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79.会話 かき氷の話

本日もこんばんは。

かき氷は元は水なのでカロリーゼロです。安心して食べながらお読みください。

「今日も暑いですね、勇者さん。ということで、かき氷機をご用意しました」

「大変ありがたいですが、ひとつだけよろしいですか」

「どうぞ」

「なんで手動タイプなんですか。暑いからかき氷を食べるのに、手動で作ったら余計に暑くなるでしょう」

「理由は簡単です。節電です」

「魔王のくせに環境を気遣うんですか。ことごとくおもしろくないですね」

「お、おもしろさを求めていませんよ。ぼくはかき氷を求めているんです。それに、ぐるぐる回してかき氷が出来上がっていく様子を見るのも一興じゃないですか?」

「おもしろさより冷たさです。くそ暑いのではやく作ってください」

「お口が悪いですよ。ぼくが作っちゃっていいんですか?」

「私がハンドルぐるぐるするとお思いで?」

「思いません。では、ぐるぐる~。氷が削れていく感覚が結構癖になりますよ」

「骨が削れる感覚?」

「氷! 暑さで耳がやられたんですか? あ、シロップはどれにします?」

「いちごで。血みたいですよね、それ」

「かけている隣で言わないでください。手元が狂って大惨事になりましたよ」

「それはそれで血しぶきみたい」

「やめてくださいよう。練乳はかけますか?」

「お願いします。ところでかき氷ってどういう経緯で発明されたんでしょうね。やっぱり氷を食べていた時に思いついたんでしょうか」

「由来は複数あるみたいですよ。たしか、氷を叩いて細かくする意味の言葉が変化したとか、端の欠けた氷を食べていたが言葉の縁起が悪いので『欠けた』を『かき』に変えたとか。ともあれ、氷を食べる行為から発展したものでしょうね」

「へえ。え? すみません、かき氷を食べていて聞いていませんでした」

「途中から察していました。おいしいですもんね、かき氷」

「魔王さんは何味にしたんです」

「ブルーハワイです。涼しそうだなぁと思いまして。一口食べますか?」

「いえ。全種類食べる予定ですから」

「あんまり食べるとお腹壊しますよ。氷ですからね。一杯でもかなり冷えるのに……」

「だいじょうぶです。元は水ですから」

「わかるようなわからないような理屈ですね。水は水ですが、温度が違うから氷という名前をもらっているわけで――ううっ‼」

「どうしました? ふだんしないお堅い説明で脳が拒否反応を起こしたんですか?」

「ち、違いますよう。頭がキーンとなりまして……。イタタタタタタタ……」

「ふうん。大変ですね。魔王なのにかき氷にやられるなんて」

「そういう勇者さんはざっくざっく食べているのに顔色ひとつ変わりませんね」

「魔王さんの気持ちがわからないので。私、なったことないんですよね、それ」

「ほんとに言ってます? 頭キーンってなったことないんですか!」

「そんなに驚かなくても」

「ま、まさか神様のギフトで……?」

「そんなくだらないことに使いませんよ」

「いろんな方面からツッコミたいところですが、キーンってなったことない人なんているんですね。びっくりですよ」

「アイスクリーム頭痛でしたっけ。かわいい名前をつけられたもんです」

「症状は全然かわいくないです。おいしくてもこの症状だけはいやなんですよねぇ」

「ふっ」

「かき氷片手に勝者の笑みを浮かべるのやめてください。何杯目ですか」

「五杯目です。おいしいですね、かき氷」

「食べ過ぎですよ。あれ? ぼく、作っていませんけど、いつの間に?」

「かき氷ごときで苦痛に見舞われる哀れな魔王さんを労わって自分で作りました」

「優しいはずなのに優しさが感じられない」

「キーンにやられている間にかき氷がただの生温いシロップ水になってしまう魔王さんがあまりにかわいそうです」

「わあっ! い、いつの間に。ぐすん……」

「急いで食べるとなりやすいそうですし、ゆっくり食べたらどうですか?」

「そうですね――って、そしたらどのみち溶けるのでは……」

「……なんだか、ほんとうにかわいそうに思えてきました」

「さっきは思ってなかったんですか」

「こうなったらもう、最後の手段ですね」

「なにか解決策がおありなんですか?」

「冷たいものを食べるとなる。ならば、反対にすればいいんですよ」

「反対に」

「強敵キーンに立ち向かう唯一の対抗策といえましょう」

「キーンが名前みたいですね。して、それは?」

「あったかいものを食べる」

「本末転倒ですよ。ぼくはかき氷が食べたいんです」

「何かを得るためには犠牲が必要。かく言う私も、かき氷と引き換えに腹痛を獲得しました」

「言わんこっちゃない!」

お読みいただきありがとうございました。

アイスクリーム頭痛、みなさんはなるでしょうか。天目は経験ないです。


魔王「イタ、イタタタタァ~……」

勇者「……かき氷で倒せるのでは?」

魔王「ぼくをなんだと思ってるんですかぁ」

勇者「意外と弱点多いですよね」

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