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76.会話 ぬいぐるみの話

本日もこんばんは。

ぬいぐるみは癒しです。つまり今日は癒しの話です。

「わあ~、見てください、かわいいクマさんですよ!」

「あんまりガラスに張り付かないでください。魚拓になりたいんですか」

「こっちにはうさぎさん。あ、猫さんもいます~。かわいいですねぇ」

「ぬいぐるみがお好きなんですか」

「ぬいぐるみが、というよりかわいいものはなんでも好きですよ」

「ふうん。これは?」

「こわっ。なんですかこわい。ゾン……ゾンビですか?」

「かわいいと思います」

「勇者さんのかわいいポイントがわかりません」

「腐った顏とか、千切れそうな腕とか、飛び出す目玉とか」

「ぐろいですよう。これを開発した人が心配です」

「そういう魔王さんは、お気に入りのぬいぐるみはどれなんです?」

「うーん……、どれもかわいいですが、この子ですね」

「黒猫のぬいぐるみですか。まあ、かわいいと思いますよ」

「ここ! ここが重要です! ここ!」

「やかましいですね。目ですか? げっ、赤目」

「ぼくの好きな色です。えへん!」

「黒猫に赤目ってそうとう趣味悪いですよ。開発した人の頭、だいじょうぶですかね」

「なにやら不安要素の強い開発者ですねぇ。ところで勇者さん、おひとつプレゼントしたいのですが、ゾンビ以外で気に入ったものはありますか?」

「ゾンビ以外で? 難題ですね」

「そんなに? こういうのは直感も大事ですよ。目を引かれたとか、この部分が好きとか、なんとなく好きとか、なんでも」

「そうですねぇ……。この子でしょうか」

「クマさんですか。かわいいですね」

「ジビエ料理……。じゅるり」

「ぬいぐるみの中は綿ですからね?」

「この目を見てください。獲物を狩る目をしていますよ。きっとボスです」

「幻覚でも見ているんですか? 頭だいじょうぶです?」

「首にあるリボンは獲物の動きを封じる道具に違いありません。絡ませて捕獲し、ゆっくりいただくのでしょう」

「ただのリボンに強めの幻覚を見ないでください。かわいさ用ですよ」

「だって赤いじゃないですか。獲物の血で染まったんですよ」

「すべての赤いリボンに謝ってください」

「おや、魔王さんが持っている黒猫は青色のリボンなんですね。……なるほど。不幸を軽減させるために誰かから青色のリボンを奪い取った可能性が高いですね」

「高くないです。作った人の趣味です」

「でも、ちょっと似合いませんね。いっそ赤色で統一した方がよさそうです」

「たしかに、ぼくがつけるなら赤色ですね。好きな色ですし――って、あれ? 戻しちゃうんですか?」

「買いませんからね。触り心地も味わいましたし、じゅうぶんです。気に入ったのなら魔王さんは購入すればいいですよ」

「ぼくひとりだけですか」

「お似合いですよ、ぬいぐるみ」

「ううん~……。あっ、勇者さん。ここにストラップがありますよ。ぬいぐるみが小さくなったやつです」

「ほんとうだ。でも、リボンはついていませんね」

「買ってきます、猫さんとクマさん!」

「私のはいらない――って、速いな。まあ、ストラップくらいならそこまで高くないでしょうし、小さいし、問題ないですかね」

「買ってきました。はい、クマさんどうぞ」

「ありがとうございます。いい大きさですね。鞄につけようかな」

「つけるまえに、最後の仕上げです」

「赤色と青色のリボンですか。どこから出したんです」

「レジ前に売っていました。これを結んで、はい完成です!」

「あ、黒猫が赤いリボンになってる。クマは青色ですか」

「こちらの方がかわいいし似合うと思いまして」

「そうですね。かわいいと思いますよ」

「今のかわいいはぼくと同じ意味ですね」

「そのようです」

「ぼくはポシェットにつけますね。えへへ~、かわいいです、とっても」

「赤いリボンをつけた赤目の黒猫。ちょっと魔王っぽいんじゃないですか?」

「えっ、そ、そうですかね? 魔王っぽいですか、ぼく」

「いい線いってますよ。ちなみに、さらに魔王っぽくなるストラップがあるんですが」

「おおっ、なんですか?」

「このゾンビのストラップです」

「さっきの。ぐろいぃぃ」

「よく見てください。出血して内臓が飛び出し頭はかち割れ足は複雑骨折しています。パワーアップしています」

「作った人誰ーーー⁉」

お読みいただきありがとうございました。

ぬいぐるみというよりストラップの話だったかもしれません。細かいことはいいのです。


勇者「かわいいのに、ゾンビ」

魔王「本気なのか冗談なのかわからない顔やめてください」

勇者「私はいつだって本気ですよ」

魔王「だからそれが本気なのか冗談なのか……」

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