16.ちょっと[躰]借りるね-反応出来なかった?-
全43話予定です
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「じゃあ、勝ったゼロスリーとゼロゼロでやってみようか」
カズは二人に指示を出す。
「よーし、ちょっと[躰]借りるね」
ゼロゼロはそう言うとレイドライバーのコントロール系を自分に接続した。とたんに自分の体のように感じる。実は彼女は何度かレイドライバーの操縦をした事がある。それは必要に迫られてだったり、実験の為だったり。
――うーん、やっぱり[躰]があるっていいねぇ。
久しぶりのその感覚に浸る暇もなく、
「用意はいい?」
のカズの声に、
「いつでも!」
と元気よく返す。
「はじめ」
の声と同時に二体とも動き出す。それぞれ手近な遮蔽物に身を隠しつつ行動する。ゼロゼロは動きながら次の行動を予測していた。それは生体コンピューターを埋め込んだである彼女だから出来る技である。あらかじめ指定した[タスク]を走らせながら自分は別の事を考える。更にはこのコンピューターの扱いに慣れてくると、タスクを並列して処理しながら別の事をする、といったことも出来る。
ゼロゼロは敵の予測進路を走らせ、こちらの最適進路を走らせ、自分はその結果を見つつも会敵した際にベストな狙撃姿勢を予想する。
それらを動きながらやるのである。これはゼロツーやゼロスリーのサブプロセッサーでも可能ではあるが、まだこの躰にされて間もない彼女たちだ、今は一本タスクを走らせるのがやっとなのだ。
それでも今までのレイドライバーとは動き、射撃精度共に別物である。ゼロワンでも今の彼女たちに勝てるがどうか。
ゼロゼロは遮蔽物を次々に移動しながら姿勢を低く保つ。
――二つ先の対角線上にいる。ならば。
今まで右側を中心に走って来たのを左側に切り替えて飛び出す。と同時にサブマシンガンを低い姿勢のまま構えて、
「そこっ」
ドンピシャリの場所にドンピシャリな格好で向こうを見ていたゼロスリーは完全にスキを突かれた格好になる。
すかさずゼロゼロのサブマシンガンが火を噴く。その弾道は弾をまき散らす[マシンガン]というよりは、一発ずつが精度の高い[ライフル]弾のような射線を描いてゼロスリーに当たる。頭に二発、脇腹に二発、脚部に二発の計六発を一斉射で当てたのだ。
「そこまで」
「反応出来なかった?」
クリスたちはまだ何が起きているか分からないでいるようだ。戦闘に参加していなかったゼロツーも含めて、ゼロゼロは、
「サブプロセッサーにはコンピューターが埋め込まれてるの。それは知ってのとおり、さっと思考しただけでタスクをこなしてくれる。だけど、そのタスクは一つだけとは限らない。おいおい慣れていってね」
とアドバイスを出す。
「これがご主人様の機体……」
まだ驚きが隠せていないようだ。
――なんてね。たまには先輩らしいところを見せないと。
「ゼロゼロご苦労様。どうするゼロツー、戦ってみる?」
カズがそう言うが、
「いえ、今の動きを見ていたら勝てる気がしないわ。それに私はスナイパーよ、接近戦になったら真っ先に手を挙げてしまうわ」
トリシャだ。彼女をしてもゼロゼロの動きは的確だったという事だろう。それ程にゼロゼロはレイドライバーというものの構造を、性能を熟知しているのだ。
――ありがとうね千歳ちゃん。
ゼロゼロは操縦権をコアユニットに戻して入り口まで戻るよう指示を出す。そうして三体ともこの区画の入り口まで戻って来た。
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