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ピンチ?

 週末の朝。起きて朝ご飯食べて、きなことゴロゴロしていたらいつの間にか9時になっていた。


 「またクロの爪切り手伝ってもらっていいですか?」

 「うん、いいよ」


 花野井さんからそうメッセージが送られてきて、俺は即返信をする。

 そして、お腹の上のきなこをゆっくりと床に下ろす。そんなに嫌そうな顔しないで。


 今日は陽翔が遊びに来るが、大丈夫だろう。あいつ、朝弱いし。

 実際、来る時間を聞いていなかったのでさっきメッセージを送ったが、まだなにも返信が来ていない。


 「お邪魔します」

 「どうぞー」


 いつも通り丁寧に頭を下げて、花野井さんは俺んちに上がる。ほんと、そんなに気を使わなくていいのにな。


 クロを抱きかかえて、花野井さんは椅子に腰掛ける。

 花野井さんがクロのお腹を撫でると、脱力した様子で大人しく爪を切らせてくれる。


 「あとは足だけだね」

 「はい」


 こないだよりも俺たちの連携は強化されて、手際よく爪切りを進められた。


 ピンポーン。

 俺がクロの右足の爪を切ろうとしたその時、インターホンが鳴る。


 ……インターホン?

 今花野井さんは俺の家にいるのに?


 「ちょっとごめん」


 俺は立ち上がって、カメラの画面を確認する。そこには、朝に弱いはずの陽翔が立っていた。


 ……あれ、メッセージ送ったけど。見てないのか。


 まあそんなことは今どうでもいい。どうする、俺。


 「どうしましたか?」


 猫の爪切りばさみを持ったまま、脳みそをフル回転させる俺の顔を、花野井さんは覗き込む。


 「ちょっと友達が来て。うーん……俺の部屋に一旦隠れといてもらえる? クロと一緒に」

 「たしかに、それがいいですね」


 もともと遊びに誘ってた、っていうのは言わないでおく。花野井さんが気にしたらいけないし。


 陽翔にバレないように花野井さんを家に帰す作戦を決行しなければ。



 「おお、おはよー。陽翔にしては早いな」

 「うん。メッセージさっき送ったわ、すまん」


 なるほど、俺がクロの爪を切っている間にか。陽翔も家は近いから、あり得る話だ。


 「そうそう、まだ部屋の掃除が終わってなくてー、ちょっと待ってもらえる?」

 「分かった。じゃあ待ってる間に、お菓子でも買ってくるわ」

 「おお、助かる」


 案外あっさりと話が進んだ。実際は部屋綺麗なんですけどね。




 「もう大丈夫だよ。ごめん……?」


 俺が部屋のドアを開けて、もう大丈夫だと伝えようとするが、なぜか花野井さんの姿が見えない。


 不自然な感じに、俺のベッドが盛り上がっているのには気付いたが。


 「あっ……すみません」


 耳まで真っ赤にした花野井さんが、俺の布団からぴょこっと顔を出す。


 「隠れるならこの中かと思って」

 「たしかに、もし部屋開けたりしたら気づかれるからね」


 今思ったんだけど……花野井さんって天然なんだろうか。より魅力が分かった気がする。


 「じゃあ、爪切りの続きしよっか」

 「はい、お願いします」


 今度は、花野井さんにクロを立って抱えてもらい、俺はベッドの縁に腰掛けて、協力して爪を切る。


 「ありがとうございました。お友達が来たのに、お邪魔してしまってすみません」

 「気にしなくていいよ」

 「……でも」


 花野井さんはかなり気にしている様子でぽつりと言う。


 「花野井さんも大切な友達だから。邪魔とかないよ」

 「へ……?」


 俺がそう言うとだいぶ照れた様子を見せて、顔を背ける。


 「初めて、男の子に友達って言われました」

 「そうだったの?」


 たしかに、基本的にクラスの男子は女神として扱ってるもんな。友達として接している男子は見たことがない。


 「……嬉しいです」

 「そ、そっか」


 花野井さんが見せた表情が可愛らしくて、俺まで照れてしまった。



 「お邪魔しまーす」

 「どぞどぞ」


 花野井さんが家を出てから数分、陽翔が戻ってきた。たぶん俺の家から出た瞬間は見られていない。


 「この子がきなこかー。かわいいな」


 きなこは陽翔の足元に寄って行って、鼻をすりすりしている。


 「あとでちゅーるあげる?」

 「おん。……俺も猫飼いてえ」


 猫教に本格的に入信しそうになってきた。いいことだ。


 「蒼大の服、めちゃくちゃ毛が付いてるな」

 「え、まじ?」


 そう思って確認すると、一本長い毛が服についているのが分かった。


 ……これ、花野井さんの髪の毛かも。


 「結構猫って毛が抜けるものだから。たぶんきなこの毛だと思う。たまにひげとか落ちてたりする」

 「そういうもんなのかあ」


 良く見たらバレそうなところだったが、変なとこ勘が鈍くて助かった。


 その後は、きなこと遊んだり腹の上に乗られながらのテレビゲームを楽しんだ。


 


 




 

 

 



 




 


 

 







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