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9.会話 魔王の願いの話

本日もこんばんは。

魔王の願いの話です。ろくな願いではありません。

「ふう。こんなもんですかね」

「さすがです。めちゃくちゃ勇者っぽかったですよ」

「雑魚をいたぶる時間は気分が高揚します」

「外道のセリフみたいですね」

「狩って狩って狩りつくしたいです」

「言い方はアレですが、勇者としては正しい行いですね」

「ちょっと思ったんですが」

「なんでしょう」

「仲間……的なくくりになる魔物が倒されるのを見るのって、魔王さん的にはどういう感情なんですか」

「きれいな太刀筋だなぁと思っていますよ」

「私の戦い方ではなく。いわば同族殺戮現場ですよ、これ」

「あー」

「あー、って」

「ぼくとしては、気持ちがいいです」

「詳しく訊いてもいいですか」

「ぼくね、最近、思うんです。魔族っていらなくね? と」

「勇者として話の続きを求めます」

「ながーくながーく生きてきて、ぼくは気づいてしまったんです」

「何に」

「魔族より人間の方が魔族っぽいなって」

「それに気づいたものは消されますよ、作者に」

「メタい」

「ちなみに人間のどの辺が魔族っぽいと思いました?」

「えーーー……。ぜんぶ?」

「いっそ、交換します? 人間と魔族。今日から私たちが魔族でーす、みたいな」

「そしたら、ぼくは人間の王様ってことですか。裸になったり、友情に感動して改心したり、耳がロバになったり、いつか塔から落ちたりする運命にあるんですか」

「なんですか、その個性強めの王様像。ふつうに統治すればいいんですよ」

「ううん……」

「乗り気じゃないみたいですね。人間は愚かで扱いやすいですよ」

「扱いにくい人間代表みたいな人に言われても」

「その辺、魔族はどうなんですか」

「統治の“と”の字もありません」

「でも、従順なひともいますよね?」

「一応」

「魔王さんは魔王なんですから、力で支配すればいいじゃないですか」

「荒っぽいのきらいなんです、ぼく」

「魔王のくせに……」

「そりゃ、昔はぼくもやんちゃでしたけど、今は話し合いの時代です」

「魔物と話し合いですか」

「千年くらい前からその手法を主としたんですけど、うまくいかなくて」

「千年」

「二千年だったかもしれません」

「つっこみはしませんよ」

「それで、全然だめなので、もういっそ魔族なんてなくなってしまえばいいと思いまして」

「穏便なのか過激なのかわかりませんね」

「勇者さんと旅をするなかで、夢を抱くようになりました。魔族、駆逐されないかなって」

「いいんですか、それ。家来とか」

「魔族なんてしょせんは魔力の塊ですからね。消えればみんな同じです」

「悪役っぽいセリフですね。めずらしい」

「そういうわけで、勇者さんによって消される魔物を見るのは好きです。なんかこう、悪玉菌がひとつひとつ滅されているような」

「悪玉菌」

「どんどん殺戮してください」

「優しげな笑みでなんてことを」

「世界は一度リセットするべきです。腸内環境を整えるように」

「世界と腸内を一緒にするのやめてもらっていいですか」

「すがすがしい気分で朝を迎えたいと思いませんか」

「消えたら朝は来ませんよね」

「今日のお夕飯にはヨーグルトを食べましょうね」

「私はアロエで。そういえば、神様から聞いたんですけど」

「なんですか」

「魔王を倒すと魔族は消滅すると」

「そうですよ。……なんですか、ぼくを見て」

「介錯なら手伝いますよ」

「いやですよ」

「夢を叶えてやるって言ってるんです。おとなしくその首寄越しやがれください」

「いやですってば」

「私の使命も達成されてあのクソ神様ともおさらばできるんですよ」

「それが本音じゃないですか」

「利害の一致と言ってください。ほら、はやく首を出せ。斬らせろ」

「いやです!」

「なんでですか!」

「首がないと食べられないじゃないですか!」

「何を!」

「ヨーグルト」

お読みいただきありがとうございました。

最近、魔王さんはアロエのヨーグルトがお気に入りです。腸活魔王です。

勇者さんはなんでも食べます。終活勇者です。


勇者「魔族が悪玉菌なら、善玉菌魔族もいるってことですか?」

魔王「いてもそいつは殺した方が世のためです」

勇者「突然の魔王やめてもらっていいですか。カウントダウンしてからにしてください」

魔王「五千七百三十九、五千七百三十八、五千七百三十七、ごせ――」

勇者「おばか? おばかなのか? あまりのおばか具合にツッコみが追いつきませんよ」

魔王「そばで見守っていてくださいなっ」

勇者「お断りします」

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