670.会話 プールの話
本日もこんばんは。
プールの後のセブ〇ティーンアイスがおいしくて。
「泳げない勇者さんでも安心して遊べる場所、プールにやってきました~」
「どうもみなさまこんにちは勇者ですさようなら」
「浮き輪に乗ったまま流されていった」
「いいですね、これ。何もしなくてもプールとやらを満喫できますよ」
「自分で泳ぐのも楽しいですよ。せっかくですし、泳ぐ練習してみませんか?」
「泳げるようになったらいいことあるんですか」
「泳げるようになる、といういいことがあります」
「それはそうオブそう」
「いざという時に、泳げた方がいいと思うのです」
「ちなみに、どういう時ですか?」
「海で遭難した時や、川で遭難した時、湖で遭難した時ですね」
「水の事故は怖いですからね」
「池で遭難した時も追加しましょう」
「どれも水であることに変わりはないのに、難易度に差がありすぎます」
「水たまりで遭難した時も入れてください」
「私のこと、小人だと思ってますか?」
「ご存知ですか、勇者さん。数センチでも溺死はするのですよ」
「言いたいことはわかりましたが、そもそも水たまりは泳げません」
「ほら、息継ぎの練習とか」
「水たまりで溺れていたら、もう放っておいていいです」
「なんでめんどくさそうなんですか」
「だって、海や川ならまだしも、水たまりって」
「水である以上、危険はありますよ」
「それはわかりますが、なんかもう呆れちゃって」
「少量の水で命を落とすちっぽけな生命に?」
「はいはい、儚い儚い」
「ぼくはそんなちっぽけなところも大好きですよっ」
「水たまりですら脅威となるのに、プールなんかに連れてきていいんですか?」
「ぼくがばっちり監視していますからね」
「さっきから浮き輪にへばりついている魔王さんは現実でしたか」
「勇者さんと一緒に流される喜び」
「魔王さんがいれば、遭難しても心配いりませんね」
「おおっ、信頼の言葉が聴こえてきました」
「ふざけた力で叶えてくれる~」
「不思議な力だった気が」
「やあ、マオえもん」
「ギリギリアウトっぽいんですよね、それ」
「じゃあ、魔オ衛門にします」
「急に古臭い雰囲気が」
「水の檻に閉じ込められたデスゲーム参加者たち。しかし、その中には魔オ衛門がいた」
「ぼく、いつの間にデスゲームに参加しているんですか」
「彼女は言いました。ちょうど喉が渇いていた、と」
「プールって意外と水分を失うので、ちゃんとお水飲みましょうね」
「大きな口で水の檻を飲み干した魔オ衛門。晴れた空の下、彼女は颯爽と立ち去った」
「何の話でしたっけ?」
「喉が乾きました」
「水分補給タイムですね。はい、お水どうぞ」
「どこから出したその水筒」
「ぼくの四次元ポシェットからです」
「ギリギリセーフ?」
「商標登録されていなければセーフですね」
「訴えられるなら魔王さんだけでお願いします」
「お任せください。金貨で解決します」
「水飛沫を輝かせながら言うセリフではない」
「えっ、じゃあ血飛沫ですか? いやですよ。勇者さんじゃないんですから」
「年齢制限と仲良くしたいので、色は青色でお願いしますね」
「それはつまり水飛沫ということでは」
「同じ液体ですから、似たようなものです」
「視覚情報って大事ですね」
「ほんとですよ。黒とか赤ってだけで不吉だの不幸だの魔族だの魔王だの」
「白いってだけで安心されるのでお得です」
「今のセリフ、録音して人間に聞かせてやりたいですね」
「プールでも皆様方に平和をもたらしちゃいますよ~」
「ただ流れているだけなのに」
「命、時代、大地、世界……。あらゆるものの流れを感じる気がしますよ」
「プールで?」
「ああ、いろいろと思い浮かんできました。懐かしいです。見送った人々、興り滅ぶ国、移りゆく季節、変わりゆく世界。そして、遭難した時の海の色を見てぼくは言いました」
「なんて言ったんですか?」
「海は青かった」
お読みいただきありがとうございました。
みなさまもプール、海、川、湖、池、水たまりにはお気をつけて。
魔王「勇者さんが泳げるようになったらうれしいです」
勇者「泳げないとうれしくないですか?」
魔王「頼られる割合が多いのでよりうれしいです」
勇者「相変わらずですね」