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732.会話 冬眠の話

本日もこんばんは。

大事な休日を昼寝で終えるみなさまに贈るSS。

「あ、またブランケットおばけが」

「寒いです……。とても寒いです……。凍ってしまいそうです……」

「凍える勇者さんを抱きしめるのは、そう、この美少女魔王ことぼく!」

「こたつに入ろう」

「勇者さん、ぼくもいますよ?」

「だって魔王さん、なんか寒そうなんですもん」

「もしや、白いから雪を連想しているのではないでしょうね」

「そうかも」

「勇者さん、大事なのは見た目ではなく中身ですよ」

「中身、魔王じゃないですか」

「愛と勇気とこしあんに溢れた魔王ですよ」

「今はつぶあんの気分」

「そう言わずに……って、こたつで寝ると風邪をひきますよ」

「寝ませんよう……すやぁ……」

「ばっちり寝ているじゃないですか」

「これはあれです。冬眠です」

「冬眠って、人間もできるんでしたっけ」

「たぶんがんばればできます」

「またテキトーにしゃべってますね」

「こんなに寒いのに、なんで起きていないといけないのですか」

「こたつの中から言われましても」

「きっと魔物も冬眠しているはずです。ならば、勇者はお休みですよ」

「ここに来る前にも元気に魔物を消滅させてきたでしょう」

「あれはほら、なんだ、その、お腹をすかせたクマですよ」

「勇者さん、クマにも勝てるんですか?」

「無理です」

「では、さきほどの獣は一体?」

「たぶんあれ、えーっと、たぬきです」

「魔物でしたね。勇者の力で倒したでしょう」

「そうかも?」

「一ミリも脳が働いていない」

「何もしたくないです。春まで寝たいのです」

「冬眠は、体温を下げてエネルギーを節約するのです。勇者さん、ご飯食べました?」

「お昼ごはんはまだですね」

「では、冬眠中のエネルギーはどうするのですか」

「お腹ぺこぺこのまま寝ます」

「死んじゃいますよ?」

「じゃあ、魔王さんが食べさせてください」

「えっ! 合法的に勇者さんに『あーん』ができるってことですか!」

「不思議な魔法でエネルギーをおりゃーって送るのです」

「魔王の魔力は毒ですけど」

「致し方なし」

「そこ妥協しちゃだめなんですよ」

「だって、こうも寒いと食事すらめんどうなんですもん」

「あったかいスープや焼きたてのパンを用意しますから」

「こたつから出ずに食べてもいいですか」

「食べにくいと思いますけど」

「がんばります。勇者としての力を最大限に発揮して、必ず成功させてみせます」

「そんなにやる気をみせなくても」

「人間は働きすぎなんです。たまにちょっと冬眠するくらいがちょうどいいのですよ」

「適度な休息は大切ですね」

「私を見習ってください」

「人間辞める系勇者を?」

「こたつは生命の源。からだを包み込むことで、新たな日々への祝福がもたらされるのです」

「すみません、よくわかりません」

「アレ〇サみたいなセリフやめてください」

「勇者さんはいつも変なことしか言いませんが、寒いとさらに加速しますね」

「寒さで脳細胞が『もう無理。勘弁して』と言っていましたからね」

「勇者さんともなると、脳細胞とも会話しちゃうんですか」

「彼らが冬眠したいと言っていました」

「勇者さんの脳細胞なら、それは勇者さんなんですよ」

「私の脳細胞約一千億個の総意です」

「つまるところ、寒いからこたつでお昼寝したいってことですよね?」

「そうです」

「それを言うために、かなりのエネルギーが消費されましたね」

「どうりで冬眠できないわけです」

お読みいただきありがとうございました。

15分昼寝しようとして3時間寝るみなさま。


勇者「『眠ったら眠ったぶんだけ強くなる魔法』はありませんか」

魔王「なんですかその勇者さん専用魔法は」

勇者「この魔法があれば、私は最強になれると思います」

魔王「でしょうね、としか」

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