける。そこには無人の空間があるだけだ。
「本当にゼロゼロだけで? コアユニットは?」
トリシャに限らずこれは当然の疑問だろう。
「さっきのはコアユニットにはお休みしてもらって、私が[躰]を借りたの。これは貴方たちに搭載されている、それぞれゼロツーとゼロスリーでも出来る事なの。じゃあ何故パイロットが必要なのか、分かる?」
ゼロゼロに逆に質問されたトリシャは、
「分担、作業?」
と少し自信なさげに答える。
――おっ、分かってるじゃん。
「そう、分担する為だよ。パイロットは操縦に専念して、その操縦の指針となる情報を処理するのがサブプロセッサー。だから二人必要なの。まぁ、これが出来るようになったのは最近かな。それまではどうしても制約が多くて」
どこまで話していいのか分からないので少しぼやかす。
それを、
「こちら側の人間になったから教えてもいいんだけどね。まぁ、人体実験だよ。それを主導しているのがこのオレ、という訳」
そう言うと人体実験の具体例を数個挙げて説明する。それは[生きたままの標本]だったり[子供]の事だったり。ワンワンの、それぞれの関係性も教えた。
「なるほどね、ここに来る前に何か体にされていたのは」
というトリシャの問いに、
「そう、きみたちとサブプロセッサーの[子供]を作る為なんだ。この作業も昔は色々と制約があってね。今の技術で幸いにも二人ともマッチングが良好と出たから出来た事なんだ。それぞれの性格もなじんでいるみたいだし」
とカズが返す。
「それだけの事をやっていておかしくはならないの?」
トリシャは素直な疑問を呈する。それはそうだ、こんなのどう考えたって尋常な精神で出来る事じゃあない。
「その辺りは考え方の違いかな。正直に言うとオレは人間関係についてはドライだと思う。特に知らない人間には。逆に言うと一定以上の信頼関係が構築できれば全力で守るよ」
カズの言葉だ。
「その中に私やクリスは入っているのかしら」
トリシャが質問すると、
「きみはこれを見てどう思った? 素直に言っていいよ」
と返って来た。
「正直引いたわ、と言ったらいい? 私はそうは思わない。そうね、こんなに人がいるところで言うのも恥ずかしいけど、私はあの時に貴方の事をご主人様にすると決めたの。それはどんな事があっても変わったりはしないわ。貴方が好きな時、好きなように使ってくれていいの。もちろん[子供]の事も悪いとは思わないわ。私の事を好きに使って。それが私の望みよ、ご主人様」
「じゃあ、クリスは?」
トリシャの答えのあと、ちょっと意地悪な質問が飛んでくる。
「わ、私は……その……」
カズはオペレータールームにいて、会話はスピーカーを通して行っている。つまりオープントークだ。そしてここには男性の職員もいる。それも一人二人ではない人が、女性を含めてこの会話を聞いているのだ。
――流石カズ君、サディスティックだねぇ。
どもっているクリスに、
「ちゃんと言いなさい。トリシャはそれが出来たよ」
カズは務めて優しく意地悪な事を言う。不特定多数の人の、男の前で宣言しろ、と言っているのだ。
「わ、私は、ごご主人様に身も心も捧げました。なので私はご主人様のものです」
余程勇気を振り絞って言ったのだろう事はコックピットを開けて確認しなくても分かる。
「じゃあ、どんな実験でも?」
「ご主人様が望むなら何でも致します」
「という訳なんだ、ゼロゼロ」
――大丈夫、千歳ちゃんには黙ってるから。
ゼロゼロの、コアユニットに行く聴覚は今カットされている。それはゼロゼロの気遣いなのだ。
「私はどんな事があってもカズ君をサポートする、それが私の使命なの。だがら二人、いえ、四人にはその手伝いをしてほしいんだけど」
「了解」
「了解です」
「分かりました」
「はい」
それそれの言葉で応じるが、皆意見は一緒のようだ。
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