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神話キャラが学校に通う世界線

#1 始まり

作者: 第3類医薬品

僕が通う、とある学園。


――ミソロギア学園――


かつてカオスと呼ばれる存在のなかに大地(ガイア)、そして(ウラノス)が姿を現し、様々な存在を生み出したらしい。

その時に神という立場を撤廃してまで創立した学園がこのミソロギア学園である。そして現在は天の孫の世代がこの学園を管理している。

これを聞くと神秘的で偉大な学園だと感じるかもしれない。だが、ここがそんな素晴らしい学校ではないことは過ごしてみればわかる。

なんたって、この世の中には変な神様ばかりなのだ。そんな神様達が創立した学園など、まともな学園になるわけがない!校則はほとんどないし、教師によるハラスメントの渋滞。善人なんか、ほぼ居ない!


…日々そんな学園で過ごしている。おかしいところは色々あるけれど、なんだかんだ面白かったりもするのがこの学園の良いところだと思っている。


今日もいつもと変わらず学園まで向かう。僕がこんな学校遅刻しても、なんなら来なくても罰なんてないし、怒られることもない。それでも眠い目をこすりながらちゃんと来ている僕はなんなんだろう。午前中なのに僕以外のほとんどの人は活発。元気なことはいいことだ、元気すぎてもダメなのだが…。

騒がしい生徒達の群れを避けて昇降口まで歩く。今日は生徒会の人達が挨拶をしてたから一応返した。


『おはようございます…』


僕の声は小さいから、聞こえているのか分からないけど、挨拶は生き物としての基本だからな。


校内に入ったら階段を上って教室に向かう。2学年に上がってまだ初めの頃だし、教室に入るのが緊張する。

扉の前まで来たら、毎回立ち止まってから恐る恐る扉を開ける。扉を開けた瞬間に皆が僕を見てたらどうしよう…と考えてしまうが、いつも誰も見ていないのがオチ。一応、黒板消しが挟まってないかも確認する。(目立たない僕にそんな嫌がらせをする人なんておそらくいないのだが)


勇気を出して扉を開けた。

…当然今日も誰も見ていない。僕はホッとして胸を撫で下ろす。そのまま、教室の中を進んでいく。

自分の席に座って辺りを見渡すのも僕の何気ないルーティンだ。何もすることないし、ついつい癖で人間観察に没頭してしまう。別に同じクラスの人のことが好きなわけでもないんだけど。


「おはよ!」


突然僕と同じクラスの女子が僕の隣の席に座って、人間観察中の僕に笑顔で挨拶をしてきた。なのでこれも一応返す。生き物としての基本だからな。←重要


『おはよう…』


聞いていたのかわからないが、彼女は前に向き直ってスマホを触ってる。

僕には眩しすぎるぐらいにキラキラな笑顔のこの人は「ヒドラ」という名前の子で、上の学年に友達がいるらしい。見た目がギャルっぽいうえに、怪物の王と言っても過言ではないほどの強さを持つテュポーンという怪物の娘なのだ。だから彼女も強い。あの英雄ヘラクレスと戦ったらしい。

そんな彼女の隣だから、ある日をさかいに肉の塊になるかもしれないと思うと、彼女の隣では一切気が抜けないのだ。


すると急に彼女は珍しくスマホを片付け、問題集を取り出し、問題を解き始めた。ほんとに珍しかったので、驚愕のあまり彼女以外の人物に焦点を合わせることができなくなっていた。

いつもはスマホをいじって、きっと誰かとやり取りしてて。彼氏かな。スカートは短いし、シャツのボタンもきっちり留められていない。いかにも頭の中がスカスカそうな女子だ。

なのに授業は出てるし、ノートはとっているから、真面目なのか不真面目なのかよく分からないのだ。でも、たまに彼女の寝顔がこちらを向いていることもある。


「ねぇねぇ、ここの読み方わからないから教えて?」


急に彼女が指を指して僕に見せてきたのは"曖昧"という字だった。曖だって昧だって、中学生ぐらいに習う文字なんだよ。


『あいまい……』

「なんて?」

『あいまいっ…!』

「あいまい?わかった」


考えごとをしていたから、急に話しかけられてびっくりした。なんだか、こんなこと考えてるのが申し訳なくなってくる。

そう思い詰める僕を放って、彼女はいつも通りの笑顔で僕が教えたとおりに"あいまい"と書いていた。「むずかしいねー」って呟きながら。


「ね!!ここは!!」

『…』


次も答えてやろうと思って問題を見たけど、差し出された問題がとんでもなかった。


【――の筆者の心情を答えよ。】


…無理だ。僕の大嫌いなタイプの国語の問題。僕は心理士でもなんでもないのにその人に気持ちなんてわかるわけが無いだろ?暗記は得意なのに、この問題のせいで現代文のテストの点がガタ落ちするぐらいに得意じゃないのだ。

どうしようかと思ってしばらく硬直してたけど、この人ずっと僕を見てる。


「わからない?」

『あっ…えっと……わからない…かも…』

「そっか」


イメージ、崩れたかな…。僕を"賢い人"という類で認識してたけど、今のでそのイメージが崩壊したりしていたら少し残念な気持ちになる…。


「本能寺の変って書いとこー」


え?今やってるの歴史じゃないんでしょ?気になって彼女の解答をを見てみた。

おそらくわからなかったであろう問題の解答が全て"本能寺の変"という解答になっている。…いや、僕たち神話に出てくるような生き物だよ!?しかもギリシャだよ!?それでいいのか!!!

今もあまり上手くない小さめの字で"本能寺の変"と書いている。


怖い怖い怪物の彼女がちょっと可愛く見えてしまった。

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