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85.会話 魔法の話

本日もこんばんは。

ただしゃべっているだけなので、たまに世界観がわからなくなります。実はこれ、ファンタジーなんですよ。ファンタジーなんですよ……。

「この世界、一応ファンタジーなのにその要素を微塵も感じませんよね。つまらないです。もっとダイナミックでエキサイティングかつロマン溢れる物語がいいです」

「勇者さんの言い分はわかりましたけど、なにゆえぼくに剣先を向けているのでしょう」

「魔法を用いた戦闘シーンを演出することで一段階パワーアップした私をお見せできるかと思いまして」

「ばりばりに物理攻撃する気なのに?」

「私、魔法使えるんですよ」

「知ってますけど……。勇者に選ばれた人間は神様によって魔法を授けられますからね」

「でも、突然言われても困るし神様からもらった力とか使いたくないわけです」

「ふだんの魔物退治も素の力で倒していますよね。それもおかしな話なんですが……」

「ただ、まったく使わないでいると、ボケロリババア魔王のごとく使い方を忘れかねません」

「ボケロリババア魔王⁉」

「そろそろ皆様方も私が何者か怪しく思ってきたころでしょう。この勇者たる私を」

「ふだんがアレですからね。ぐーたら大食い睡眠魔」

「十三歩譲って怠惰な人間なのは認めます」

「全然譲ってないじゃないですか」

「しかし、『この勇者、実は弱いんじゃね?』と思われるのは心外」

「そもそもジャンルがほのぼのなので戦闘やシリアスシーンはほとんどな――」

「そこで! 今から魔法の確認がてら魔王さんを討伐しようかと思います」

「ぼくを倒すの、ついでみたいに言わないでくださいよう。せめてメインがいいです」

「私の活躍場面なので手を出さないようお願いしますね」

「抵抗せずに殺されろってことですか?」

「いきますよ」

「逝きますよ?」

「まずは剣を魔法でコーティングします。格段に威力と衝撃が増し、雑魚ならかすっただけで消し飛びます」

「恐ろしすぎる」

「次に魔法で毒を付与します。中級程度なら悶え苦しみ溶岩のように溶けます」

「属性が闇のせいでどんどん剣が禍々しい見た目に」

「最後に殺傷能力の向上と捕縛のために闇魔法を茨に具現化します。私の趣味です」

「悪趣味と言いたいところですが、勇者さんのお姿と雰囲気によく似合っていて正直めちゃくちゃかっこいいです」

「そののほほんとした態度も今だけですよ。さあ、元気よく張り切って死に晒せ」

「勇者さんの語彙チョイスが地味にこわいの何なんですか」

「おらぁ!」

「こわい。当たっても毒を食らっても死にませんけど、絵面がこわいので避けさせていただきますよ。って、避けても茨が追ってくるぅ⁉ うぎゃーーー‼」

「便利ですね、これ。私、動かなくていいじゃん」

「怠惰。これから怠惰の勇者って呼びますよ」

「荊棘の勇者とお呼びください」

「やだもう何そのかっこいい二つ名……って、痛ぁ⁉ 茨が刺さったぁ……」

「ちなみにこの茨にもばっちり毒が」

「はやく言ってくださいよ。いつの間にか茨でぐるぐる巻きにされてるし」

「毒と茨で動きを止めたところに、高火力の闇魔法を纏った剣で畳みかけるのです」

「説明ありがとうございます。やめてもらっていいですか」

「その首もらった!」

「もーー! 物騒な勇者さんはいやです」

「…………。当然のように逃げられた。はあ、珍しく殺る気になったのに」

「そんなやる気は捨ててもらって」

「散々喚いていて、涼しい顔で隣にいるの腹立ちますね。というか、殺されかけておいて平然と定位置にいるのもどうかと思いますよ」

「勇者さんの戦闘モードが終わったようなので、もういいかなぁと」

「笑顔で言われても。私が言うのもなんですが、メンタルおかしいんじゃないですか」

「いつも通りです」

「本気の殺意で殺しにかかったら、さすがの魔王さんも反撃すると思ったんですけどね」

「ぼくは戦いたくないんです。それに、反撃した時に誤って殺しちゃったら取り返しがつきませんからね」

「私は死んでもいいんですけど」

「だめです。さ、気が済んだら行きますよ。動いてお腹減ったでしょう?」

「よくわかりましたね。空腹です」

「お昼ごはんにしましょう。ぼくもお腹ぺこぺこです」

「魔王さんは何もしていないような。今日はファンタジーっぽくする日ですから、魔王さんも魔法のひとつやふたつ、使ってくださいよ」

「そんなテキトーな理由で使うものでしたっけ。いいですよ。えいっ」

「……私の周りを愉快な動物たちが踊っている。呑気な音楽も聴こえる」

「なんちゃってメリーゴーランドです」

「一応訊いて差し上げます。魔王がこれでいいんですか?」

「だめなんですか?」

「無垢な瞳」

お読みいただきありがとうございました。

地の文がないのでどうやって表現しようかと悩む毎日です。


勇者「荊棘の勇者を流行らせたいです」

魔王「今のところ、ぼくしか知りませんよね」

勇者「ネームプレート作りましょうか。上書きして」

魔王「神様が泣いている気がします」

勇者「それはうれしいですね。ざまぁ」

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