706.会話 魔族統計の話
本日もこんばんは。
勇者さんが魔なるものの統計を取ったようです。珍しい。
「魔なるものは絶えず発生する存在であり、決して滅ぶことのないもの」
「勇者さんが珍しく真剣な顔をしている……。何かあったのでしょうか」
「昨日も今日も魔物と遭遇し、倒し、また遭遇し……。私はあることに気づきました」
「この表は一体?」
「私が出会った魔なるものの統計です」
「よく書けていますね。勇者さんもついに勇者としての目覚めが⁉」
「まあ、落ち着いてください。そして、ここを見てください」
「ふむ? ええと、『もふもふ魔物率』ですか?」
「私がこれまで出会ってきた魔物の中で、もふもふしていた割合はなんと七割なんです」
「へえ……、そうなん……ですね?」
「これはすごいことですよ。魔物はふわもふになることで生存率を上げているのです」
「上がっちゃ困るんですけどね」
「おそらく、今後もっともふもふ魔物、略してもふまのは増えていくでしょう」
「なんかうれしそうですが、ちゃんと倒してくださいね?」
「ふわふわだと戦意を削がれ、人間たちからも保護されるのでどんどん生き残るのです」
「第六感の敗北を感じます」
「時代の流れということです。いずれ、魔王さんが望む平和な世界がやってきますよ」
「それはうれしいですが、もふまのの増加はいかがなものかと」
「だいじょうぶですよ。私の統計は他にもこんなことを言っています」
「お聞かせください」
「『意外と共存してるかも』」
「それはぼくもちょっと思ったかも」
「私の考えですが、長い長い時の間に、魔族と人間の役割も曖昧になってきたような」
「こわいのは、明確にするための爆弾を神様がぶん投げてきそうなところ」
「そんなことするんですか?」
「神様はぼくに嫌がらせをするのが好きですから」
「うわ、めっちゃ嫌なやつですね」
「ぼくの望みと反対のことをするんですよ」
「あ、もしかしてアレですか?」
「なんでしょう?」
「好きな子には意地悪しちゃうアレ」
「絶対に違いますからね、勇者さん。絶対に。絶対」
「珍しく魔王の圧を感じる顔をしていますよ」
「勇者さんがとんでもないことを言うからです」
「私の統計はこうも言っています」
「お願いですから神様関連はやめてください」
「『言葉を話す魔族は結構変なひとばかり』」
「それはそう」
「まともなひとに会った記憶がありません」
「おや?」
「不思議そうに自分の顔に指を向けるな」
「ぼくはまともですよ」
「正直に言って、魔王さんが一番変なひとだと思っていますよ」
「そんな。ぼくのどこが変なんですか。人間を愛し、儚い命の巡りを見守ることを生き甲斐にし、魔族を滅し、持ちうる限りの愛を人間に捧げたいと願うぼくのどこが」
「そういうところ」
「ぼくのぼくである部分すべてじゃないですか」
「魔王さんの存在により、統計が一気に傾いているのです」
「びっぐさいずの愛ということですね」
「おかげで正確な統計になりませんでした」
「もふまのを推進している時点でお察しですよ」
「聞き捨てなりませんね。私は魔族のレベルをまとめ、討伐の参考にしていますよ」
「すごく勇者っぽいです。そういう感じで続きもお願いします」
「使う技や性質を分析し、初見でも捌けるように知識と経験を増やしています」
「いい調子です」
「もふもふといっても種類があるので、どの魔物のタイプがどの毛なのか調べています」
「道が逸れ始めましたね」
「毛の質感や太さ、撫でやすさと吸いやすさも一覧にまとめてあります」
「夏休みの自由研究じゃないんですから。……吸いやすさって言いました?」
「大抵のもふまのは雑魚なので、大剣をチラつかせると大人しく身を差し出しました」
「言い方が悪人のそれ。というか、吸いやすさってなんですか、勇者さん」
「そのままです。ちゃんと許可を取っていますよ」
「いくらふわもふでも魔物は魔物。毒を吸ったらどうするんですか」
「安心してください、魔王さん。吸った時の毒も種類ごとに表にしました」
「わあ、よくまとめられている。って、まとめるな!」
「やばそうな毒の魔物は触るだけに留めていますよ」
「触るのもだめなんですってば」
「だいじょうぶです、魔王さん。どの程度の時間から効果が出るのかも表に」
「命を懸け過ぎです。どうしてそこまでするのですか」
「勇者ですから」
お読みいただきありがとうございました。
ちなみにちゃんと毒はくらってる。
魔王「目を離すとすぐこれなんですから」
勇者「人を幼児みたいに言わないでください」
魔王「正直、ちゃんと考えたうえでこれなので幼児より質が悪いです」
勇者「いやぁ、あはは」




