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82.会話 糸電話の話

本日もこんばんは。

糸電話を作るの楽しかったなと思って書きました。あんまり思い出を思い出せませんでした。

「もしもーし、聞こえますか? 勇者さーん。ぼくですよ~魔王ですよ~」

「やかましいですね。聞こえていますよ。なんですか」

「ちゃんと繋がっているか気になりまして。なにせ紙コップと糸ですから」

「意気揚々と作り始めて何をするかと思いきや、糸電話ですか。いつもうざいくらい隣にいるのに、わざわざ離れて電話しなくても」

「遠回しに寂しいと言っておられますか⁉ すぐに戻りま――」

「いえ、どうせ離れるなら声も届かない場所に行っていただきたいです。あと、糸電話をする意味がわかりません。無駄な労力です」

「わかってないですねぇ。糸電話は、そう、エモいのです」

「…………」

「あれ? 聞こえてますか? 勇者さーん。もう一度言いますね。糸電話は、エモ――」

「聞こえててくだらないから無視したんですよ」

「そんなぁ。魔法も電波もいらない素敵な方法ですよ? おもちゃのようなのにしっかり声を伝えてくれる優れモノですよ? 便利になった時代だからこそ、原点に返る大切さが身に染みるのです」

「あとでレモン汁をお渡しします。目に」

「それは染みたらアカンやつですぅ……」

「こんなこどもだまししなくても、魔王さんならいくらでも方法があるでしょう。それこそ魔法とか使えばいいのに」

「情緒がないじゃないですか。糸電話の優しさといいますか、温かさといいますか」

「糸電話を作ろうとして失敗した無数の紙コップと糸は環境に優しくないと思います」

「うぐっ。そ、それはあとで責任を持って使いますから」

「紙コップはわかるとして、糸は何に使うんです?」

「え? 糸は……。えーっと、何かを結ぶために……でしょうか」

「思いつかないんですね。でしたら私が代替案を差し上げますよ」

「おや、ぜひお教え願いたいです」

「聞き逃さないよう、しっかり耳を傾けてくださいね」

「はい!」

「糸電話になれなかった哀れな糸たちを重ねて一本の丈夫なヒモにします」

「ふむふむ!」

「先端を輪っかにし、天井にぶら下げます」

「ふむふむ! ふむ……?」

「輪っかに首を通し、あっという間に首吊りの完成――」

「待て待て待て待て。ちょっと待ってください。優しい糸電話から物騒すぎる話が聞こえてくると混乱します。糸電話に合わせて勇者さんが穏やかな口調にしているのが余計に雰囲気をぶち壊します。やだぁ!」

「これ以上ない活用法でしょう」

「もっと他にありますよ、絶対」

「首をくくる以外になんの使い方があるんですか」

「むしろそれ以外を思いつかない勇者さんがこわいです。もっとあの、優しくて穏やかな使い方をですね。ネックレスとかブレスレットとか」

「ネックレスで首を吊るんですか」

「どうしてそうなるんですかぁ」

「殺害方法でよくみられる手法ですよ。とある町では一般的です」

「例の犯罪都市と一緒にしないでください。あれは例外オブ例外です。ぼくは糸電話でいつもと違うおしゃべりをしようと思っただけなのに、どうしてこんなに物騒な話に……」

「糸電話って罠に使えそうですよね」

「ぼくの嘆き、聞いてました?」

「離れたところから音を響かせて獲物を誘い、用意しておいた檻を頭上から下ろす。うん、完璧ですね」

「糸電話の優しさが失われていく」

「失礼ですね。優しさもありますよ。顔を見られないくらい遠くから糸電話で人間と話せば、両者ともにはっぴーです」

「それ、どのくらい離れているんですか?」

「四百メートルくらい」

「糸電話、撃沈」

「ちっ。無能ですね」

「わあっ。ひ、引っ張らないでください。部屋の窓を開けて糸電話をしているんですから、糸が取れちゃいますよう」

「両隣の部屋で窓を開けているなら、糸電話しなくても聞こえる……とは言わないでおきましょう。私、糸電話のように優しいので」

「何か言いましたー? ちょっと糸がよれて聞こえなくて……」

「いえいえ。ところで魔王さん。私そろそろ寂しくなってきました。いつもみたいに隣で声が聞きたいです」

「なっ、なんですと、お待ちくださいすぐに行きますすぐに‼」

「……かかった」

「お待たせしました魔王ですよ勇者さ――うぎゃああぁぁうあやぁ⁉ な、なんで上から檻がぁぁぁ」

「糸電話、有能ですね」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは糸電話を作る魔王さんの隣で罠を作っていました。気づけ。


勇者「魔王のくせにあまりに雑魚すぎるんですよね」

魔王「言葉の暴力ぅ……。あの、助けてもらっても……?」

勇者「なんで勇者が魔王を助けるんですか」

魔王「正論の暴力ぅ……」

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