10.紹介するよ、ゼロスリーだ-きみは威圧的な人間はダメだろう?-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップ予定です(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「紹介するよ、ゼロスリーだ」
「ゼロスリーと申します。よろしくお願いします」
丁寧な返事が返って来る。
「彼女たちはオレや基地司令の事はマスターと呼ぶだろ? そう躾けてあるんだ。どうやってしつけたか聞きたいかい?」
――教えてあげようか、クリス?
カズはちょっと意地悪な質問をする。
「はい、いえ、気にはなるのですが、その……」
そう言いながらクリスは顔を赤らめている。多分[そっちの事]だと思ったのだろう。
「うん、言わないでおいてあげる。その代わりきみとの関係はちゃんと教えてあげないと。せめて呼び方は、ね」
「はい、わかりました」
素直に応じる。そして、
「これが、ご主人様の言っていたマッチングですか」
とカズに質問する。
「そうクリス、きみは威圧的な人間はダメだろう? おそらく素のアイシャなんかは苦手な部類に入るはずだ。なのでこの娘にした、という訳さ。さてとそのくらいにして、さぁクリス乗ってみて」
そう促す。
クリスはいつものようにレイドライバーに乗ると、以前から言われていた[ショートヘアも良いんだけどこれからは少し髪を伸ばして]の言いつけ通り伸びた髪を後ろで結んで避け、プラグを差し込む。
「じゃあゼロスリー、起動してみて」
の声と共に、
「パイロットの神経系を切断、レイドライバーの神経回路に接続……完了、サブプロセッサーとのリンク……完了、起動しました」
とゼロスリーが宣言する。
「本当だ、これはすごい!」
トリシャもそうだがクリスも感動している。今はレイドライバーが自分の体なのだ。
「今のうちに慣れておいてね。どこかおかしなところはないかい?」
との問いに、
「いえ、これは本当に体が大きくなったといいますか。ただ、モニター類が自分の視覚を使うので違和感がありますが、大きなコートを着たような感じと思えばいいのでしょうか」
クリスはその異様さにまだ戸惑っているようだ。
「そう、一回り大きなコートを羽織っている、そんな感じでいいよ。ただ、コートと違うのは感覚があるって事だ。例えば」
カズはレイドライバーの手を触る。
「あ、触られた感触があります」
直ぐに反応が返る。
「クリス、体で弱いところは?」
カズはわざと意地悪な質問をする。
クリスは異性からすると多少ちょっかいをかけたくなるような雰囲気を醸し出している。それは先の、訓練校での一件も含まれる。簡単に言えば、サディズムを刺激されるのだ。なので[ミーティング]の時などは毎回と言っていいほどカズに[ちょっかい]を出される。もっぱら[おあずけ]がメインだが、それでもクリスには効果てきめんである。それをされるとクリスは悶えた表情をする、またその表情が火をつけるのだ。
「い、言わないといけませんか? ご主人様ならご存じだと思いますが」
そう返って来るが、
「ちゃんと言いなさい。ゼロスリーもしっかり聞いていてあげなさい」
とゼロスリーまで巻き込む。
「了解しました、マスター」
「さぁ」
の声に、
「うなじと脇、それに胸と膝の裏、あとはその……」
それ以上は言われなくても誰にでも分かる。
「まぁ、そのくらいにしておいてあげるよ。じゃあ」
そう言ってカズは脇の下を丁寧に撫でる。すると、
「あっ、こんな感覚まで味わえるんですね、あっ」
少しだけトーンの変わった声でクリスが返事をする。
「とまぁ、こんな感じなんだけど、しばらくゼロスリーと話をしてみてくれるかい? これからのパートナーなんだから」
カズはそう言うと[分かりました]という言葉を聞いてから少し席を外した。
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