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86.会話 釣りの話

本日もこんばんは。

釣りをしたいなぁと思い、早3年が経った天目です。

「今日の夕飯はお魚がいいということで、さっそく食糧調達と参りましょう」

「店で買ってくればいいのに……。だいじょうぶなんですか?」

「釣り竿、バケツ、エサ、その他諸々の準備はばっちりです。ご心配なく」

「その心配ではなく、釣れるか否かですよ。釣りなんてやったことありませんよ」

「エサを垂らしておけば食いついてくるのでは?」

「知識のない私でも、そう簡単ではないと予想できます。ところで、エサって……」

「お店に行ったらこれが置いてありましたので」

「釣り具の店に行く余力があるならふつうに鮮魚店に行けばいいんですよ」

「だって、勇者さんと釣りをしてみたくなりまして。エサ、どうぞ」

「いやこれ、ミミズじゃなくて?」

「虫、お嫌いでしたっけ?」

「お嫌いです。苦手ではないですが」

「涼しい顔して躊躇なく針に刺す勇者さん。クールですね」

「ツッコみませんよ。ところでここ、魚いるんですか?」

「釣り堀の跡地のようですし、いると思いますよ。さっきも水が跳ねましたし」

「いつから無人になったのやら。まあ、無料かつ貸し切りなのでいいですが。果たして食べられる魚なのでしょうか」

「火を通せばだいたい食べられます」

「それは私が言うべきセリフかと」

「そういえば勇者さん、釣りは待つ時間を楽しむと聞いたことがありますよ。どうですか、楽しいですか?」

「お腹すきました」

「言葉のキャッチボールを……。キャッチボール……」

「キャッチアンドリリース?」

「まだ釣れてもいないのに?」

「魔王さんを釣り堀にドボン」

「純粋な嫌がらせリリースですよ、それ」

「釣り竿を固定して、先に火の準備をしますね。ちょっと冷えてきましたし」

「夕方になって風が冷たくなってきたようですね。火の扱いには気をつけてください」

「そいや」

「言ったそばから大量の着火剤。まあ、ぼくがついているので火事にはしませんが」

「あー……。あったかあったか」

「温まるのはいいですが、メインは釣りですからね? 寝ちゃだめですよ?」

「待つ時間を楽しんでいるのです。勇者たるもの、一秒たりとも無駄にはしません」

「今に限っては合っているような……。やっていることはいつも通りですが」

「眠くて体が揺れてきました……。おかげで世界が回ります……」

「違いますよ、勇者さん。現実に釣り竿が引いています。かかったようです」

「う? めんど……」

「ご飯ですよ!」

「仕方ないですね。えいっ。……あれ、いませんね。エサがない」

「食い逃げされたようですね。手強い相手のようです。ですが、ちゃんと存在を確認できましたね」

「金も払わずにエサだけ食いやがって……」

「勇者さん? お顔がこわいですよ?」

「ふふふ……。いい度胸してるじゃないですか。たらふくエサを食わせて、肉をため込んだ身を私が食らってやりますよ。悠々自適に水中にいられるのもあと少しです。息のできない陸に引き上げて火炙りにしてやろうじゃないですか」

「こ、こわいですよう。勇者さんの変なスイッチが入ってしまいましたぁ」

「出てこい無銭飲食魚」

「勇者さんが獲物を狩る目をしている。まあ、釣りを楽しんでいるようでよかったです」

「……よし、かかった。今度こそ釣り上げてはらわた散りばめてやりますよ!」

「ホラー映画の敵ですか――っと、釣り竿が大きくしなっていますね。これは大物の予感です。がんばってください、勇者さん!」

「ぐぬぬぬ……! ちゃっかり勇者パワーを使っているのに全然引き上げられない……うわぁ⁉」

「勇者さん! ……っととと……、セーフですぅ。だいじょうぶですか?」

「……まさか、魚ごときに力負けするとは。危うく釣り堀のゴミになるところでした」

「お怪我はないですか? だいじょうぶそう……ですね。もうっ、ぼくの大事な勇者さんを引き込もうとするとは、野蛮な魚ですね。ぼく、怒りました!」

「釣り竿放り投げて……ええ、何するんです――って、ちょっと?」

「犯人……じゃなくて、犯魚の正体を暴きます。釣り堀の水ごと持ち上げれば簡単にわかるでしょう。うーん、……ゴミばかりですね。ん? お前かーー‼」

「なんですか、あれ。魚のような、化物のような。あっ、もしかして魔物?」

「あのねぇ、釣りをしている人を引っ張たら危ないでしょう! ……なんですか? 看板? 『魔物の巣窟になったので釣り堀を閉鎖します。魚は全部食べられた』? だから人がいないんですね。だめでしょこらーー!」

「やれやれ……って、魚がいない? 今夜の食糧……。このエサ、食べていいかな」

「勇者さん、今日の夕飯はお店に入って……って、勇者さん?」

「あんまりおいしくないや」

「うそでしょ?」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんはだいたいなんでもできます。


魔王「へ、変なもの食べないでください!」

勇者「お腹すいたんですよ」

魔王「釣れなかった時用に鮮魚店で仕入れておきましたからぁ!」

勇者「釣りする意味ありました?ねえ?」

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