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7.会話 道端の草の話

本日もこんばんは。

道端の草の話です。

「お腹が空きました」

「ご飯にしましょうか。勇者さん、何が食べたいですか?」

「胃が刺激物を求めている気配がします」

「辛いものですか。あるといいですが」

「あ、魔王さん。この草おいしいですよ」

「当たり前のようにしゃがんで草を摘まないでください。不審者だと思われますよ」

「魔王さんに言われるとめちゃくちゃ面白いですね。座布団一枚」

「要らないです」

「まあまあ、ほら、これなんて苦虫を嚙み潰したような味がしますよ」

「わざわざ苦虫を食べる気分にはなれませんよ」

「そう言わずに、これは世界が廻る気分を味わえます」

「ぼくは勇者さんの食生活に眩暈を覚えます」

「あ~ぐるぐるぐるぐる」

「せめておいしい草を食べてくださいよ。あ、これなんてどうですか? 白いお花もかわいいですよ」

「それ食べたら眠りにつきますよ。永遠の」

「毒草なんですか」

「葉の一枚でも死にます。殺意を覚えたらその葉でお茶を出すといいですよ。確実に殺れます」

「妙に生々しい話で魔王は困惑です」

「天下の魔王さんを困らせることができて光栄です」

「ナチュラルサイコパスみたいな発言ですね。とても勇者とは思えません」

「魔王さんが言うと褒め言葉にしか聞こえませんね。ありがとうございます」

「個人的にはあまり褒めてはいませんけどね。どういたしまして」

「右にある草はおすすめですよ。味良し、舌触り最悪で星二つです」

「評価基準に異議を申し立てたいですね。いくつ中の星二つなんですか?」

「六三二四個中ですね」

「中途半端すぎません?」

「なに言ってるんですか。割り切れますよ」

「そういう問題ではないと思いますが。まあいいでしょう。味見してみます」

「なんやかんやで食べてくれる魔王さんには星九六四三個を贈呈します」

「限界突破してますよ。さて……」

「どうですか?」

「葉っぱの味ですね。口に残る後味はザラザラして顔が歪みそうです。なんだか喉を搔きむしって鉈を振り回したい衝動に駆られてきました」

「それ違うやつですね。こっちはどうです? 害はありません」

「あ、ちょっと甘いですね、これならかろうじておいしいと言えます」

「そうでしょう。その甘さが癖になり、つい食べ過ぎると幻覚が見えます」

「害はないんじゃありませんでした?」

「楽しい幻覚が見られるので害じゃないです」

「魔王が言うのもなんですが、幻覚は見ない方がいいですよ。せめて夢を見てください」

「ステーキハンバーグオムレツパスタ親子丼ラーメン河の神様からもらったおだんご磯辺焼き寿司――」

「さりげなくこの世界にはないもの交じっていますね」

「魔王さんならその辺魔力でどうにかなりませんか」

「魔王だからといって、なんでもできるわけじゃないですからねぇ。それなりに制限はありますよ」

「でも食べてみたいでしょう?」

「例のおだんごなら不味そうでしたよね」

「不味さも気になります」

「いらない好奇心ですね」

「食べられるのなら問題ありません」

「だからって草を食べなくても」

「山菜食べてるじゃないですか」

「おいしいものを選別しているんですよ」

「この草だって必死に生えているんですよ?」

「なら、そっとしておいてあげてください」

「だが、人間の前では無力にすぎない」

「真顔で引き抜くのやめてください」

「最近では食べられる土もあるようで……」

「それを開発した人は土を食べたかったんでしょうか」

「仲良くなれそうです」

「あ、勇者さん、食堂があります。ご飯にしましょうか」

「待ってください。最後にこの葉を一枚」

「その草にも害があるんじゃないでしょうね?」

「いえ、ありません。ただ」

「ただ」

「翌日まで響く辛さです」

「もはや刺激物じゃなくて劇物ですね」

「うまいですね」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは特殊な訓練を受けています。

道端の草を無暗に食べるのは危険ですのでやめましょう。ニラとスイセンはよく見てくださいね。


魔王「ちゃんとご飯を与えているのに、どうして雑草を食べようとするのでしょう……」

勇者「まるで手の焼けるペットの話を聞いているようです」

魔王「あながち間違いではないと言ってしまう前に雑草を食べるのやめてくださいね」

勇者「約束はできそうでできないかもしれなくもないですね」

魔王「なんて?」

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