671.会話 幽霊の話その②
本日もこんばんは。
幽霊よりもこわいもの。書いたSSが保存前に消えたこと。
「ほんとうにいたらめっちゃこわいかもしれない幽霊特集の番組ですって、勇者さん」
「まったく、いい年して作り物に怖がるなんて。興味はちょっとしかありませんよ」
「ちょっとあるんだ。しっかり番組も観るんだ」
「ブランケットの隙間からしか観てあげませんけどね」
「ほとんど見えていないような」
「ところで魔王さん、ひとつ疑問があるのですが」
「なんでしょう、ブランケットおばけ勇者さん」
「なぜ、こういう番組で出てくる幽霊は髪の長い女性ばかりなのでしょうか」
「続けてください」
「亡くなる方は女性だけではありません。年齢や性別は関係ありませんし、女性がみんな髪が長いわけでもありません。ショートヘアの人もいるでしょう」
「それはそうですね」
「定番は白いワンピースの女性ですが、誰もかれもワンピースを着ると思うな」
「つまるところ、イメージと視覚効果の問題ではないでしょうか」
「『幽霊といえば?』ってことですか?」
「はい。誰もがイメージする幽霊像、そして不鮮明な写真や映像でもわかる姿かたち」
「たしかに、くっきり見えるものってほぼありませんね」
「鮮明にすると作り物だとバレてしまうのでは?」
「ははあ、技術に自信がないんだな」
「あと、肉体を失っているので曖昧な状態なのでしょうね」
「それっぽい理由を後から言わないでくださいよ」
「それに、ぼやけていた方がこわい」
「もう結構です。言わなくていいです」
「ゆらめいている姿って、それだけで不気味ですもんね」
「しゃらっぷ」
「おや、ぼくとしたことが、うふふ」
「まったく、なんでもかんでも怖くすればいいと思わないでください」
「勇者さんが怖がりなだけな気が」
「私のどこが怖がりなんですか」
「ふと鳴る音、カーテンの揺らめき、部屋の暗闇、窓の影、お風呂場の背後」
「な、なんですか急に」
「ほら、今も勇者さんのうしろで変な音が」
「んなっ!」
「特にしていませんけど」
「してないんかい」
「びっくりしました? こわかったですか?」
「うるさいです。やかましいです。ほっといてください」
「そう言いつつも幽霊番組は観るんですねぇ」
「リモコンが見当たらなくて」
「きみのすぐお隣にありますよ」
「ボタンの反応が悪くて」
「そもそも押していないじゃないですか」
「押す気力も湧かなくて」
「動くとブランケットシールドが壊れちゃいますもんね」
「仕方なく幽霊番組を観ているというわけです」
「そういう理由なら仕方ないですねぇ」
「魔王さんはシールドいらないんですか?」
「一応、魔王ですから。幽霊には負けませんよ」
「幽霊みたいな見た目ですもんね」
「誰が白い服で髪の長い女性ですか」
「女性とは言っていない」
「暗闇でぽつんと立ってみましょうか?」
「簡単幽霊現象三分クッキング」
「道行く人に笑顔で挨拶をします」
「反応すると連れて行かれると思われますよ」
「逃げられると悲しいので追いかけます」
「トラウマまっしぐら」
「走ると髪がなびくので大変なんですよ」
「心霊映像で見たような」
「暗いことがだめなら明るくしましょう。光魔法えいやっ」
「これが火の玉の正体ですか」
「よし、これでこわがられることはないでしょう」
「紛うことなき幽霊の完成なんですよ」
「神聖スマイルを浮かべているのに?」
「なんというか、一周回って不気味」
「そんなこと言わないでくださいよう。ほら、よく見て。ぼくの美少女顔」
「あっ、ブランケットシールドを剥がさないでください」
「こんばんは、勇者さん。今日も超かわいいですね」
「こんばんは、なんちゃって幽霊さん。くらえ、除霊の力」
「あら塩が目に!」
お読みいただきありがとうございました。
保存と除霊とトイレの電気消灯はこまめに行いましょう。
勇者「塩ってほんとうに効くんですね」
魔王「そりゃ、あら塩が目に入れば誰だって逃げますよう」
勇者「やはり物理」
魔王「脳筋勇者さん」