15.模擬戦?-久しぶりにゼロゼロの戦いを見てみたいんだ-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「模擬戦?」
トリシャだ。
「この研究所には、レイドライバーの基礎実験をするスペースがあるんだ。もちろんそんなに広いものじゃあないけど、一応障害物とかも設置されてるものなんだけど。そこで三体交互に模擬戦闘をしてみてもいいかなって。どう?」
とのカズの提案に、
「それは是非ともやってみたいわ。正直このまま実戦配備はちょっと不安で」
トリシャが素直な感想を述べる。
「クリスは?」
「私も出来ればやっておきたいです。短時間でも習熟訓練になれば」
クリスも乗り気のようだ。
「ゼロゼロは?」
「もちろんいいよ。でも、私たちは二人で?」
と聞いて来たので、
「いや、久しぶりにゼロゼロの戦いを見てみたいんだ。なので、オレは見物させてもらうよ」
「いいの?」
――そのいいの? は[やっちゃっていいの]のいいの? ですかね。
「ああ、たまには体感したいでしょ? こんな時くらい肌で感じなよ」
カズはその操縦系をすべてゼロゼロに委ねると言っている。これはレイドライバーの感覚はすべて自分の感覚として扱えることを意味している。つまりは[自分の躰]に出来るのだ。
「よし、そうとなれば準備準備っと」
――これはこれで万一、パイロットが負傷した時のデータが取れるな。それに二人の適応能力も見ておきたいし。
カズは直ぐに職員に模擬戦を行う旨の説明をして準備をさせる。もともとそのようにも作られているので準備は直ぐに整った。
「いいかい? 銃弾はペイント弾を使用しているとはいえ、当たればそれなりに痛いからね。まぁ、その痛みにも慣れてもらうのも目的の一つなんだけど。ゼロツーとゼロスリーはペインアブソービングに注意して。ゼロゼロについては設定はフリーだ、好きに弄っていいよ」
カズがそれぞれに指示を出していく。ゼロゼロは前述のとおり、人が乗っていない状態である。
「じゃあ、最初はゼロツーとゼロスリーで。そのあと、それぞれゼロゼロと戦ってもらおうかな。いい?」
「了解」
トリシャとクリス、それにゼロゼロの声だ。サブプロセッサーは基本的にはパイロットとの応答はするが無線には反応しないようになっている。それは、混同を防ぐとともに機密を守る意味もある。何しろゼロワンにはこのシステムの事は秘密なのだから。どうしても必要な場合は専用回線を使用するという手はずになっている。
二体がそれぞれ距離をとって対峙する。
「はじめ」
の声と同時に両者動き出す。その動きは、というと今までの二体とは別物である。どちらかというとゼロワンに近い。より能動的になったというべきか。
「これが第二世代」
クリスが感嘆の声を上げる。それはそうだ、まさに[自分の躰]のように動かす事が出来るのだから。ディスプレーには必要な情報が刻一刻と表示される。それはサブプロセッサーが判断して、ある意味パイロットの意向を汲んで出力するようになっている。その同調に必要なのが、例の子宮を介したシグナルの行き来である。
そうしているうちにどちらも遮蔽物を上手く使って自分の姿を隠しつつ相手の出方をうかがっている。
はじめに仕掛けたのはトリシャだ。遮蔽物と遮蔽物の間をジグザグ走行しながら[ここ]というところにサブマシンガンを数発単位で打ち込んでいく。それにつられたのがクリスだ。だが彼女だって、ただ単に釣りだされた訳ではない。サブプロセッサーが示した回避行動パターンを参照しつつ反撃に出る。なのでトリシャの打った弾はかすりもしていない。
「これは……すごいな。これが実戦配備できるなんて」
二体の戦闘の模様をモニタリングしていたカズが驚きの声をもってして状況を判断する。
それほどまでに、今までの第一世代とは比べ物にならないほどに動きに対して[キレ]があるのだ。
十数分に及んだ戦闘は、クリスが致命弾を与えた、という結果で終了した。それはそうだ、トリシャは元々がスナイパーなのだ、接近戦には慣れていない。
「やられたわ」
所定の位置に戻ってトリシャが漏らす。
「スナイパーである事を考慮すれば、十二分の結果だよ」
カズである。
「そう、ありがと」
そう言いながら待機状態になる。だが、リンクは切っていない。少しでもこの感覚に慣れておきたい、そう考えているのだろう。
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