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715/717

715.会話 タピオカの話

本日もこんばんは。

最近見なくなった四文字。

「どうぞ、勇者さん。これが最近話題のタピオカドリンクですよ」

「私の記憶では、ブームは少し前だったような」

「百年前までは最近です」

「これだから不老不死は」

「といっても、ぼくたちは初めましてですね。どんな味なのでしょうか」

「もぐもぐ。なんだか不思議な食感です。弾力がありますね」

「甘くておいしいです~」

「あれの味がします。あれです。魔王さん、あれですよ」

「なんですか?」

「気を抜くと喉に詰まり、命の危機を招く味です」

「なんですかその言い方――うっ⁉」

「ほら、きましたよ」

「の、喉にタピオカが。タピオカが、つま、詰まって!」

「毎年一月は死亡率が格段に上がるらしいですよ」

「まさか、犯人は……」

「はい、お餅です」

「く、苦しい……!」

「仕方ないですね。えいやっ」

「げほごほおおうえあういぇあうおごはっ死ぬかと思いました」

「一口飲んだ時に思ったのです。あ、魔王さんが喉に詰まらせそうって」

「言ってくださってもよかったのに」

「どうせ不老不死だからいいかなと」

「苦しいのは苦しいのですよ」

「そうなんですか」

「一ミリも心配していないお顔もすてきですね」

「お茶や水と同じくらい、一般的な飲み物になっていたらと思うと、恐ろしいです」

「死亡率の上昇が一月だけに留まりませんね」

「お餅とタピオカは改名した方がいいですよ」

「何にするんですか?」

「呼吸困難食品」

「食べたくないネーミング」

「もしくは、死亡率急上昇食品」

「誰も食べなくなりますよ」

「きっと、誰もが一度は『うっ』となった経験があると思うのですよ」

「そうして、よく噛もうと思うわけですね」

「危機感を覚えたはずなのに、まだ食べようなどと」

「お餅もタピオカもおいしいですから」

「でも、老人がタピオカドリンクを飲んでいる姿を見たことがありません」

「一大ブームが去ったせいかと」

「見たかったなぁ、タピオカドリンク片手に自撮りする老人」

「若々しいですね」

「そんな彼らを微笑ましく見守るご長寿魔王さん」

「よきかな」

「そして、また喉に詰まらせるんですね」

「ぼくだって学習します。よく噛んで噛んで噛んで噛んでいますよ」

「だいぶ怖がっていますね」

「喉に詰まった時の、心臓がきゅっとなる感覚が……」

「死なないのに」

「生きていることを実感します」

「日々魔なるものと戦っているのに、生を実感するのがお餅とタピオカですか」

「魔なるものなど、ただのノイズです。ぼくがピンチになることもありませんから」

「魔王が魔物に負けていたら、さすがの私も悲しくなりますよ」

「勇者さん、ぼくのために泣いてくれるんですか」

「魔王さんが情けなくて」

「な、泣いてくれるなら情けなくてもいいです」

「他人のフリをしてさようなら」

「わああん、ぼくが泣いちゃう!」

「とはいえ、タピオカを喉に詰まらせる魔王もかなり情けないですよ」

「そんなぼくもきゅーとですね」

「見なかったフリしてさようならしようかな」

「ちゃんと見ていてください!」

「どうしたんですか、急に大声だして」

「勇者さんが見てくれていないと、喉に詰まらせた時に助けてくれる人がいません」

「それ、言っていて悲しくなりませんか?」

「こうしている間も、ぼくは四回ほど『うっ』となっています」

「そうですか。さようなら」

お読みいただきありがとうございました。

天目は一度だけ飲んだことがあります。それが最後でした。


勇者「魔王さんも入れる老人ホームはあるのでしょうか」

魔王「毎日面会に来てくださいね」

勇者「それはめんどくさいかも」

魔王「入居拒否で」

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