675.会話 マジックの話
本日もこんばんは。
マジシャンを名乗る魔法使いはいそう。
「魔王さん、マジックを披露するので見ていてください」
「わかりました。超高性能カメラを準備しますね!」
「ここに、その辺にあった何の変哲もないナイフと斧と包丁と剣とはさみがあります」
「やけに物騒なラインナップですね」
「これを、その辺にあった木の板に突き刺します」
「物騒な光景ですね」
「トゲトゲした木の板を、その辺にいる魔王さんに押し付けます」
「いたたたたっ。物騒なマジックですね」
「いかがでしょう?」
「いかがされても、痛いだけです。どの辺がマジックなのですか?」
「あの辺とかこの辺とかその辺がマジックです」
「全然わかりませんでした。すごいですね、勇者さん!」
「では、別のマジックもお見せしましょう。このトランプをご覧ください」
「ガン見しますね!」
「魔王さんが選んだトランプを当ててみせましょう」
「そんなことが? えーっと、これにします」
「よく混ぜて、えいっとやると、魔王さんが選んだカードが飛び出してきます。すごいでしょう。なんとこれ、タネも仕掛けもございます」
「嘘でもないと言って欲しいところですが」
「これは、選んだカードが勝手に飛び出す仕掛けがあるトランプなのです」
「全部言っちゃった」
「技術も経験もいりません。ただ持っているだけでいいのです」
「マジシャンが泣きますよ」
「超不器用な魔王さんでもできますよ」
「そのことなんですが、ぼくもマジック得意ですよ」
「へえ。例えばどんなマジックが?」
「人体切断マジック」
「からくりがわかったので、もう結構です」
「一度、ご覧になってください」
「一度もご覧になりたくないです」
「タネも仕掛けもない人体切断ショーですよ」
「だから嫌なんですよ。年齢制限まっしぐらです」
「ちゃんと下の方にR十八って記載しておきますから」
「然るべき機関が殴り込みにきそう」
「みんながあっと驚くすてきなマジックショーにしますよ」
「みんながわっと泣く絶叫のマジックショーの間違いでは」
「二辺になったぼくが華麗に踊るシーンも追加します」
「まず二辺になるな」
「真っ二つの方がよかったですかね?」
「言葉のチョイスの問題ではない」
「ダンシング。ダンシング。うぉううぉう」
「踊るな」
「ですが、ぼくは不器用なのでダイナミックなものが合うと思うのです」
「空中ブランコはどうですか。魔王さんは浮けるでしょう」
「それならブランコなしで浮いた方がはやいです」
「浮遊マジックですか。それもおもしろそうですね」
「二辺のぼくがぷかぷかと」
「なんで切断したままなんですか? くっつけ」
「勇者さんと? そんな、照れちゃいますよう!」
「ラブコメ的なくっつけではありません。物理的に身体を接着させる意味です」
「熱く抱擁しろと?」
「言質取ったみたいな顔しないでください」
「ぼく、勇者さんと一緒ならマジックで成功できる気がします」
「会場が阿鼻叫喚の地獄絵図になりそうですが」
「ぼくが入った箱に剣を刺すマジックの助手をお願いしてもよろしいですか?」
「そういうマジックありますよね」
「そっぽ向かないでください」
「すみません。オチがわかったので現実逃避を」
「タネも仕掛けもない突き刺しマジックですよ」
「せめてタネも仕掛けもあれ」
「想像したら楽しくなってきました。勇者さん、一緒にやりましょう!」
「嫌です。年齢制限の敵にはなりたくありません」
「困りましたね。そうだ、もっと楽しいマジックならどうでしょう?」
「みんなが楽しめて年齢制限の味方になるマジックなんてあるでしょうか」
「大爆発の中からぼくが脱出するマジック」
「あ、ちょっとコメディっぽいですね」
「爆散した四肢と一緒にダンシング」
「踊るな」
「うぉううぉう」
「踊るな!」
お読みいただきありがとうございました。
うぉううぉう。
勇者「職業マジシャンの魔法使いって無双じゃないですか?」
魔王「自分の魔法をマジックにするのですね」
勇者「間違えて切っちゃっても魔法で誤魔化す」
魔王「まず病院に行きましょう」