673.会話 ご当地キャラの話
本日もこんばんは。
47都道府県の話を書いたら47話もSSが書ける!と思ったのですが、普通に作者が未制覇。
「魔王城のご当地キャラとして有名になれば観光客がたくさん来ると思うのです」
「そもそも魔王という時点で人間としては遠慮したいのですが」
「世界有数の観光名所として名を馳せようと」
「行方不明者数ナンバーワンみたいな?」
「いわくつきじゃないんですよ」
「でも、歴代勇者の死亡場所ですよね」
「あ、それはちょっとぼくに効くので、あの、やめていただいて、その」
「自分で殺しておいて、なんで傷ついているんですか」
「事実だけど泣いちゃいそう」
「不思議な魔王さんですね」
「だって、大好きだったからぁ……」
「めそめそ泣いている魔王が見られると話題!」
「そんなキャッチコピーいやですよう」
「やたら豪華な設備を無料で使える!」
「リラクゼーション施設も建設予定ですよ」
「ご飯も無料ですか?」
「もちろんです。遊びに来ていただいた人からお金なんて取りません」
「そうはいっても、全部無料だと逆に居づらいですよ」
「では、スマイルでお支払いくださいな」
「お金を払いますね」
「とびきりのスマイルでいいのですよ」
「お金を払いますね」
「勇者さんの笑顔をぼくに」
「お金を払いますね」
「頑なですね。そんなに微笑みたくないのですか」
「表情筋を動かすことがめんどうで」
「死んだ目のご当地キャラなんて見たくないですよ」
「そういう路線もウケるんじゃないですか?」
「需要はありそうですね」
「笑顔のかわいいキャラクターばかりではつまらないでしょう」
「幸せでうれしいですよ」
「世の中がすべて幸福で満たされていると思うな」
「たまに出る闇深発言に心臓が痛いです」
「世界各地で目撃される真っ黒な人物。それは不幸をもたらすと恐れられていた」
「ホラー映画のあらすじですか」
「ご当地キャラの説明ですよ」
「死神みたいなキャラクターですね」
「全国のご当地キャラを潰しながら練り歩くんです」
「何か恨みでもあるんですか?」
「いえ、何も」
「それが一番こわいんですよ」
「そういうキャラなんです」
「魔族みたいですね」
「たしかに、ご当地魔族とかいそうですね」
「全然うれしくないです。出会ったらその都度倒します」
「土地、国、町を表す魔族と出会うほのぼの旅行番組」
「名物を食べたり名所を訪れたりするんですか」
「食リポがやたらうまかったりして」
「おいしそうだと思うと食べたくなっちゃうんですよね」
「観光案内所で働いている」
「しっかり仕事しているじゃないですか」
「ご当地キャラとして確立するなら、その場所をよく知っていないといけません」
「理にかなっている」
「名物の売り上げに貢献し、観光客を増加させ、ご当地キャラとしての知名度もある」
「そんな魔族、倒せないじゃないですか」
「人間とも仲良し」
「血涙を流しながら見逃すしか……」
「おもしろそうな魔王さんが見られる予感」
「ぼくは人間との共生を望んでいるのです。むやみやたらに倒したりしませんよ」
「そう言いつつ殺気が」
「おっと。いけないいけない」
「でも、魔王さんのご当地キャラ適正は高いと思いますよ」
「えっ、急にどうしたんですか? ぼくのグッズでも作りますか?」
「いりませんけど、見た目のキャラ個性はあると思いますので」
「えっ、うれしい。うれしいです。どうしよ、うれしいです!」
「そんなに喜ばなくても」
「うれしいので、ぼくがこの世界のご当地キャラになりますね!」
「範囲が広すぎる」
「この世のすべてをぼくは愛しています。この世界はぼくのものです!」
「セリフだけなら魔王っぽい」
お読みいただきありがとうございました。
ご当地という名の世界。
魔王「世界、びっぐらぶ」
勇者「試しに『この世界を破壊する』と言ってみてくれませんか?」
魔王「この世界をは、はか、は、はう、あ、ああああ」
勇者「そんなに苦しまなくても」