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704.会話 告白予行練習の話

本日もこんばんは。

かわいらしいサブタイですが、内容はお察し。

「ずっと前から好きでした!」

「続けてください」

「ずっと前から、きみが生まれる前から、何年何十年何百年前から、勇者が存在してぼくが愛を抱いた時から、そしてこの先も、きみが死んでも、世界が終わっても好きです!」

「重い重い」

「だめですか?」

「だめかどうかは知りませんが、告白ってそういうものなんですか」

「そうです!」

「私がわからないから、判断のしようがありません」

「それで、どうでしたか? ぼくの告白予行練習の出来は」

「よくわかりませんでした」

「素直~」

「急に予行練習がしたいと言い出すので何事かと思いましたが、ただの変なひとでした」

「どうも、変な魔王です」

「相手に気持ちを伝える方法なら、面と向かって話す以外にもありそうですけど」

「お手紙ですね。任せてください。想いを綴るのは得意です」

「あまり長すぎると読むのが大変なので、数枚がいいんじゃないでしょうか」

「わかりました。五百枚に収めます」

「ゼロを二つ取ってくださいね」

「五枚なんて、時候の挨拶で終わりますよ」

「そんなに挨拶しなくていいです」

「何か贈り物もしたいですね。やっぱりお花でしょうか?」

「定番は薔薇の花ですかね。映画でもよく観ますよ。一本添えるだけでもすてきかと」

「わかりました。千本の薔薇で花束を作ってきます」

「ゼロを三つ取ってくださいね」

「さみしいじゃないですか。バーンっと派手に華やかにしましょうよ」

「千本の花束なんて、どうやって持つのですか」

「魔王ぱぅわぁーで浮かせます」

「作画泣かせ」

「場所も大事ですよね。思い出の場所、景色がいい場所、ふたりきりになれる場所」

「あまり驚かせても逆効果かもしれません。ほどよい場所を選んでみてください」

「わかりました。ピラミッドのてっぺんはいかがでしょう」

「帰りたいかも」

「少々足場は悪いですが、共に苦難を乗り越えることを表しています」

「表さないでほしい」

「時間も大事ですね。ド定番は夜。きらびやかな夜景がいいかもしれません」

「魔王さんが大好きなロマンチックというやつですね」

「しかし、ぼくはあえて朝。そう、日の出を選びます」

「眠いって」

「闇から光へ。きみがいることでぼくの世界に光がもたらされたことを表し、新たな始まりを告げる日の光を一緒に見ながら気持ちを伝えるのです」

「そもそも、魔王さんは起きられるんですか」

「もちろん徹夜です」

「星空観測しながら夜通し起きていれば、自然な流れになると思いますよ」

「アドバイスありがとうございます、勇者さん。使わせていただきますね」

「星空観測もシチュエーション的にはばっちりじゃないですか」

「最高にロマンチックです。想像しただけでらぶそーすいーと……」

「かの有名なイントロが流れ出してしまう」

「ついでに歌詞もちょびっとお借りましょう。百年先もきみを愛します、と」

「それ違う曲かも」

「えっ、すごいですよ、勇者さん。歌詞を見たらまるでぼくのイメソンです」

「全関係者とファンの方に謝ってください」

「だってだって、ここの歌詞とかめっちゃぼく。ぼくすぎる」

「思い違いですよ」

「わかった。わかりましたよ、勇者さん。この曲を歌えってことですね」

「それこそ違います。絶対に歌わないでください」

「日の出の時間にピラミッドのてっぺんで五百枚の手紙と千本の薔薇の花束を持ってぼくの気持ちを伝えながら全力で歌うのは、そう、One Lov――ぐはっ」

「危なかった。曲名まで言われたらおしまいでした」

「勇者さんの右ストレートがぼくのみぞおちに」

「非常に危険だったので救済を行いました」

「ありがとうございます、とても効きました」

「もっとシンプルでいいのですよ。気持ちはきっと伝わりますから」

「勇者さんが優しい」

「知らんけど」

「本音ダダ洩れ」

「ところで、お相手はどなたですか? 私も微力ながらお手伝いしますよ」

「例のごとく勇者さんです」

「日の出とピラミッドのてっぺんは嫌だし、手紙と花も多すぎるし歌も勘弁です」

「すごい。全却下」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんが言っていた歌詞はどの部分でしょうか。


勇者「いい曲ですね」

魔王「今度ぼくにお手本をみせてくださいな」

勇者「ただ歌うだけならいいですよ。何の意味もなく、ただ歌うだけなら」

魔王「かなり強調されちゃった」

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