701.会話 里親の話
本日もこんばんは。
何話になろうとくだらない会話をしていると思います。
「子猫の里親探しとは、勇者さんが勇者していますね」
「勇者ってなんでも屋でしたっけ」
「似たようなものですね」
「そうなんだ。知りませんでした」
「とりあえず勇者に投げておけばいいって言いますもんね」
「もっと知らんやつきた。やめろ」
「勇者のお仕事は大変なんですよ」
「さも自分のことのように言いますが、あなた魔王ですよね」
「とはいえ、ぼくは愛をもって勇者業をしているわけです」
「あなた魔王ですよね?」
「里親探しも張り切ってまいりましょう!」
「こっちを向け」
「勇者さんを見つめろ?」
「違います。自分の役割を思い出してください」
「ここはどこ……。ぼくは誰……。あ、隣にかわいい子がっ」
「今日もお元気そうですね」
「元気でいることで、周囲を明るくする作戦なのですよ。ほら、ぴかぴか」
「ふうん。ところで、里親探しといっても何をすればいいのでしょうか」
「町ゆく人に声をかける方法がありますよ」
「なるほど。却下で」
「人に声をかけることをしない勇者ですもんね」
「人間と会話するなら、道端のお花と会話したい」
「プリンセスとみるか、不思議ちゃんとみるか、ただの変な人とみるか」
「第四の可能性がありますよ」
「なんでしょう」
「元花だった」
「新しい物語を始めないでください」
「自分を大事に育ててくれた人間にお礼が言いたくて、魔法の力でヒトになった花」
「あ、ちょっとすてきかも」
「しかし、寿命は花のまま。枯れる前にお礼を言うことはできるのか……」
「あ、切ない予感」
「もうだめだと思ったその時、花は水をがぶ飲みして持ちこたえます」
「がぶ飲みとか言わないでほしい」
「気合と根性で辿り着いた場所で、花は人間に笑顔を咲かせて枯れゆくのでした」
「なんですかそれ、泣けます!」
「子猫の命も花のごとし」
「風向きが変わりましたね」
「誰も手を差し伸べなければ、花のように消えていくのでしょう」
「その前に、ぼくたちが里親を探すのですね」
「見つからなかったらひとりでがんばってもらいましょう」
「命は花のごとしだったのでは?」
「案外なんとかなりますよ。がんばれ、子猫」
「言われておりますよ、猫ちゃん」
「ガン無視されましたね」
「えーん、ぼく美少女なのに」
「動物には魔王だってわかるのでしょうか」
「感じるものはあるでしょうね。おかげでよく噛まれます」
「私は噛まれたことありませんよ」
「動物にはわかるのです。勇者さんから溢れるらぶあんどぴーすが」
「貼り紙とかしてみましょうか」
「ぼくたちの間は全然平和じゃないもんなぁ」
「子猫~。子猫はいりませんか~」
「焼き芋じゃないんですよ」
「大人しくてかわいい子猫ですよ~。魔族に噛みつく攻撃力もありますよ~」
「ぼくは指が千切れかけました。凄まじい威力ですね」
「ちゃんとモザイクかけてくださいね」
「ばっちりです」
「全然見つかりません。これでは次の町に行けませんね」
「おうちのない子猫ちゃん。もしや、この子は勇者さん?」
「また変な話が始まった」
「そして、ぼくも彷徨い続ける迷子の魔王。拠り所が必要です」
「自分で探してください」
「やがて見つけたぼくの里親。それは、勇者さんです」
「養われているのは私の方ですけどね」
「家なき子同士、子猫も含めて旅をしましょうか」
「同情するならお金と服と食べ物と家と布団とぬいぐるみとテレビをくれ」
「結構欲しがりますね」
「くだらない話をしているうちに、子猫の里親が見つかりました」
「よかったです。さて、次は何をしましょうか」
「魔王さんの里親探し」
お読みいただきありがとうございました。
聖性側の存在は動物に好かれやすいです。
魔王「ぼく、動物の反応で人間に怪しまれたことがあるんですよ」
勇者「聖女なら吠えられたり噛まれたりしませんもんね」
魔王「同じ動物でも、人間は視覚情報に引っ張られるところが愛おしいです」
勇者「遠回しにあほって言ってます?」