711.会話 グリモワールの話その➁
本日もこんばんは。
その①は第345話です。内容に関連性はないです。
「勇者さん、グリモワールをどうぞ」
「あ、魔力奪い装置私が使えない本読んでもあまり意味ない紙っぺらめ」
「ひどい名前がつけられている」
「私に意味がない本を渡されても困ります」
「だいじょうぶですよ。これは魔法の歴史について書かれた本ですから」
「それならグリモワールにせず、普通の本にしてほしい」
「むやみに読まれたくなかったのかもしれませんね」
「大暗黒時代でもあるんですか?」
「魔法使いの歴史は長いですから。色々あったでしょうね」
「まあ、読むだけなら」
「ぼくが読み聞かせましょう」
「やめてください。ほんとに結構です」
「むかしむかし、あるところに、ひとりの魔法使いがおりました」
「読まなくていいです。しかも、そういう感じの文章なんですか」
「いえ、もっと硬い感じです」
「魔法使いの歴史なんて、それこそ学校みたいなところで学んだ方がいいような」
「ですが、きみは行きたがらないので、こういった本が重要なのですよ」
「第一章を読みましたが、時代が古くてイメージが湧きません」
「えっ、この前だと思うのですが」
「はいはい、おばあちゃん」
「たしかに、人間にとってはかなり古いお話ですね」
「わかっていただけましたか」
「とはいえ、今も続く歴史に違いありません。しっかり読んでくださいね」
「私が知ってどうするのですか」
「なんかすごいなーって思うことが大切なのです」
「語彙力の敗北」
「勇者さんが魔法に興味を持ってもいいのですよ」
「練習はしていますよ。リモコンを取るのが上手くなりました」
「どんどん怠惰が極まっていく」
「離れた位置からボタンだけ押すこともできるようになりました」
「器用ですね」
「これが魔法の力です」
「本来はもっとすごいはずなのですが」
「すぐ発動できないので、魔物との戦闘にはあまり役立ちません」
「魔法の意味とは」
「神様に文句言ってください。後天的な魔法は使いにくいんです」
「本来、使えないはずの人に魔法を与えていますからね」
「身体が爆発する副作用が」
「あるんですか⁉」
「ないですけど、魔力を使いすぎると爆発するくらいしんどいです」
「もう魔法使うのやめます?」
「いいえ、私は諦めません。必ず茨魔法を自分のものにしてみせます」
「勇者さん……。怠惰でもやっぱり勇者なんですね……!」
「本のページをめくる技術を身につけるまでは諦めません」
「聞かなかったことにしておきますね」
「コップを持つバランスもまだ難しいのです」
「どうします? 一応、耳とか塞いどきますか?」
「いずれ、スプーンやフォークも操作できるようになりたいです」
「ちゃんと自分で動いてください」
「茨魔法の操作はすごく頭を使うんですよ」
「勇者さんが動いた方がはやいです」
「魔なるものとの戦いで負傷し、身体が動かせなくなったらどうするんですか」
「ぼくが看病しますから」
「読書も食事も入浴も一苦労です」
「ぜんぶぼくにお任せください」
「魔王さんに任せたくないから練習しているのですが」
「なぜですか? 愛情たっぷりにあーんしてあげますよ」
「それが嫌だって言ってんです」
「ぼくのあーんになんの不満が」
「不満しかないし、恥ずかしいです」
「勇者さんに羞恥心が芽生えたことの喜び」
「今までありませんでしたっけ」
「変なところでワイルドでした」
「たとえば、どういうところですか」
「大剣を持つのがめんどうで、グリモワールで敵をぶん殴るところとか」
「この角がいいんですよ」
「ぼくの魔力が込められているので、攻撃力も増しています」
「普通の本より強いんですね、グリモワール」
「いえ、単純に角攻撃の威力が高いだけです」
「じゃあグリモワールじゃなくてもいいや」
お読みいただきありがとうございました。
やはり物理。
勇者「その内、火サスでも凶器として大活躍することでしょう」
魔王「書物で殺害されたくないですね」
勇者「超難解な内容を読み聞かせ、脳みそを爆発させるのです」
魔王「火サスというより水10かも」




