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78.会話 鏡の話

本日もこんばんは。

そろそろ題名から内容の予想ができるようになってきた頃かと思います。私はできません。

「えいっ」

「うわああぁぁぁあなにするんですかまぶし、まぶしいです!」

「道端に鏡が落ちていたので、浄化しようと思いまして」

「夏の太陽を反射させるなんて危険行為ですよ。ぼく以外にはやっちゃだめですからね」

「魔王さんにはやっていいんですね」

「まぶしいだけなので。それにしても、誰の落とし物でしょうね。落とすにしては大きいような」

「的は大きい方がいいでしょう。たくさん光を集めて燃やし尽くすんですよ」

「物騒ですね。木や草に向けてはいけませんよ。火事になりますからね」

「魔王さんにしか向けませんよ。どうですか? 焦げそうですか?」

「日焼けはしそうです。あの、一点集中狙いやめてもらっていいですか。どうせ焼くならまんべんなく……って熱い! なんで額なんですか」

「魔王さんに白毫を作ろうと思いまして」

「ありがたくないですよう」

「でもこれ、ほんとうに熱いですね。目玉焼き作れるんじゃないですか」

「勇者さんのことですから、てっきりステーキと言うのかと思いましたよ」

「焼けるなら焼きますけど」

「これだけ熱いなら焼けると思いますよ。今日の夕飯は太陽光で火種を作ってお外でバーベキューでもしましょうか」

「いいですねと言いたいところですが、夜は太陽ありませんよ」

「太陽が沈んでいるのに暑いのはおかしいですね」

「遠い目の魔王さん。すごい力があるならご自分で自然の摂理を捻じ曲げたらどうです」

「暑くて何事もやる気が起きないんです……」

「いつもの私みたいなことを言ってますね」

「自覚はあるんですね。ところであの、チラ見するノリで光を当てるのやめてもらっていいですか。チカチカするんですよ。地味に目にきます」

「絶妙な嫌がらせですよね。鼻で笑う程度の」

「ご自分で言わないでください。そしてその表情やめてください。相手が相手ならケンカが起きていましたよ」

「やります? ケンカ(殺し合い)」

「ルビがおかしいですよ」

「ところで、鏡を顔の前に持ってくると私の顔を隠せて便利なことに気が付きました。これで魔王さんは常にご自分の儚げ美少女顔を見ながら会話ができますし、人間とも違和感なく対応できます」

「ぼくがかわいいのはわかりましたが、勇者さんのお顔が見えません。それに、前見えてます?」

「見えないです。不便です」

「前言撤回がはやいですね」

「透ける鏡ってないんですか? 売れると思うんですけど」

「買うのは勇者さんだけですよ」

「はあ……。使えない鏡ですね。大きいし、一歩間違えると眩しいし、肉も焼けないし」

「一ミリも鏡に非はないんですけどね」

「しかも二枚」

「どこに隠し持ってたんですか」

「お、合わせるとどこまでも続いて行くみたいで面白いですね」

「合わせ鏡ですね。ちょっとこわい噂や都市伝説、怪談などがあるんですよ。異世界に引き込まれるだとか、霊が映るだとか。不吉なのでやってはいけない行為とされています」

「魔王さんが言うとリアルっぽいですね」

「十三番目に映る顔は死に顔だ、という都市伝説は有名ですよ」

「へえ。でもそれ、めちゃくちゃ変顔だったら別の意味でいやですね。キメ顔も却下」

「ピースしてたり?」

「舌を出して小馬鹿にした表情だったら鏡を叩き割る気持ちです」

「映るのはご自分の死に顔ですよ」

「未来の自分なんて他人みたいなもんですよ。あ、死に顔といえば気になったんですけど、不老不死の魔王さんは何が映るんでしょうか」

「死なないなら死に顔もないだろう、ということですか」

「はい。やってみませんか?」

「危険行為を当然のように誘ってきますね」

「魔王さんですし、むしろ進んでやるべきですよ」

「勇者さんに何かあっては困るので、鏡を置いて映らない場所にいてくださいね」

「わかりました。はい、設置完了です」

「十三番目でしたよね。ええと……」

「なにか映っていますか?」

「う、映っています! 黒髪で、赤い目をしたかわいい女の子がこちらを見てむしょうに腹が立つような絶妙な顔で薄ら笑いを浮かべています」

「なんておそろしいのでしょう」

「ほんとうにおそろし――って、おふざけ禁止ですよ、勇者さん」

「すみません、つい」

「合わせ鏡は遊びでやるものではありませんよう」

「乗り気だったくせに。今度こそちゃんと離れるので、しっかり見てください」

「わかりました――って、あれ?」

「どうしました――って、鏡が粉々になっていますね」

「し、心霊現象でしょうか⁉」

「いえ、さきほど魔王さんが私を叱った時に謎の衝撃波を放っていましたよ」

「ぼくでしたか」

「都市伝説より何倍もこわかったです。無意識のアレ。霊も逃げるレベルです」

「お、お恥ずかしい……」

「まあ、おもしろい魔王さんが見られたのでよしとしましょう」

「あの、さっきの顔はなんですか? ぼく的には衝撃だったんですけど」

「日頃の想いです」

「日頃からあんなにぼくを小馬鹿にしているんですか」

「いやだなぁ。気のせいですよ」

「それに、不気味なお人形まで用意して、おふざけに力を注ぎすぎですよう」

「人形? なんのことです」

「とぼけないでください。全身血まみれで虚ろな目をしたお人形を鏡に映したでしょう? 手にはナイフを持って、にたりと笑った趣味を疑うお人形です」

「……その人形が映ってたんですか? どこに?」

「薄ら笑いを浮かべた勇者さんの反対側ですよう。もー、びっくりしました」

「反対側なら、私の手も映っていましたよね」

「そりゃあ――ん? いえ、映っていませんでしたね。鏡を置くときに一緒に置いたのかと思いましたけど、持ってたんですか? あれ? それだとおかしいですね」

「ちなみになんですけど、それ、ほんとうに人形でした?」

「え、なにを突然。だってぼくたち以外に気配はありませんでしたよ」

「……へえ。じゃあ、人形か人間以外なんでしょう」

「曖昧な言い方しないでくださいよう。さっきのお人形出してください。不気味でかわいくないのでぽいします」

「出したいんですけどねぇ」

「もったいぶらないでください」

「いやぁ……。あはは、お昼ごはんは何にしようかなぁ」

「ちょっと、勝手に行かないでくださいよう! 鏡の破片を回収して捨てないと」

「然るべき場所に持って行かないとですねぇ」

「はい。厚紙などに包んで、不燃ごみですね」

「……そもそも、なんで鏡が二枚も道端に――。うん、やめとこ。てっしゅー」

お読みいただきありがとうございました。

合わせ鏡を何で知ったのかで年代や趣味がバレそうですね。くれぐれもこの作品でないことを祈ります。


勇者「第一、自分の顔なんて見たくないです」

魔王「かわいいのに。ほら」

勇者「どこから出したんですかその鏡。貸してください。割る」

魔王「許可する前に大剣向けないでください」

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